サクラ学園



「ステラ、今日当たるんじゃやないか?」
「当たる?」
「出席番号!」
アウルは黒板に書かれた日付を指差す。
そこにはステラの出席番号と同じ数字が書かれていた。
「ほんとだ・・」

ここは青空学園の隣の県にあるサクラ学園。
青空学園とは姉妹校である。

「ステラ教えてやるからこい」
スティング・オークレー、3人の中でお兄さん的存在だ。
「オレも当たっちゃうかも、ついでに教えて!」
アウル・ニーダー、わがままだけど、実はステラには甘い。
「数学嫌い・・」
ステラ・ルーシェ、紅一点。ちょっと(けっこう)天然キャラな女の子。

3人は同じ孤児院で育ち、高校生になった今、学校の寮で暮らしながらこの学園に通っている。

「嫌いっていっても仕方ないだろ・・ユウナ先生逆切れするんだから」
ユウナ先生とは数学を担当しているユウナ・ロマ、男の先生だ。
最近、教育実習生としてサクラ学園にやってきたのだが、どうも好感の持てない人物である。
いつも出席番号順に問題を当て、答えられないと人を小ばかにした目でみる。
前にステラが当てられたときは一番ひどかった。



『ステラ・ルーシェ君、この問題をやって』
ユウナは黒板の問題をトントンと叩きながらいった。
『・・・はい・・・』
ステラは黒板まで歩く。
『どうしたの?分からないのかい?』
『・・・・・・・・分からない?』
ステラはユウナを見て首をかしげる。

『こっちが聞いてるんだよ!』

ユウナはそんなステラの見てむっとする。
『ステラ勉強嫌い』
『嫌いっていってもしなきゃいけないんだよ!!生徒だろ!』

『スティング・・教えて・・』
ステラは後ろを振り向きスティングの席を見て言った。
『え!?』
こんなに堂々と聞かれるとは思っていなかったので、スティングは慌てた。
『ステラ分からないのに・・・しろっていうの・・』
そんなスティングをよそにステラは淡々と話す。

『ステラ君!!人に聞いてどうするんだ!君が答えるんだろう!』
そんなステラの態度にユウナの怒りは更にアップした。

ステラはなんでこんなに叫んでるの?っという顔で首をかしげユウナを見ている。
『き・・君は何でこの学園に入れたんだ!?』

『だってステラは記憶力いいもん』
会話に入ってきたのはアウルだった。

『お、おい!?』
少し喧嘩ごしなアウルの態度にスティングは焦る。
『なんだね・・君は』
ユウナは不機嫌極まりないと言った顔でアウルを見る。
『記憶力はいいけどすぐ忘れちゃうんだよなぁ』

それは記憶力がいいというのだろうか・・
ステラは一気にたくさんの情報を覚えることができる、天才的な頭脳の持ち主だ。
だが、その記憶が持つのは頑張って3日程度である為、毎日勉強していないとすっかり忘れてしまうのだ。
だが、テスト前にはスティングが無理やり勉強させる為、成績はいい。

『って言うか先生、早く授業進めてくださいよ〜』
アウルはユウナを見下した瞳で見た。
『なっっなっっ君は教師をなんだと思ってるんだ!?』
『やだなぁ、教師は先生だろ』
ユウナはそれを聞くと顔を真っ赤にして
『後は自習だ!!』
と、教室を去っていった。



それからはじめてある数学の授業である。
ユウナ先生はどんな顔をして現れるのだろう・・・。
スティングはステラとアウルに今日やるであろう問題の答えを教えながら欝になった。

ドスドスドス
そのとき、廊下から恐ろしい音が聞こえた。
「なんだ!?」
アウルもその音に驚き窓から廊下を見た。

「やあ、アウル・ニーダ君」
その声はユウナだった。が、それを見ているアウルは固まっていた。
「アウル?どうしたんだ?」
どうやら廊下にいるのはユウナ先生だというのは声で分かったのだが、アウルの様子がおかしい。
まるで岩のように固まっている。
「なんだ?」
スティングは思わず廊下を覗いた。

「ステラ君はいるかい?」
ユウナは余裕の笑みでスティングに言った。
ところがスティングも固まっている。
ユウナはそんな2人をよそに窓から中を覗き込んだ。


「ステラ君、今日は君に教師とはいかにすごいか教えてあげよう!」
そういって現れたユウナは真っ白なタキシードで薔薇を胸に挿し、かっこよくポーズを決めている。

ステラは目の端に白い色が入ってきた為、ついユウナのほうを見た。

「教師と言うのはだねぇ、生徒の上に立ち、指導をするものなんだ。分からないことがあれば、分からないなりに僕に聞くんだよ」

そんなユウナを他の生徒は蒼白な顔で
なんでタキシードを着る必要があるんだ・・・
と、突っ込みの目でみている。
そのとき、
「い・・・いやあああああああああああ!!!」

ステラの叫び声が教室に響く。
「「しまったっ」」
固まっていたスティングとアウルは慌ててステラのほうを振り向く。

そのときはすでに遅く、ステラはユウナの胸を掴んでいた。
「いやああああっっっきもちわるぅぅぅぅぅい!!!」
そう叫びながらユウナにビンタをくらわせている。
「おい!ステラ落ち着けって!!」
スティングは力いっぱいステラを止めた。
「いやぁぁぁ!何よこの紫のモミアゲは!!!」
「ぎゃーーーーーー」





「で・・・ユウナ先生・・」
「はい・・教師として立派な姿を見せたら言う事を聞くようになるかと思いまして・・・」
「それでタキシードですか・・・」
「僕はこんなところにいるような人間ではないのですよ!本来ならいいスーツを着て命令する立場なんです!!」
ユウナはボロボロになったタキシードを握り締めながら言った。
「まあ、事情はお父様から聞いていますが、今のあなたはこの学校の教育実習生ですから、それを忘れないように」
教頭はユウナにため息混じりに言った。



教室ではステラが荒い息を抑えながらアウルとスティングになだめられていた。
「ステラ・・・今までアイツの顔をちゃんと見たことなかったんだ・・・」
アウルはユウナのアホな姿を思い出しながら言った。
「知らない・・あんな気持ち悪い奴」
「ステラは興奮したり、嫌なことがあると、癇癪をおこしちゃうからなー」
そう、ステラは性格ゆえか、育ちの環境ゆえか小さい頃から少し難しいところがある。
今ではそれをフォローするのがアウルとスティングの使命みたいになっている。

「ま、今日の数学は自習みたいだし、花札でもしよう」
アウルはにっと笑いながら花札を机から出した。
全員が「なぜ花札!?」と突っ込みたくなるところだったが、
「ステラ・・花札・・好き・・・」
と、うれしそうに言ったので、その姿をみんなで見守ることとなったのだ・・・。
それ以来、当然のことながらステラに怯える生徒が増えていった。







あとがき
連合3人のおはなしです☆
青空学園と絡ませてもいいように姉妹校としています。
絡む予定あり★
ユウナはけっこう・・重要でもないけど、重要なキャラ??
伏線入れてるし・・・(この字で合ってたっけ・・)