月が厚い雲に隠れ真っ暗なその夜。
1つの邸宅が襲われた。
犯人は住人を殺害し、金目のものをすべて奪うと、家に火をつけた。

「おい、早くずらかるぞ」
男は仲間に伝えるように言い、壊された窓へと足をかけた。

「おかあさまぁ・・・?」
その時、小さな女の子が眠そうに目をこすりながらぺたぺたと歩いてきた。
「くそっまだガキがいやがったのか!」
男は手に持っているナイフで女の子を切りつけようとしたが、
「待て!」
という声と共にそれは止められた。

「売りさばけば結構な金になるだろう。連れて行け」
「ですが・・」
面倒では?という仲間の言葉に
「アスハ家の別邸だからとここに踏み込んだが、あったのは少しの宝石ぐらいだ。これじゃあ、苦労した意味もない」
その言葉には目的のものがなかった苛立ちが込められていた。
その言葉に男は少女をじっと見た。

女の子はよく分からないといった表情で首をかしげだが、
次の瞬間、お腹に激痛が走りそのまま瞳を閉じた。




記憶の欠片〜出会い〜





「アスラン様、今日は隣国からお食事に招かれておりますが」
「・・・またですか・・・」
「ミーア様がアスラン様を大層お気に召されてるようで」
アスランはため息をつくと、
「分かりました」
と返事をした。

ここはプラント。
世界の中でも1番といっていいほどの大国だ。
「今日、父上は?」
「今日もお忙しいようで今も会議中でございます」
ということは今回は1人であのミーアの相手をしなくてはならないのか・・・
アスランは重い気持ちになった。

どうやらミーアの父とアスランの父は俺たちを結婚させたいらしい。
婚約まではいたっていないが、どう考えてもそういう方向に進んでいる。

はっきり言ってあの子は苦手だ。
というか、女性すべてが苦手かもしれない。
自分に近づいてくる女性は媚びるような目をしてべったりとくっついてくる。
世界の為、わが国の安泰のためと親は子を使い、子はそれに従う。
この世界はそうして回っていた。

「準備は出来ております。出発しても宜しいでしょうか?」
外を見るとすでに馬車の用意はできていた。
逃げられるわけもなくアスランはゆっくりとそこへ進んでいった。

ガラガラと馬車は森の中を進む。
アスランは憂鬱な気持ちを振り払うこともできず、ただ外を眺めていた。
するとそこに古びた馬車が止まっているのが見える。
「止まってくれ」
アスランの声に馬車はゆっくりと止まった。

何か困っているのだろうか?

アスランは馬車を降りた。
こんな森の中で馬車が壊れてしまっては歩いて街に行くまで何時間もかかる。
それは不憫だと馬車の主に声をかけようと思ったのだ。
「お待ちください!!」
そんなアスランを兵士が止める。

「どうしてだ?」
アスランは疑問符を浮かべる。
誰とて困っている人を放ってはおけないだろう。
「あ、あれは・・・奴隷の馬車でございます」
焦ったように兵士は言った。
・・・奴隷の馬車・・・?

「日中に表立っているとは・・私が注意してまいります!」
「え・・?」
アスランが止める間もなく兵士はその馬車まで歩み寄と、
「何を考えている!貴様らはこんなところに出てこれる人間じゃないんだぞ!」
と、叫んだ。
アスランは眉をひそめる。

森の中・・・こんなところに来てはいけない人とはどんな人物なのだろう・・・
奴隷・・・奴隷とはあの奴隷なのだろうか・・・?

「申し訳ございません!!」
森の奥から1人の男が出てきた。
「奴隷が逃げ出しまして、捕まえるのに時間がかかりまして・・」
男は土下座をして謝る。
「捕まったのか?」
「はい、今捕まりました。すぐに立ち去りますのでどうぞお許しを・・」
「分かった。しかし、アスラン様のお目を汚したことを忘れるでないぞ!」
「アスラン様!?」

男は顔を上げ、アスランの方をみ、
「申し訳ありません!!」
と、更に深く土下座した。

奴隷・・・聞いたことはある。
主人の所有物となり労働を強制され・・・売買される・・・人だ。
自分の屋敷にはいないため、それがどういう生活をしているのかアスランには分からない。
だが、奴隷とは日中出歩いてもいけないのだろうか?

「はなせっっ!!!」
森の中に威勢の言い声が響く。
アスランは思わず声のするほうを見た。
そこには男2人に掴まれた・・・・少女がいた。

ボロボロの服を着て、顔は薄汚れている。
これが奴隷・・・・
アスランは驚いた。
自分の周りにはきれいに着飾り、華やかな姿をした女性しかいないからだ。

「黙れ!!」
暴れ続ける少女に男は叫ぶと同時に少女の頬をぶつ。
「おい!?」
アスランは思わず声を発していた。

「なにも暴力を振るうことはないだろう・・・」
相手は女の子だぞ・・・
「・・すみません・・・」
男が謝った瞬間

「お前みたいな奴に同情されたくない!!」
という、少女の怒鳴り声が聞こえた。

「お前みたいに人を物として扱っているような奴に助けてもらおうなんて思わない!!」
「このっ」
更に続けるカガリに男は殴りかかった。

「ぐっっ」
その衝撃で少女は地面に叩きつけられる。
アスランは驚き、固まっていた。
この光景はなんなのだろう・・・
アスランにとってそれは経験したことのない、衝撃的な場面だった。


男は倒れた少女の体を縛り馬車に押し込むと柱にくくりつけた。
少女は先ほどの衝撃で意識が朦朧としているらしく抵抗をしない。

「ま・・・待ってくれ・・」
アスランはなぜだか分からないが、声をかけていた。
「奴隷とは・・・お金を出して・・買うものなのだろう?」
兵士は驚いたようにアスランを見た。
「俺が買ってもいいということか?」

「はい!それはもう!!お金さえ出していただけるのなら!」
男は手を合わせうれしそうに言った。

「では、買おう」

少女が欲しかったわけではない。
人をお金で買うなど、良い行為だとは思わない。
だが、このまま何もしなければ彼女はどうなるのだろう・・・
暴力を振るわれ、逃げ出そうとしていた彼女を見ていると、このままにしておくことはできなかった。

「アスラン様・・」
兵士が困惑した表情で見る。
心配しなくていい・・・とアスランは笑いかけた。

男はお金を受け取ると少女を差し出した。
少女は状況がつかめないのかただ、ボーっとしていた。





あとがき
ああ・・カガリが奴隷・・・。
でも、別にずっと辛いとかじゃないんで・・アスカガですから
幸せになれますよ〜★★
で、続くのだろうか・・(笑)