「あ・・おはようございます・・・」
「おはようシン、よく眠れた?」
「は・・はい・・・」
シンが部屋から出ると丁度キラが通りかかっていた。

「あの後・・・少しカガリと話したんです・・」
「・・そっか・・・」
「今でも好きなんだと思う・・・アスランって奴のこと・・・」
シンは手を握り合わせる。

「カガリが手を繋ぐ相手はオレじゃなかったんですね・・・」
カガリはきっとオレの手とあいつの手を重ねていたんだ。無意識に・・・

「だけどアスランはプラントの王子なんだろ?じゃあ・・・」
「ふふっっ・・・」

キラの笑みにシンは首をかしげる。

「君はいい環境で育ったんだね」
「え?」
「アスランをプラントの王子だと知っても呼び捨てだ」
「あっっ」
シンはヤバイとばかりに冷や汗をかく。
こんなオレがアイツのことを呼び捨てになどしたらどんなことになるか・・・
「いいんだよ。ここではね」
そう言えばこの人も王子だ。オーブの。
シンはキラを見上げた。

「ところでアスラン見なかった?」
「・・いえ・・・」
「そっか・・・どこ行ったんだろう・・・」
「あのオレ・・・カガリのところ行きたいんですけど・・」
「僕もだよ。一緒にいこう」
そう行って、2人は歩き出した。







記憶の欠片〜提案〜





カガリの部屋まで行くとキラがノックをする。

「カガリ・・・起きてる?」

「ん・・・・・」
その声にカガリは目を覚ます。
誰だっけ・・・この声・・・
そう思いながら寝ぼけたままベッドを降りる。
するりと掛かっていたシーツが落ちる。

久しぶりにゆっくり寝た為か、頭がぼやっとしてはっきりしない。
そのままカガリは扉を開けた。

「おはよう」
そう言って微笑むのは・・・・
「・・・・・・・・・・・・・へ?」
キラ・・・キラ・・・キラ!?
カガリは一気に覚醒した。

そうだ!昨日は!!
ここはっっ
カガリは昨日の出来事を順を追って思い出す。

そして最終的に思い出したのは・・・

「ん?・・・カガリ・・・?」

アスランがこの部屋にいるということ。

ゆっくりベッドから起き上がるアスランをキラとシンはカガリを通り越してみる。
カガリもだらだらと汗をたらす気分で後ろに振り返る。

「・・・あれ・・・?」
アスランも自分がおかれている状況に気付いたのだろう。
少し焦ったような顔になる。

「あ・・・そうか・・・その・・・」
アスランは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
あのまま・・・泣き疲れたカガリをベッドに寝かせて・・俺一緒に・・・・

「え?ええ?」
キラは真っ赤になったアスランを別の意味で取る。
「キ、キラ!その・・昨日アスランが来てくれて・・・」
カガリは必死に弁解をしようとする。
ひょっとしたらアスランが怒られるのではないかと思ったのだ。

「・・・・・・まぁ・・仲直りしたんなら・・・いいけど・・・」
キラは仲直りしたの?っとアスランとカガリを見る。
するとカガリはうれしそうに頷いた。
それを見たキラはほっと顔を緩ませる。

「昨日よりは落ち着いた?」
「ああ・・・すまなかった・・」
「いいんだよ」
「シン・・・ごめんな迷惑かけて」
カガリはキラの隣に目を向ける。
「迷惑なんかじゃないよ。オレがしたくてしたことだし・・」
そういいながらもシンの顔はふてていた。

別に・・カガリに恋をしていたとかではない。
だがこんな状況を見て・・喜べる気分にもなれない。
・・カガリがうれしそうなのは・・・良かったけど・・・

「カガリ、すごく大事な話しがあるんだ。もっと落ち着いてからのほうがいいのかもしれないけど、
ちょっと急がないといけなくてね」
キラはそう言いながらアスランを見る。

アスランはその言葉に思い当たりがなかった。
急がないといけない?

とりあえずアスランはベッドから降りると掛けていた上着を取った。




通されたのは落ち着いているが、高価なものだと思える装飾品が少し置かれていた部屋。
カガリはぐるりとその部屋を見渡す。
ミーアのところよりアスランの屋敷に近いな・・・
むやみやたらにものがない。
少ししかないからこそそのものが輝いてみえた。

「カガリここに座って」
キラはソファーを指差す。
「すぐに父が来るから」

「え?じゃあ・・俺・・」
カガリと一緒に部屋に入ってきたアスランは部屋から出て行こうとする。
「アスランもいて」

キラ・・?
オーブの王に俺がこんな形で会うことはできない。
それに今の俺はプラントの王子でも・・ないだろう・・・
父がどう判断を下したかは分からないが、俺はあの国でできることはないと出てきたのだ。

アスランはそう目で訴えたがキラの眼差しは変わらない。
アスランは戸惑いながらもカガリの隣へと座った。

しばらくすると、前にある扉が開く。
カガリは緊張した面持ちでそちらを見た。
なぜ自分がこの人に会わなければいけないのだろう
ひょっとしたらもといた場所に戻されるのかもしれないという不安があったが、アスランとキラが側にいることで
その不安はとても小さくなっていた。

出てきたのは髪が少し長く、髭を生やした男の人・・・
これがキラのお父さん。
ではオーブの王様。

その人は私を見つめると顔を輝かせた。
でもすぐに悲しそうな顔になる。
なんだろう・・・?
思わずアスランを見た。
アスランはそんな私を見て微笑む。
大丈夫だよ・・と。




「あなたがカガリ・・・」
椅子に座りまた私を見つめる。
「カガリ、少しだけ僕の話を聞いてほしいんだ」

「あ・・・ああ・・・」
そういうとキラはオーブの王様の横に座り話はじめた。


「僕のお母さんは僕らを生んですぐに体を壊したんだ。
しばらくはここで過ごしていたんだけどね、僕が3歳になる頃病状が悪化して、空気のいい別邸で過ごすことになった。
1人では寂しいだろうと僕の双子のきょうだいが一緒にそこで暮らすことになったんだ」

キラは双子だったんだ・・・

「そこで悲劇が起きた。
その別邸に盗賊が入ったんだ。彼らは金を奪う為に屋敷に入ったけど、そこには大したものはなかった。
必要としなかったからね。母は高価なものには興味なかったし・・・」

カガリは何が言いたいのか分からないながらも真剣にキラの話を聞く。

「それに怒った盗賊は屋敷に火をつけたんだ。そして母は死んだ」


「じゃあ・・キラのきょうだいも?」

キラは悲しそうにカガリを見た。

「母の遺体はすぐに見つかったんだ。思い出したくもない・・・・」

知らせを聞いて父と駆けつけた。
僕は母とカガリを探すためボロボロになった屋敷に中へ向かった。
火は消えていたものの辺りはまだ熱い熱で覆われていた。
父に止められながらも僕は必死で探したんだ・・・
でも母が寝ていた寝室で見つけたのは・・・塊。

これがお母さん?
でも、腕にしていた飾りが母のものと同じだった。
ぞっとした・・思わず吐きそうになったがそのとき「カガリは?」そのことが浮かんだ。
母の側にカガリの姿はない。
どこかで同じように・・・
そう思うととても立ってはいられなかった。

探さないと、どこかで泣いているのかもしれないと・・
そう思って立とうとするが足に力が入らない。
涙なんか出なかった。
ただ気持ち悪くて、怖くてへたり込んだまま気を失ってしまった。

気付いたときはベッドの上、
「カガリ・・は・・?」
横にいる父にまず聞いた。
父はゆっくりと首を横に振る。

お母さんと同じ・・・?
あのときの光景が目に浮かぶ。
と、ぐっと吐き気がきた。

そう、思い出すと今でも・・・

「キラ」
父が僕を見ていた。
私が話そうかと・・・
しかしキラはそれを断るように話を続ける。
「きょうだいの遺体は見つからなかったんだ・・だけど、いくら探してもどこにもいなかった」

「だけど・・・・・・・・」

「だけど・・・見つけたんだ・・・・僕の大事な半身・・・きょうだいを・・・」
キラはそっと胸元にある石を取り出す。


それは自分が持っている石と瓜二つ。
カガリはアスランを見る。
あれはアスランにあげたはず・・・
アスランはその瞳を受け止めるとそっと胸元から石を取り出す。

「え・・?え・・?」
私のはここにある・・じゃあきらの持っているのはなに?
カガリはキラとアスランを交互に見る。

「これは僕のなんだ」
そう言ってカガリの前に差し出した石には’キラ’と掘ってある。

私と・・・・同じ・・・

「ま・・待って・・・それはどうゆうことだ・・?」
手が震えだす。
大きな何か・・・知ったら・・どうなるんだろう・・・
カガリは声が震えていた。

「カガリ・・・」
アスランはそっとカガリの頭を撫でる。
「・・・・」
アスランを困ったように見るカガリ。

「カガリはキラと双子のきょうだいなんだ」


きょうだい?


誰と誰が?


私とキラが?


「な・・にいってるんだ・・私は気づきたときからどれ・・・・」

気付いたときから・・・
物心付いたときから


ー遺体は見つからなかったー

「その石は父さんが僕とカガリにくれたものなんだ。お守りとして・・・」

父さん

カガリはキラの横に座る人物を見る。
その人は愛しそうに私を見ていた。

何をいえばいいのだろう?
分かりました?
そんなこと言えない、言える心境ではない。

みんなの視線が痛い・・痛いよ!!

「部屋に戻ろうか・・・」
アスランの言葉にカガリははっとする。
「な・・・まだ整理できないだろ・・」
「・・・うん・・・」

「アスラン、君に提案があるんだ」
「?」

「僕らはカガリが認めてくれたらカガリを僕のきょうだいとして世界に発表する
そして、君にプラントの王子としての君にカガリをもらって欲しいんだ」

もらって欲しい?
カガリを捨てる・・?
いや違う。キラは自分のきょうだいとして世界に発表するといっている。

「この世界を救うもっともいい道は君がプラントの王子としてオーブの姫、カガリと結婚することだよ」


「キラ・・・・」


「私も手を尽くそう。パトリック殿には私からも話すが・・・」

「・・俺からいいます。それができなければ王となる資格などないですから・・」

「ごめんねカガリ、一気に何もかも言って・・・でも、そうでないと正しい答えは出せないでしょ・・・
きっと・・カガリの望む道を僕が作ってあげる。ゆっくり考えて・・」

カガリは何も言わなかった。
アスランについてこの部屋を出て行った。








あとがき