真っ白なドレス。
私はそれに袖を通す。
その隣には・・・アスランのお母様。

「まぁ・・よく似合ってるわ」
カガリは顔を真っ赤にする。
オーブの姫ということを発表して3週間がたっていた。
「結婚式は1ヵ月後にしよう」
アスランはそう決めてくれた。

すごく待ち遠しい。
だけど・・・
カガリは真っ赤な顔で母・・となる人に目を向ける。
恥ずかしい。
お母さん・・・ができるんだ・・・。

何度夢見ただろう・・・
幼い頃・・・
働いている家に小さな女の子がいた。
その子はお母さんに愛され、幸せそうに生活していた。
泣くとお母さんが優しく撫でている。

ああ・・いつからだったかな・・・夢なんて見なくなったのは・・・
見ても・・・考えても仕方ないって・・・思うようになった。

「楽しみだわ・・アスラン、カガリちゃんのこの姿見たらきっと真っ赤になるわね」
「え?」
カガリは現実へと戻ってくる。

「幸せになれるわ・・・なる権利があるんだもの」

「・・・はい・・・」







記憶の欠片〜純白の少女〜








「わあああ!綺麗にできたね!カガリ!!」
真っ白なドレスを着た私は・・・真っ赤な顔をして俯いていた。
「何で俯くの?」
「カガリ!」
ばんっと開いた扉からはシンが入ってきた。

「・・・・・・・・・・・・」
何も言わない・・・。
いや、何もいえないのだ。
シンは見る見る顔を真っ赤にするとうれしそうに笑った。

「おめでとう!オレ・・・自分のことのようにうれしい!」
「シンも早く結婚しないとね〜」
「キラさん・・」
あなたが先では?
と、シンはにらみを利かせる。

「もう、あなた達が先に見てどうするの!」
「でもアスランにカガリ取られちゃうんだから今日ぐらいね!」
「はい!」
シンとキラは顔を見合わせる。


「幸せなんだから・・泣かないで・・・ね?」
カガリは俯いたまま涙を流していた。
そう・・・幸せの涙を・・・。

今日はプラント国王子、アスラン・ザラとオーブ国姫、カガリ・アスハの結婚式だ。



「は・・入ってもいいでしょうか・・・?」
緊張したような声が扉の外から聞こえる。
「準主役のおでましだ」
キラはシンを促すように扉に向かう。
「じゃあ私も・・」
アスランの母もそれに続く。


返事がない・・・・・
アスランは扉の前で立ち尽くしていた。

勝手に開けてもいいんだろうか・・?
だめだ・・よな・・?

そんなことを考えているとカチャッと扉が開いた。
そこから出てきたのは・・・

「キ、キラ・・シン!?」
上機嫌のキラとシン。
「なんでっっ」
俺より早くカガリ見てるんだよ!?
アスランはショックを受ける。

「早く来ないからだよ・・・」
「そうですよ。カガリ泣いちゃいましたよ」

「え!?」
シンの言葉にアスランは焦る。
遅かったのか・・!?
「早く行っておあげなさい」
キラとシンに続いて母が出てくる。
ウインクをしながら。


・・・・・・・・・・・・・・
アスランは混乱しながら3人の後姿を見ていた。
違う・・カガリに会いに来たんだ・・・
アスランは目的を思い出すと扉の中を覗く。

『カガリ泣いちゃいましたよ』
シンの言葉が頭の中に木霊する。

「・・・カガリ・・・その・・遅くなってごめん・・・」
覗き込むとそこには俯いたままのカガリ。
アスランはゆっくりとそんなカガリに近づく。

「うん・・・・・・いいんだよ・・・」
アスランはそっとカガリを抱きしめる。
そしてカガリの顔を覗き込んだ。

「うれし泣きなら・・・ね」
カガリは悲痛な表情ではなく、うれしそうに頬を染めながら泣いていたのだ。

「・・うれしい・・・・だって・・・こんなこと・・・夢にも思ってなかったから・・・」
好きな人と結ばれる。
こんな幸せなこと・・・
カガリはぎゅっとアスランノ腕を掴む。

「俺もだよ・・こんな幸せな結婚ができるなんて思っていなかった・・・」
思わなかった。
どこかの国の誰かと結婚する。
そんなものだった。
だが違う。
今俺の胸にいるのは世界で一番大事で、愛している女。
カガリと共に歩むことができるんだ・・・・

「行こう・・・始まる・・」

「うん・・・・」

「ここからが始りだな・・俺たちの・・・」

「そうだな・・・」

オーブとプラントで奴隷を救済する。
それは私達の同じ夢。
同じ夢を持って共に歩んでいける。

そうだここからが私達のスタート。
辛いことも、苦しいこともあるだろう・・・
でも2人なら大丈夫。
超えていける。


アスランとカガリはみんなのいる・・・守るべき、守られるべき人がいる場所へと足を向けた。





あとがき