「まぁ!本当に!?」
「ああ・・・こうなった以上・・仕方ない・・・」

父さんと母さんが夜中、こそこそ話しているのが聞こえた。
トイレに起きたオレはそんな2人の話に聞き入る。

「仕方ないって言っても・・・」
「分かっていたことだろ・・いつかこんな日が来ることを・・」
どうして母さんは泣いているんだろう?
どうして父さんはあんなに苦しそうな顔をしているのだろう・・

少年の中には疑問が渦巻いていた。

「シンは・・・勇者として生まれたのだ。その宿命をもって生まれたんだ」

シン・・・
自分のことを話しているのだと少年は気づく。
オレがなんだって?
勇者?

ドアの隙間から覗き込むようにしてシンはごくんと唾を飲んだ。

「シンは、魔王を倒す勇者だと知ってあの子を育ててきたのだ。
ラクス皇女がさらわれた今こそ、シンの力が必要なのだ」

「分かっています。でも・・・あの子を戦いに送ることなど・・・」

「そうしなければこの国は滅んでしまう!ラクス皇女の力によってこの国の安泰は守られてきたのだ。
なんとしてでもラクス皇女を取り戻さねばならない」

ラクス皇女がさらわれた?
あの、この国のすべてをこの世界のすべてを司るといわれているあのラクス皇女が・・・

それを助けられるのは・・オレ?
どうして・・・?

「とにかく、私からシンには話す」

そこで2人の会話は終わった。

オレは混乱した頭のまま布団に入った。




デスティニークエスト〜勇者の旅立ち〜





目覚めると、昨日のことは夢だったのではないかと思う。
だが、この記憶は・・・夢などではない。
そう心が告げていた。

「シンーーー!寝ぼすけか!?」
窓の外から威勢のいい声が聞こえてくる。
シンはその声を聞くと、勢いよく体を起こし、窓を開ける。

「うるさいぞ!カガリ!」

「なんだ、起きてたのか」
カガリは窓に近づくと、よいしょっと窓枠に手を掛けよじ登る。

「面白い場所見つけたんだ。一緒に行こう」
トンットと窓から家に飛び降り、カガリはにっと笑う。

「・・ああ・・」
「なんだ?元気ないな・・・」
「別に・・」
シンはむっとして答える。
昨日のことが気になってそれどころじゃないってのに・・

カガリはオレが10歳ぐらいのときにこの町に越してきた。
歳が近かったこととカガリの物怖じしない性格からオレたちは毎日のように一緒に遊んでいた。

「シン、起きなさいよ」
母がドアを開け入ってくる。
「あら、カガリちゃん来てたの?」
「あはようございます。おばさん」
カガリはぺこりと頭を下げ挨拶をした。
「あはよう・・ごめんねシンには事な話しがあるの・・・だから今日は一緒に遊べないのよ」
「えー?」
カガリは残念そうに言った。

大事な話・・とは昨日のことだろうか・・・
シンに嫌な予感が走る。

そのとき、なんの音か分からないが地に響くような音が辺り一面に木霊し始めた。
「え?何・・・?」
カガリはあまりの音の大きさに耳を塞ぐ。
シンと母も驚いたように辺りを見回した。



「シンはいるか!?」
そのとき、父が過ぎ勢いで部屋に入ってきた。
「あなた・・なんですか・・これは・・」
「いいから!シン!!」
父は母の言葉も聞かず、シンの両肩をつかむ。

「いっっ・・」
あまりの力の強さにシンは眉をしかめる。

「いいか、よく聞け。今、外には魔物がやってきている。」

魔物!?

「お前を狙っているんだ!お前がこの国を救う勇者だから、お前の命を狙ってきたんだ!」

・・・・昨日の話のことだ・・・
シンはピンと来た。
オレを狙っているということは、オレがここから離れればいいんだ。
シンは窓の外をじっと見つめた。

「シン・・・お前は逃げろ・・」
「・・え!?」
父の意外な言葉にシンは声を上げる。

「お前はこの国の希望の光だ。お前が死ねばこの世界は終わる」

「父さん・・・意味が分からないよ・・・」

「お前は天から授けられた勇者なんだ。子供の出来ない私たちに天が授けてくださった、希望の光だ」
そう言うと、父は優しく微笑む。

「・・・シン・・立派に育ってくれてうれしいわ・・・あなたはいつまでも私たちの可愛い子供よ・・・」
母は優しくシンの頭を撫でた。

「なに言って・・るんだよ・・・そんな・・一生の別れみたい・・に・・・」

「行け!」
父は思いっきりシンの背中を押す。
「カガリちゃんのことお願いね」

母の言葉にカガリはあっけに取られたままの瞳を瞬かせる。
「・・・シン・・・」
と、不安そうにシンを見た。

「ザフト城をめざせ!道は開かれる!」
父の言葉を背にシンは窓から飛び出した。

「カガリ!!」
振り返りカガリに手を伸ばす。
カガリも手を伸ばし、2人の手は重なった。

シンは後ろ髪引かれる想いで走り出す。

父と母は大丈夫なのだろうか・・・ でも、今のオレができるのは言われた通りカガリをつれて逃げることだ。
繋がった手を更にきつく握り、シンは走り続けた。

「シ・・ッシン・・・ど・・くつ・・・」
「何・・?カガリ・・・」
走りながらカガリが苦しそうに話しかけてきた。

「面白い場所・・見つけたって言っただろ・・・あそこなら・・・隠れられる・・」
「・・分かった」
シンはそういうと、カガリの道案内でその洞窟に急いだ。




「・・・ここ・・・」
カガリが指差したのは何もない場所・・・
岩があるだけだ。
「ここに手を入れたら・・・」
カガリはそういいながら岩の隙間にある小さな隙間に手を差し込む。

ズズズズズズズ・・・
すると、大きな音を立てて岩が動き始めた。

「なんだ・・・っ」
シンはその動きに驚き後ずさりする。
音が静まるとそこには人1人が何とか入れる空洞ができていた。
「早く」
カガリはすぐさまそこに入る。
シンも後をついて入ると、岩は轟音と共に元通りに閉じた。

「暗い・・・」
光を遮られたそこは真っ暗で、目の慣れていない2人には暗黒にしか映らなかった。

「大丈夫だ」
カガリがそういうと、ふっと明かりが灯る。
ぽっぽっぽっぽ・・・・
岩の両側に明かりが灯っていく・・・勝手に・・・

「どうなってるんだ・・?」
「分からない。私も昨日見つけたんだ・・・」

洞窟はずっと奥まで続いているようで明かりが灯っても先が見えない。

ひたひた・・・
2人はとりあえず奥へと進んだ。

「みんな・・・大丈夫かなぁ・・」
カガリが呟く。
シンはぎゅっと拳を握った。

なにがどうなっているのか分からない。
だが、オレのせいで村は襲われ、オレを逃がす為に両親は・・・

「あ!すまない・・シンを責めてるんじゃないんだ・・」
自分の言ったことでシンが苦しんでいると感じたカガリは言った。



「どこまで続いてるんだろう・・・」
もう、10分は歩き続けている。



「あ・・・」
薄暗い明かりではなく輝くような光が2人の眼に飛び込むと
慌ててそこへ走り寄った。

そこには・・・・

なんだ・・これ・・・?

そこにはぽっかり開いた空間。
真ん中にはちゃぽちゃぽと音を立てる泉らしきものがあった。
「お水・・」
カガリはその泉を覗き込むと、
「あ!!」
と、声を上げた。
「どうしたんだ?」
シンも泉へと近づき中を覗き込む。

「・・・剣・・・?」
泉の中には剣らしきものが沈んでいた。
「こんなとこに入れてたら錆びちゃうじゃないか!」
カガリは怒ったように手を泉につける。
が、その瞬間、激しい電撃がカガリを包む。

「きゃあああああ!!!!」
カガリは衝撃で飛ぶようにして転がった。
「カガリ!!!」
シンは慌ててカガリの元へ駆け寄る。
「痛い〜〜っっ」
カガリは手を押さえ、固まっていたが声もだせているし、表情は硬いものの、顔色は悪くなく
シンはとりあえずほっとした。

「大丈夫か?」
「あーびっくりした!なんだあれ!」
カガリは怒ったように立ち上がるとまた泉に近づく。
「おい!」
シンはまた手を突っ込むのではないかと慌てた。

「だって・・・気になるじゃないか・・・」
カガリはシンを見るとあの剣を取りたいとばかりに言った。

しかたないな・・・
シンは1つため息をつくと、泉を覗き込んだ。

で、なんでこんなことろに剣があるんだ・・?
そもそもここはなんなんだ?
シンは気を紛らわせながらそっと泉に手を近付ける。

触れるか触れないか・・・シンは衝撃に備えて体を硬くする。

しかし、手に水の感触がきても衝撃は来なかった・・・

あれ・・・・拍子・・抜け・・

シンは何も起こらないことが分かると勢いよく剣に手を伸ばし掴んだ。
ザバっと泉から剣を持ち上げる。


「え・・?」
するとその剣がまばゆい光を放ち、カガリとシンは眼を瞑った。

シンは恐る恐る眼を開ける・・・しかし、そこには相変わらず眩しい光・・・
だが、そこには光だけでなく、誰か・・・いた。

「・・・・誰・・?」
シンの言葉にカガリも眼を開く。
そこにはとてもキレイな女の人がいた。
いたというのだろうか・・・体はどう見ても透き通っている。

「おば・・け・・?」
カガリは思わず女の人に手を伸ばす。

『勇者よ・・・お待ちしておりました・・』

「「しゃべった!!」」
2人は飛び跳ねるように抱き合った。

『私は今、魔王によって力を封じ込められています。この力がなくてはこの世界はやがて暗黒へと飲み込まれてしまうでしょう』

勇者・・・オレのことなんだろうか・・?
シンは大きく眼を開くと女性を凝視した。

『時間がありません。早く私を・・・』
女性の姿が乱れる。
「ちょっと待って!なんなんだ?オレはどうすればっっ・・」
シン声も虚しく女性どころか眩い光も消え去ってしまった。

・・どうしろっていうんだよ!!
シンはぎゅっと剣を握り締める。

カガリはじっとそんなシンを見ていた。

「な・・・助けてあげないか?」

「え・・?」

「よく分からないけど、助けてあげないと良くないことが起こるんだろ?」
カガリの言葉にシンは考え込む。

あの人は誰だったのだろう・・・
ピンクの長い髪・・・優しい微笑み・・・

でも、オレは勇者なんだ。
きっとオレにこの国を救える力があるんだ!
だから両親はオレを逃がした

だったら・・・

シンは赤い瞳を輝かせた。
燃えるような赤い瞳。

「オレ、何ができるか分からないけど、やってみる」

「ああ!私も一緒にがんばる!」

「え!?」

「なんだよ・・私だってあんなの見ちゃったら気になるだろ・・」

「それはそうだけど・・・魔物と戦うことになるんだぞ・・・」
オレは狙われているというのにカガリまで巻き込むわけにはいかない・・・

「いやだ!行く!」
お前だけなんて心配でいかせられるか!とでも言いたいようなカガリの瞳。
端には涙がたまっていた。


「・・・分かったよ・・・でも、オレの言うことは聞けよ」

「ああ!」

シンは剣を持つと背中に引っ掛けようとした。
が、赤い炎が巻き上がり剣を包む。
「わっ」
シンは思わず眼を手で塞ぐ。

と、聞こえてきたのは鈴の音・・・

りん・・・・・

手の落ちてきたのは小さな鈴。

「・・・剣は・・・?」
そう言った瞬間、鈴がまた炎に包まれ剣の姿になる。


「「わーーー!便利!」」
2人は同時に叫ぶ。

すげえ・・・剣が欲しいと思えば剣になって、
しまいたいと思ったら鈴になるんだ!

シンは眼を輝かせた。

「よし、カガリ。まずはザフト城へ向かうぞ!」

「よーし」


こうしてシンとカガリの旅は始まったのである。





あとがき
始まりました(笑)
んきゃーー!シンちゃんが主人公ですよ〜。
なんだか、いいですね〜
もちろんアスランもでてきますからね♪
ちなみに私の中でのドラクエは6です(多分)。
1番好きです☆
ハッスルダンスが大好きなんですよ。あれはいい!チャメロ・・だっけ?なんだっけ・・?
あれにも覚えさせたんだよね〜♪