薄暗い祭壇の前で1人の少女が座っている。
彼女は切なそうに歌を歌っていた。


『静かなこの夜にあなたを待ってるの』

これで世界は変わる・・・・
私のこの歌で・・・

歌いながら
ミーアの脳裏に過去の出来事が蘇る。



「必要なのはラクス様だ」
私の横には私と同じ顔の女の子。
兵士は彼女の手を取り部屋を出て行く。
「待って・・・私も一緒にいく・・・」
ミーアはかけるようにしてラクスの後を追う。

「お前は悪魔の子だ。お前が歌えば世界は滅ぶ」
男は鋭い眼光をミーアに向け、扉を閉める。

どうして?
私はダメなの?
ラクスは必要で私は必要じゃないの?
ミーアの心の中を悲しみが襲う。

ドアのノブに手をかける。
昨日までは開いたその扉。
今は頑丈に鍵がかかっている。

ガチャガチャと何度もノブを回すが開く気配はない。

「出して!私もラクスと行くの!!!1人にしないで!!」
1人は嫌。
いつもラクスと一緒だったんだもん。
これからも一緒なのっ

歌えば・・・
ミーアはすうっと息を吸うと歌い始めた。

そう、私が歌えばこの扉は壊れる。

しかしその扉は壊れる前に開いた。

ミーアは喜びで顔をほころばせる。
だが飛び込んできたのは人の・・・足・・・?

「うっっっ」
激痛がミーアに襲う。

何・・・痛い・・・・・苦しい・・・

「歌うな!お前が歌えばこの世界が滅ぶんだぞ!!」

滅ぶ?
ミーアは激痛に顔を歪めながら男の足元を見る。
痛くて顔を見上げることも出来なかった。




それから何年間たったのかわからない・・・
私は閉鎖された部屋でずっと暮らしていた。
食事して・・・ただ生きてるだけ・・・
何の意味があるんだろう・・・

ラクスはどうなったのか・・・
ミーアはふと気になった。

暗い空間にずっと入っていたためか、現実的な考えではない。
どこか・・・それにすがるような思い。
ラクスも自分と同じように感じていると・・・そうだと思いたい気持ち。

自分と同じ目に合ってるのではないか
一旦思ってしまうと、いてもたってもいられなくなった。

ならば一緒に逃げよう。

ここにいても何もできない。
ラクスと私はいつも一緒だった。 あの日までは。

逃げ出して2人で静かに暮らそう・・
昔みたいに・・・私達は同じなんだから。

ミーアはそう決意した。




デスティニークエスト〜過去と現在〜





『小さなこの夜に』
ミーアは小さな声で歌う。
そう。
私は歌うことが好きだった。
だけど、歌っているのを見張りに聞かれると殴られた。
「この世界を壊す気か」と・・

私は歌いたいだけ・・・この世界を壊そうなんて思っていない。

その小さな歌声でカシャンと鍵が落ちる音がする。

ここに入って何年も過ぎているせいか、見張りのいないときも多い。
ミーアは辺りを見回し、誰もいないことを確認すると駆け出した。



はぁはぁ・・・
ラクスはどこにいるのだろう・・・
ミーアは見つからないよう柱に隠れながら走っていた。


そのとき懐かしい歌声が聞こえてきた。

「・・・ラクス・・・」
そうだ。この声はラクス。

ミーアは声のする方へゆっくりと進んだ。


ピンクの髪が見える。

見つけた!!!
ミーアは顔を輝かせた。
しかしすぐに何かに気付く。

「休憩しますか?」
藍色の髪をもった身なりのいい男性。
「はい」
その男性にラクスは微笑んでいた。

ミーアの足の感覚が消えていく。

なに・・・?
ラクスは私と違って・・・
笑って生きていたの・・?
この広い場所で誰にも妨げられず歌って・・・素敵な人も側にいて・・・

ラクスはうれしそうにその男性とテーブルへと向かう。

信じたくない。

私は1人だったのに・・ラクスはそうじゃなかった・・・?

ミーアの顔がどんどん険しくなる。

ラクスを見た後の自分はなんて惨めな姿だろう。
服は薄汚くて、髪はぼさぼさで・・・
同じ顔なのに・・・こんなに違う!!

そうだ・・・私は悪魔の子・・・
ラクスとは双子なのに、私は悪魔・・・じゃあラクスは何?

天使?



許せない・・・

ラクスは私の幸せを全部持っていて私はラクスの不幸を全部背負っている
そう感じざるおえなかった。

私はそのまま外に飛び出した。

抜け道は変わっていない。
小さい頃ラクスとよく遊んだ場所。

皮肉だわ。
こんなことろから私1人で惨めに出て行くなんて・・・




数日後、デュランダルに会った。
行き場がなくてふらふらしていた私を拾ってくれた。

まるで神様のようだったわ。
何もない私に唯一見えた光。
私を必要だといってくれた人・・・

彼のために歌うの・・・・

『いつも願ってた今遠くても〜』

ミーアの頬を一筋の涙が伝う。


私が悪魔でラクスが天使。
何が違うの?
私はミーアとして生まれてきただけよ

「それだけなのにっっ」
ミーアは歌を中断し思わず声を荒げる。

コツン・・・

聞こえてきた足音にミーアは驚いたように振り返る。
ここには誰も入ってこないはずだ。
歌うとき、私の周りには何が起こるか分からない。
それは・・自分が1番良くわかっている。

「・・・なによ・・・」
ミーアの瞳に映ったのはキラだった。

キラ。
見ているだけでイライラする。
デュランダルに救われたというのに彼に忠誠も誓わない。
それどころかいつも暗い顔をして何を考えているのかさっぱり分からない。

「・・・君も苦しいの・・?」
キラの言葉にミーアは目を丸くする。

「苦しい?何でよ。私はこの世界を変えられる唯一の鍵なのよ。私の歌声は世界を壊すの」
「壊す?」

この人は本当に何も知らないんだ・・・
私より前にデュランダルのもとにいたのに・・聞いたりもしなかったのかしら・・。

ほんとに・・・嫌なやつ。


「ねぇ、あなたラクスが好きなんでしょ?」
ミーアは全く違う話題を持ち出す。
しかしミーアにとってはそれなりの意味があった。

キラは眉をしかめたまま何もいわない。

ミーアは立ち上がるとキラに近づいた。
漆黒のようなドレスがふわりと風を作る。
裾はキラの足元を覆うように舞った。

「私もラクスと一緒なの。顔だって同じだし、血だって同じなのよ」
ずいっとミーアはキラを覗き込む。

「血・・・?」
「ええ。私とラクスは双子なんだもの」
「え・・・?」
混乱しているキラをよそにミーアはキラの首筋に腕を絡める。

「だから私でいいじゃない。あの子は眠ったまま。それで十分なの。それだけでこの世界は生きていけるわ」
さらりと流れるミーアの髪は水晶越しに見ているラクスの髪よりリアルで・・現実味がある。

「そしてその世界を正しい道へと導くのがデュランダル」
彼が・・・道を開く?
キラは絡められた腕を解くこともなくミーアを見つめる。

「だから私でいいじゃない」
顔は余裕そうに笑っていた。
しかしその内面は全く逆の気持ちで溢れていた。

「ラクスと私は同じ」
同じじゃないことはとっくの昔に分かってる。

「姿も顔も」
あの子は天使で私は悪魔。

「ね・・・だから・・・」
ミーアは腕の力を強め、キラを引き寄せる。

しかし、キラはすぐにミーアから遠ざかった。
ぐいっと体を押しのけ数歩下がったのだ。

ミーアは宙に腕を絡めたままの状態でキラを見る。

「君は君だろ・・・ラクスがどうとか双子とか・・そんなの関係ない・・」

・・・・・君は君・・?
ミーアの表情が一気に険しくなる。
「っっ私は私だと言いたいの!?私は悪魔でラクスは天使だってあんたも言うの!?」
両手が白くなるほどきつく握り締めるミーア。
私の歌は世界を壊し、ラクスの歌は世界を守る。
正反対の力を持って生まれた。

「でも仕方ないじゃない!私がそう望んだんじゃないもの!!」


「そうだね・・・きっとラクスもそうだよ・・・」

キラの言葉にミーアは歯をぎりっとかみ締める。
「そんなわけないわ!!ラクスは笑っていたもの!私がずっと閉じ込められてた間あの子は笑ってたのよ!!」
ラクスは幸せに過ごしていた。
それが真実。
望まなくてもラクスには幸福が、必要とされる力があった。

「でも・・・・」
ラクスは決して幸せなわけじゃなかった。

少なくともあのときの彼女はそう見えた。




「僕がですか?」
キラはデュランダルの前に立っていた。
「ああ、ぜひとも君にお願いしたい」
彼が僕に『お願い』したのはプラント城にいるラクス皇女をここに連れてくること。
僕はラクス皇女など知らない。
しかしデュランダルは
「綺麗なお姫様だよ見ればすぐに分かる。ミーアにそっくりだからね」
そう軽く言った。

しかし、なぜ僕に頼むのか分からなかった。
忠実で真面目、命令は絶対こなすレイがいる。
彼に頼んだ方が確実ではないだろうか?
僕でなくてもそう思うだろう。
だがデュランダルはそうしない。なぜ?

「キラ、君はなぜかは分からないが、魔の力の影響を受けにくい体質らしい」
魔の力。
それはここにいると受ける負の力だ。
多くの魔物が行きかうここでは、魔の力が氾濫している。
ディランダルもかなりの量を放出していた。
その側にいる人間は少なからずその影響を受ける。
体から溢れるオーラが負の力に犯されていくのだ。

「・・・・・なぜ?」
それは彼も聞きたいだろう。
なぜか僕はその影響を受けず、負のオーラを持たない。
「とにかく、君なら誰かに咎められることもなく近くまでいけるだろう」
城では負のオーラによってその人物を魔物か、人間か判別している。
人間に化け、城に入る魔物がいるからだ。

「・・・・・分かりました・・・」
彼は僕をここまで生きさせてくれた。
それに対して何もしないのは・・・心が咎める。
だって、彼が僕に『命令』を下したのは初めてだったからだ。



その夜、僕は下調べの為、プラント城を訪れた。
城の中には入れないが、城下町にはいろんな人が入れる。
旅人のふりをして僕は街へと入った。

デュランダルのいる城から出たのはどのぐらいぶりだろう。
出るなとも、拘束もされていない。
だが、行きたい場所などなく、いつもそこで外を眺め、鳥を見、風を聞く、そんなことばかりしていた。

初めて訪れたそこは夜とは思えないほど明るく照らされていた。
酒場からは大きな男の声が聞こえる。
キラは町の風景を見ながらゆっくりと歩く。
しかし、人の声、動きに酔いそうになった。
慣れてないせいか、視点が定まらない。
ふらふらっと、人の少ない方へと無意識に歩いて行った。

「大丈夫ですか?」
建物の壁にもたれかかって座っていると誰かが声をかけてくる。
キラは青ざめた顔でその人を見上げた。
「まぁ大変・・・お顔の色がすぐれませんわ・・・いまお水をお持ちいたしますわね」
それを断る間もなくその人影はどこかに走っていく。

参ったな・・・なるべく人とは関りたくないんだけど・・・
そう思いながらも気持ちの悪さに立つこともできない。


ぱたぱたと足音が聞こえてきた。
先程の人物だろう。
「さぁこれをお飲みになって・・」
その人は僕の背中を軽くさする。
キラは差し出されたカップに手を伸ばしながらその人物の顔を見る。
しかし、深くフードをかぶっていて顔は見えなかった。
話し方からすると・・けっこう・・若い少女だろう。
カップから離れていく手は細く、透き通るような肌をしていた。

「・・・ありがとう・・・」
僕は素直にその好意に甘えることにした。
手にした水は透き通っていて・・・とても・・
「おいしい・・・・」

「そうでしょう。ここのお水は湧き水を利用していますの。豊かな自然が下さった宝ですわ」
少女は僕を見て笑うと、僕の横に座る。

いけない・・・
このままこの子とここで話しているわけにはいかないと立ち上がると、少女も同じように立ち上がる。
「お住まいはどこですの?1人ではお辛いでしょう?」
少女は僕の腕を支えるようにして持っていた。

そこで気がついた・・・
僕は真っ直ぐ立てないほどに酔っていたのだ。
人に・・・街に・・・

ぐらっと体が傾く。
「っっっ」
「あ・・・っ・・・」
倒れそうになった僕を支えようとしたのか、少女が掴んでいる腕に力がこもるのを感じた。
が、男の体重を支えられるわけもなく勢いあまって一緒に倒れこんでしまった。

顔にかかるのは柔らかそうな髪の毛。
「・・・・・・」
フードがはだけ、少女の顔が、髪が露になった。

「す・・すみません・・・」
上に覆いかぶさるようになっていた少女はゆっくりと体を起こす。

「・・・君・・・もしかして・・・」
「あ・・・」
少女はフードが取れていることに気付き慌てて頭にかける。


「ラ・・・・」
ラクス皇女。
そう、その姿はデュランダルの言ったとおりミーアにそっくりだった。

なぜ彼女がここに・・・?
城の中ではなく・・・

「どうしてこんなところにいるのかとお思いなのでしょう?」
混乱している僕にラクスは照れたように笑う。
フードから覗く顔は言葉とは違い硬いものだった。

「・・・・・自由が・・欲しかったんです・・・」

ラクスは立ち上がると真っ暗で・・それでいて輝いている空を見上げる。
空にはたくさんの星が散りばめられていた。

「いつも同じことの繰り返し・・・それで全ての人たちが幸せに暮らせる・・・そう思って生きてきました。
私が歌えばこの世界は安泰に包まれる・・・そう・・私も・・・」

ラクスは輝く星を愛しそうに見つめる。

「・・お星様と同じですわね。輝いてみんなを照らす。でも・・・・・」

そのとき、ラクスの頬を一筋の光が伝う。
その光はぽとりと草の葉に落ちた。
キラは落ちた光を追って目線をさげたがすぐにラクスに向く。

「星自身は自分の眩しさに目がくらみ、何も見えないのです・・・っっ」
ラクスは胸の前でぎゅっと手を握りしめる。
自分の存在を確かめるように・・・・

「幸せじゃないの?」
まだふらつく体。
立ち上がっているラクスに向き合うようにキラはその体に力を入れ、立ち上がる。

ラクスはキラを見ず震える自分の手を見ていた。

「あの頃は幸せでしたわ・・・何も知らず・・穏やかに暮らした日々・・・」
何かを思い出しているのだろうか・・
ラクスは愛おしそうに空を見ている。

無言の間
遠くからは男達の笑い声が聞こえてくる。

「・・・君はなぜ僕にそんな話をするの?」

今日初めてあった僕に・・・なぜ?

そう言った瞬間、ラクスは悲痛な顔をした。
いけないことを言っただろうか?
ラクスのその表情に胸が痛む。

「・・・っっっ変わりたいっっ・・・・わたくしは・・・ただ・・・っっ」
どうして・・・私はこの想いを胸に生きてきたのに・・・
ラクスはその表情を歪ませぼろぼろと涙を零しだす。
溢れるように流れる涙は全ての悲しみ、苦しみを背負っているようだった。
光の雫は星の光を受けキラキラと光っている。

思っては失礼なことかもしれない・・でも・・・綺麗だと・・・美しいとキラは思ったのだ。

「・・・・私はここから抜け出したい!!」
あなたにまで・・あなたにまで私は忘れられてるなんて・・・!!


撒き散らしたピンクの髪はフードによって妨げられるがキラからはその髪がなにか・・・
記憶の何かに呼びかけてるような気がした・・・

「・・抜け出せるよ・・・一緒にいけば・・・」
キラはそっと出を差し出す。
ラクスの涙がキラの掌に零れ落ちる。

「行こう・・・」
そんなにここにいるのが嫌なら・・この手を取ればいい・・・
取らなければ・・・それでもいい・・・・

そっと感じた暖かさ・・

「明日の夜・・・私を迎に来てくださいませんか?」
ラクスはそう言って無理して笑った。





「あなたもラクスの味方なんだ」
はっとキラは我に返る。
ミーアは真っ黒なドレスをひるがえし祭壇へと手を添える。
「壊してやる・・・すべてを・・・そうしたら新しい世界を1から創り直せるんだもの・・っ」
「ミーア!?」
その言葉にキラは声を荒げる。

「あなただって生きてる意味が分からないんでしょ!!デュランダルは私達にそれを与えてくれるのよ!」
「でも・・失ったものは戻らない・・君だってそれは分ってるだろ・・・?」

ミーアの脳裏に浮かんだのは幸せだったあの頃。
自分とラクスが隔たりなく過ごしていたあの日々。

「だからやるのよ・・・・そうじゃないと私と同じ目に合う人たちが出てくるもの・・・」
ミーアの瞳は過去を映し出していた。
その存在はとても儚く・・だが大きく見える。
キラは何も言えなくなってしまった。

彼女が抱えているものはとても大きく、自分とは比べ物にならないものだ。

僕は自分がなんなのかも分からない。
何をすればいいのか分からない・・・

デュランダルは僕に居場所を与えてくれたけど、僕の中は空っぽだ。
彼は僕のような人を自分の力で作っていくのだろうか?
存在価値はあっても、存在理由とはいえない。
だが、ミーアは今を変えたいと願って突き進んでいる。

それを僕が止めることなんてできない。
その・・・理由もない。

「歌の邪魔よ。出て行って」
ミーアにきつい眼差しを向けられキラは何も言えずその場を後にした。

「これで・・・これでいいのよ・・・っっ」
今が革命のときなんだもの・・・
ミーアは静かに瞳を閉じると透き通るような声で歌い始めた。




扉を閉め、立ち尽くすキラ。
ふと誰かの視線を感じ顔を上げるとそこにはレイがいた。

キラは目をあわさないよう通り過ぎようとしたが
「存在理由が知りたくないか?」
というレイの言葉に足が止まる。

レイは靴音を響かせキラに近づく。

「お前も戦って存在理由を見つければいい。デュランダルの為に」

戦いなんてしたくない・・・
瞳と瞳が重なり合う。
これは命令なのだろうか・・・?
彼の。デュランダルの・・・

「刺客を勇者に向かわせる。お前も行きたければ行け」
「・・・殺す・・のか?」
「デュランダルはああ言っていたが、俺は・・・危険なものは始末しておいた方がいいと思う」
デュランダルの創ろうとするものを邪魔立てする奴は誰だろうと・・・

「お前が決めろ」
レイはそう言うと来た通路を戻って行く。


「・・・・・・・」
僕はこれからどうしたらいいんだろう・・・
キラは頭の中が真っ白になっていた。
何かを考えているのだが、実のところ何も考えられていないのだ。
指し示すものも人も自分自身にはない気がした。
デュランダルの指示もどこか他人事の気がしていたのだ。



『行って下さい』


「え・・・・?」
空耳のように聞こえたその声。
キラは辺りを見回すが誰もいない・・・

今の声・・どこかで・・・

そうだ・・・・この声は・・・
キラは思い出したかのように走り出す。

今の声はっっ

カンカンと響く足音は階段を下っていく。

あのときの・・そう・・・

彼女の声だ。

開かれた扉の中には彼女・・・ラクス皇女の姿。

キラはかけるようにして近寄る。

「・・君が・・僕に話しかけたの・・?」

しかし望む声は返ってこない。

キラはラクスを見つめる。
見つめ返されることはないが、確かに感じる彼女の・・・想い・・・


『行って下さい』

その声が頭に木霊している気がした。





あとがき
やっとキラとミーアの過去がなんとなく出てきました☆
キラの場合はまだ謎ばかりですけどね。
ミーアはまあ・・こんな感じかなー(笑)
本音をばかばか言うミーア大好きです!!