そこは得体の知れない何かで囲まれていた。
何ていうものなんだろう・・・?
シンは壁にそっと手を触れる。

「機械は初めてか?」
その声は先ほどまで話していた人物『砂漠のトラ』だ。

「機械っていうかのか・・これ?」
シンは壁をじーっと見る。
木ではない、岩のように硬い素材。

「金属で出来てるんだ。木もそれなりの強度はあるが、機械には不向きだからな」
そう言いながら進んでいくトラの後を4人はついて歩く。

ここは先ほどの大きな物体の中。

金属・・・
アスランはこつんと壁を叩く。
時代は進んでいるのだろう。
こんなものが動くなんて・・・。

「それにしても俺達を中に入れてもいいのか?」
アスランはトラの背に話しかける。

「あのままじゃ君たちは死んでたかもしれないよ。それじゃあ僕は後味が悪いからね」
シュン
扉が自動で開く。

そこにはテーブルが置かれていた。

「座りたまえ」
アスランは部屋に入ると辺りを見回し危険なものがないか確認をする。
トラはそれを見るとふっと笑った。
「大丈夫だよ。君たちを殺してもなんの得もない」

俺がプラントの王だということは関係なさそうだな・・・
アスランはそう考えると椅子へと座る。
それにシン達も続いた。




デスティニークエスト〜騎士団長〜





「状況は?」
「はい。多くの魔物たちがそ空を覆いつくすように現れ始めています」
「そうか・・・原因は分るか?」
「いえ・・・だた、魔物がでてきている場所なら大体は分りますが・・」
「どこだ?」
「地図上でいいますと・・」
男はテーブルの上に地図を広げる。
と、つーっと指を滑らせある地点で動きを止める。
「この辺りです」
「・・プラント城の真裏辺りか・・・」


「!?」
ガタンとアスランは席を立つ。
プラント城の真裏・・・
トラはそんなアスランを横目で見ると地図に目を落とす。
「この世界は球体で出来てるらしいからね・・君も知ってるのか?」
「あ・・・ええ・・聞いたことが・・」

トラは考え込むようにして首をひねる。
「とりあえず地下に降りよう」
「はい」
男は敬礼をするとその部屋を後にした。



「さて・・・・」
トラはアスランたちに向き直る。

「僕はバルトフェルド、砂漠のトラだ」
いきなりの自己紹介にシンやカガリは「え・・」っと言葉を詰まらせる。

「・・・アスランです」
しかしアスランは冷静に自分の名を伝える。

「どうしたものかね・・・あの様子では数万の魔物がいるだろう」
「・・・・・・・」
プラントの真裏。
暗黒魔城から魔物がやってきている。
ということは・・・・動き出したということか?
俺達は間に合わなかったのだろうか・・・

「っっくそっ」
小さくかみ締めるようにでた言葉。
アスランは拳をきつく握っていた。

「何か事情がありそうだね」
「・・・?」
「・・・僕達は弱いものの味方さ。それにこの件は僕にも・・・」
「隊長、ミリィから連絡が入っています」
扉の外から声が聞こえる。

「「ミリィ!?」」
シンとカガリは椅子を倒し立ち上がる。
「おや、ミリィを知ってるのか?まぁ、彼女は腕のいい情報屋だからね」
バルトフェルドはついて来いと手招きをし部屋を出て行った。



「・・信用していいのか?」
シンは不審そうにアスランに聞く。

「でも、悪い人には見えなかったぞ?」
「カガリはどんな奴でもそう言うだろ?」
シンの返答にアスランは笑みを漏らす。
「あ・・アスランなんだよ?」
カガリはそんなアスランが気に入らなかったのかぐいっと顔を近づけ怒る。

「悪い・・・でも・・その通りだと思って・・」
ユウナのときもそうだったのだろうと考えるとカガリらしいと笑ってしまったのだ。

「ほら、行くんだろ?」
アスランはカガリの頭をぽんっと叩くとシンの頭も叩く。
「カガリはともかく、オレまで子ども扱いするなよ」
「私はともかくってなんだよ」

「ほら、早く行くよ」
言い合いを始めそうな2人をよそに、ユウナは扉をでる。
それを見た2人も顔を見合わせると慌ててユウナについて行く。

小さくなったバルトフェルドの姿を見つけると4人は見失わないように進んでいった。





不思議なもの。
バルトフェルドはそれに向かい何かを話していた。

「君のほうは大丈夫なのか?今魔物の群れが現れているようだが」
「私は大丈夫、地下に非難してるわ」

「ミリィ!!!」
「カガリ!?」
カガリは飛ぶようにしてバルドフェルドの近づく。
アスランはいきなりの行動に声を上げるがカガリの動きはすぐに止まった。
今聞こえたはずのミリィの姿がどこにもなかったからだ。

バルドフェルドはそんなカガリを見てにっと笑う。

「・・・ミリィ・・は?」
「え!?カガリなの!?」
そう聞いたカガリにミリィの声が返ってくる。
カガリは思わず辺りを見回すが、ミリィの姿はどこにもない。
「これだよ」
バルトフェルドはテーブルの上にある小さな物体を指差す。

アスランたちも近づきそれを見た。
「カガリ、あなたは大丈夫?すごい数の魔物が現れてるけど・・」
「大丈夫だよ。彼女達は僕が保護したからね」
「そう・・なら安心ね」
バルトフェルドが物体に話しかけるとそこからミリィの声が返ってくる。

「そうだ。カガリたちもいるならちょうどいいわ」
カガリはミリィの声なのは確かなのに・・と、物体をいろんな角度から覗き込みながらミリィの話を聞く。

「暗黒魔城についてなんだけど、魔物たちの来ている場所はそこみたいなの」

『暗黒魔城』
その言葉にアスランならず、バルトフェルドも反応する。
アスランはそれに気付く。

「それと、どうやら魔物たちの目的は特定の場所みたいだわ」
「特定の場所?」

「プラント城」

その言葉にアスランは身が凍るのを感じた。
血の気が引き、先を想像できない。

「アスラン・・・」
そんなアスランの横でシンはどうするといった顔をする。

どうする・・・
そう聞かれてもどうしていいのか・・・

取って代わるつもりなのか?
この世界を我が物にするために・・・だが、暗黒魔城でもそれはできるはずだ。
奴のやろうとしていることがわからない!!!

「戻ろう!アスラン!」
アスランははっと我に返る。
そう言ったのは横にいたシン。
「だって、放っておけないだろ!」

アスランは悲痛な表情をする。
だが、今からでは・・・間に合わない・・・
それに城を守れたとしても解決には至らない。
アスランの脳裏に城にいる人たちの顔が浮かぶ。

「だが・・・」
「アスラン!私もシンと同じ気持ちだ!だって、あそこにはアスランの守るべき人たちがいるんだろ!!」
それも分かってる・・・それでも・・・

アスランはぐっと歯を食いしばると顔を上げる。
「俺は先に進む」

「「アスラン!?」」
シンとカガリの声が悲痛を伴って聞こえる。

「分ってるんだ!でも、それでは世界は変わらない!!今すべきことはこの世界を救うことだろ!!」
「違う!大事な人を救うことが世界を救うことに繋がるんだ!!」
アスランの身を切るような声に、シンは負けじと言う。

「犠牲といってしまえばそれまでだがそれでも俺はデュランダルのところへ行かなければならない!」
「そんなことは分かってる!だけどその前にすべきことがあるって言ってんだろ!!」


「っっ正義感だけで何が救える!!」


切るような声にシンは開きかけた口を閉ざす。

「そんなことは分かっている!目の前の人を救うことがどれほど大事なことか!
だが、俺は王だ!この国を支えなくてはならない人間なんだ!
命を量りにかけてでも救わなくてはならない民がいるんだ!!!!」

一同が言葉を無くす。
それほどまでにアスランの思いが伝わってきたのだ。
アスランとオレたちとでは抱えているものが違う・・・
この差は歴然だった。


シンの握り締める拳に力が入る。

「だけど・・・それでもオレは・・・」
何かを犠牲にして進みたくはない。
正義感なんかじゃない。
オレは本当にそう思うから・・・

「アスラン・・・みんなと先に進んでてくれ」

「え・・・?」
カガリはその言葉に顔を強張らせる。
その理由は1つだったからだ。

「オレはプラント城に行く。みんなは暗黒魔城に向かってくれ」
決意を固めた瞳が光を纏い揺れる。
真っ直ぐな瞳。

「何言ってるんだ!!あんな数の魔物シンだけで倒せるわけないっっ」
カガリは脳裏に嫌な光景を浮かべる。

倒れたシン。
それを振り払うかのように頭を振った。

「それでもオレは行く」
アスランが決意したようにオレだって同じ想いで決めたんだ。
道は違っても目指す世界は同じ。

「・・・シン・・・・」

アスランはどうしていいのか分からないのか困惑した顔をしていた。
このままシンを行かせた先にあるもの。
それを想像したのだろう。

いくら強くなったといってもあれだけの魔物を相手に出来るわけがない。

身を切る想いで先に進むことを決めたが、いざ目の前に救えるべき人がいるとそれを切り捨てることなど
アスランには出来ない。

「ど・・・どうしたら・・・」
カガリはアスランとシンを交互に見る。
どちらの気持ちも分かる。
だからどちらについていくことも、どちらに行こうとも言えないでいた。


「なるほどね。君がプラントの王なわけだ」

張り詰めながらも静寂した空気を壊したのはバルトフェルドだった。

「・・っっ」
アスランはその人の存在を忘れ言い合っていたことに気付く。

シンもそれは同じようで顔を強張らせていた。

バルトフェルドは笑みを浮かべながらアスランに近づく。
機械の向こうでは争いの声を聞いたミリィが黙ったまま行く末を気にしていた。


「・・・・・」
どうする?
こいつは悪い奴ではないみたいだが盗賊だ・・・。
アスランはぎゅっと鈴を握った。
魔物でもなく、自分を助けてくれた相手と戦いたくなどない。
だが、必要にかられるなら・・・・
アスランが決心を固め、鈴を剣に変化させようとしたとき、思いもよらない行動をバルドフェルドは起こした。


「王、初めてお目にかかります。アンドリュー・バルトフェルドと申します」

バルトフェルドは片膝をつきアスランに礼をしたのだ。

皆がその行動を驚いたまま見ている。

「・・・・・・バルト・・フェルド・・さん・・・」
1番驚いているのはアスランだ。
先ほどまでの人物が自分の前で膝をついている。
もちろん王として彼に面識はない・・はずだ。

「私はラクス様のお父上にお付していたものです」
「先代の・・王・・・・?」
「ですが、先代が亡くなり、あなたが即位する以前に私はここで今のように暮らし始めました」
「・・それは・・どうして・・・」
確かに俺はこの人を知らない・・・


「私はこの国に不安を抱いたのです・・」




ー20数年前ー


「王、お呼びでしょうか?」

バルトフェルドは扉を開け敬礼する。
騎士団のリーダーとして彼は毎日を忙しく過ごしていた。
王はそんな私に興味を持ったらしい。

真面目で、冗談も話せ、仕事が出来る。
自分でもそうだと思っていた。
でなければ騎士団長など断っていただろう。

この国を守りたい、それは誰もの・・私にとっても夢であった。

「バルトフェルド、君の噂は聞いているよ」
王は私を見るとうれしそうに笑った。
私も王とは初めてと言っていいほど久しぶりに会った。
いや、話すのは初めてだった。

彼は王妃様と婚姻した後、体を崩され、静養していることが大半だった。
そのためか表舞台に立つことは滅多にない。

「お体は大丈夫でございますか?」
「ああ・・・今日は調子が良い」
そう言うと王は窓から入ってくる太陽を眩しそうに見た。

「私がこうしていても世界は平和だ」
「・・・はい・・・?」

バルトフェルドは居心地の悪さを感じる。
この人には生きる精気を感じない。
戦場をかけるものたちはいつもいろいろな想いに溢れている。
それが生きることに繋がるのだ。

「彼女が歌を歌うだけでこの世界は平和だろ?」
「・・王妃様がいるおかげで我々も何事もなく過ごしております」
王は、ははっと笑う。
儚げな印象。
今にも消えてしまいそうだった。

「それで私に用事とは・・?」

王はふっと顔をうつ伏せると意思も何も示さない眼差しでバルトフェルドに向く。


「彼女に子供を作ってくれないか?」


「は?」

ややあってバルトフェルドは口を開く。
王から出たあまりにも意味不明な言葉。
冗談にしても対応できるような話ではない。

「私は彼女を愛していないのだよ。選ばれ王となり彼女と子供を作るのが役目だ。
だが、私は彼女を愛していない。そんな人と子を成す事など無理な話だ」
王は変わらぬ顔で話を続ける。

「何を仰っているのですか・・・」

「君は優秀だと聞く、君なら次の歌姫として十分な素質を持った子を作ることができるだろう」

なにより怒りが頭を占領した。
それならばなぜ王としてここにいる!?
一生苦しむのなら最初にそれを断るべきだろう!!
どんな困難が待ち受けていようと今の苦しみよりマシだったはずだ!!

それより・・・王妃様をなんだと・・・っっ

見かけたことがあった・・・
淡い色素を持った桃色の髪は風になびき辺りを心地よく染めていく。
その姿はどこか寂しそうで気になったことがある。

「あなたより・・王妃様の方がよっぽど苦しい想いをしておられる!」
「知ってるよ・・子供が出来ないと国が滅んでしまうからね」

「違う!!あなたに愛されていないことがです!」

こんな王の元で私は生きてきたのか!?
人をなんだと思っているんだ!
夫に他の男との子を成せと言われる・・そんなことが・・・っっ

バルトフェルドはそれ以上何もいえないほどの怒りを感じ部屋を後にした。


「それから私は城を出ました。いられるわけがない・・・」
重い空気が辺りを包む。
バルトフェルドは膝をついたままアスランに言う。

「・・・そんなことを・・・まさか・・・」
先代の王は早くに亡くなったがそれでも面識は合った。
大人しめの方だったがそんなことを言うなんて・・・・

「ちが・・う・・」

カガリのかすれるような声が届く。
アスランもバルトフェルドも同時にカガリを見た。
カガリは瞳から大きな涙を落としている。

「カガリ・・・」
アスランは思わず駆け寄ろうとするが、カガリは口を開く。

「本当に愛してたから・・・だから望まれる子を作ってあげたいと思ったんだ」

世界中の人々の期待を胸に生まれてくる。
「その子が幸せになるためには成すべきことが出来なければならない・・・・」
王様はきっとそう考えて・・・っっ
体の弱い自分ではそれが出来ない、だからそれを誰かに託すしか出来なかったんだ・・・

「だって、今だってみんなラクス皇女様に期待してるじゃないか!」

光の中で見たラクス皇女様の悲しそうな顔。
それが浮かんでくる。
期待されるとそれを裏切れない。
望むものがあってもそれを成すだけの力があっても呪縛を解き放つことは出来ない。

ラクス皇女様は何かを望んでついていったんだ。
デュランダルのもとへ・・・

何でだか分からない。
そう思う心はなぜか確信めいていた。
涙が溢れて零れ落ちていく。

苦しい・・・
カガリは胸を押さえる。

カガリの涙を見ていたアスランははっと我に返りカガリに駆け寄る。
「カガリ・・大丈夫か?」
そっと背中を支えるようにしてさする。

「ん・・・だいじょ・・・ぶ・・」
カガリは顔を真っ青にさせていた。

「カガリ・・おい、どっか休ませるところないのか!?」
シンはバルトフェルドを睨むようにして言った。

「ダコスタ」
「はい」
後ろに控えていた男が前に出、シンたちを案内するように一礼をする。
アスランはそれを確認するとカガリを抱き上げた。


カガリはよほど具合が悪いのかアスランに抱かれ、真っ青になったまま俯いている。
「カガリ・・大丈夫か」
シンが覗き込むが、アスランはそっとしとこうとシンに瞳を移した。
シンは辛そうにして俯く。



薄明かりの部屋の中、アスランはカガリを寝かせるとそっと髪を撫でる。

「・・・っ・・ごめ・・・今は・・・」
途切れ途切れの声でカガリは話す。
「いいよ。ゆっくり休めばいいから」

しばらくするとカガリの規則正しい寝息が聞こえてきた。
アスランはそれを聞いて顔を緩ませると部屋を後にした。



先ほどの部屋に戻るとシンが心配そうに見ている。

「今寝てる。大丈夫だ」
アスランがそう声をかけるとシンはほっと息を吐いた。

そんなシンにアスランは柔らかいまなざしを向けたが、その顔がバルトフェルドに移ると顔を険しくする。

「それで何のために俺にそんな話を?」
先代の王を嫌って出て行ったのなら俺にあんな態度を示すわけがない。
先ほどの話しが途中になってしまっていたのだ。

「・・・彼女と同じ・・・。後になってみると王のお考えが分かってきた気がしたのですよ」
「愛していたからこそだと?」
「そう思えるほど王は王妃様を愛しそうに見ておられた」

城を去る日、なぜか2人を見かけた。
王妃様を愛しそうに見つめる王。
だが、そのときの私はそれを思う余裕もなく、怒りが心を占領していたのだ。

今思えば・・・私が間違っていたのかもしれない・・・
それが正しいことではないにしてもそれを王に伝えるべきだった。

「・・・・ラクス様って・・・結局・・・2人の子供なのか?」
「・・・・・・」
シンの言葉にアスランは顔を歪める。

そんなことを知りたくはない。
ラクスを悲しませるだけだ。
心ではそう思っても真実は1つだ。

「禁忌を犯された」
「禁忌?」
「だからこそお子は2人誕生したのです」

それは・・・アスランの脳裏には祈りの間で出会ったラクスにそっくりな女の子が浮かんだ。
「ふた・・ご・・?」

「次の歌姫は王と現歌姫の間に出来なくてはいけません。しかし、王はそれを破られた・・・」

それはその先を聞くまでもないことだった。
王は、バルトフェルドの代わりに違う人物を選んだのだ。
そしてその間に生まれたのがラクス。

「・・もういい・・・」
アスランは顔を歪め、バルトフェルドの言葉を切る。

ラクスは双子だった。
1人は世界の守りとして崇められもう1人は・・・・

奴に加担した・・・。
正反対の道を行く2人の歌姫・・・



「アスラン様」
何かを整理するように黙り込んだアスランにバルトフェルドは意志を固めた声を発する。

「私をプラント城に向かわせてください」
「・・・え・・・?」

「あの時私がもっと違う答えを出していたならこんなことにはならなかったかもしれません。
失礼ながら裏ルートでプラント城の内情を手に入れていたのです。
そして・・・ラクス様が攫われたという情報を手に入れました」

アスランは乾いた笑いがでそうになった。
いくら彼が城にいたとはいえ、そんなことをする人物がいることにアスランは怒りより情けなさがでてきた。
しかし、すぐに顔を引き締め向き直る。

「向かってどうするんだ?」

「守り手として城を救います」

ありがたい話だ。
だが信用できるか?
ここまで裏の話を知っている人物を。

2人の間に沈黙が続く。
こうしている間にも城はどうなっているかわからない。


「オレも行く!!」
飛び込んだのはシン。

「オレがアスランの代わりに城に行くよ!だからアスランたちは暗黒魔城に向かってくれ!」

「・・・シン・・・」

「カガリが良くなったら・・・先に進んでてくれ。オレは後で追いつくから!!」
カガリを連れて行くわけにはいかない。
あの状態だし、カガリを・・・あんな魔物の群れに向かわせるわけにはいかない・・・。

「その代わり・・・約束してくれ・・・カガリを絶対守るって・・・・」
顔を上げるわけにはいかなかった。
アスランが心配そうな顔をしているのが分かる。
それを見たら決心が揺らぐ気がしたのだ。
もしかしたら・・・オレは・・・死ぬかもしれない・・・

「死ぬなよ・・・」
思ったことに反応したような言葉にシンは顔を上げる。

そこには真っ直ぐにシンを見つめるアスランがいた。

「死ぬな。俺もカガリを守る。絶対に死なせない。だから、シンも・・・」
「・・・死なないよ・・生きて・・・オレは生きるから・・・」

優しい想いが伝わってくる。
シンは潤みそうになった瞳をキツク堪えた。

「私達も一緒だ。君は死なせないよ」
バルトフェルドは一歩前に出る。
その瞳は透き通るようにアスランを映していた。

「頼みます」

信頼できる仲間が増えた。
そう思えることにアスランは喜びを感じていた。





あとがき
バルトフェルドさん、略してバルサン(笑)
これ書いてる途中まで「バルドフェルド」だと思ってたんですが、バルトフェルドなんですね〜
なんか耳で聞くだけだからわからなかったよ。

よくあるパターン、仲間が別行動、を入れてみました。
さてどうなることやら。