「なに?勇者が旅だっただと?」
「はい。どういたしましょう」

暗黒の城。
その王座に座るのはデュランダル、この世界を支配しようとしている人物だ。

「そうだな・・・ホーク姉妹を送ろう、君は・・・」

「かしこまりました」
男は一礼するとその部屋を後にした。



「デュランダル様・・・」
柱の影からもう1人、男が出てくる。
「ああ・・・君はご苦労だったね。ラクス皇女を上手くさらってくれた」

男は眉をひそめ俯いた。
「あの・・・ラクス皇女は・・・どうなさるおつもりなんですか・・・?」

「殺しはしないよ。彼女が死んではこの世界は本当に滅んでしまう。それでは意味がないだろう?」
薄く笑いを浮かデュランダルは言った。


死んでは意味がない・・・か・・・。
男は王座の間を後にすると、頑丈な扉で閉ざされた部屋に入る。
そこには中央に大きな水晶があった。

男はそれに手を添える。

「どうしたいんだう・・・僕は・・・」
つぶやくその先には水晶に閉ざされたピンクの髪をもつ女性がいた。




デスティニークエスト〜町での出会い〜





「オレ・・・2000G」
「私は・・・・えっと・・・3000G!」
てくてくと草原を歩き続ける2人。
ザフト城に向けて進んでいたのだが、持ち合わせのないことに気づき、
どこかの町で少し働こう、ということになった。

「ザフト城に向かう途中にミネルバの町があるからそこで働こう」
シンは持ち合わせの少なさにがっくりしながら言った。
これでは服を買うぐらいしかできない。

シン達のいたオーブ村はとても小さな農村である。
今、自分たちが着ている服はオーブで着るにはなんの問題もない。
だが、他の町に行くにはあまりにも・・貧弱である。
これでは仕事も与えられないかもしれない。
そう考えたシンは町についたらとりあえず服を買おうと思っていた。

「あ、見えてきた!」
カガリは小さく見える建物を指差す。
「ほんとだ」

ミネルバ、看板にもそう書いてあった。



「わ・・・結構大きな町だなぁ・・・」
カガリは建物を見上げるとぽかんと口を開けた。

「カガリ、口閉じて!上も見ない!」
シンはカガリの頭を押さえつけるようにして下を向かせる。
「・・なんでだよ・・・」
「上を見上げてポカーンとするのは田舎者の証なんだ。バカにされるだろ!」
「・・・・・」
田舎者の何が悪いんだよ・・・
オーブ村だって立派な村だ。恥ずかしがることないじゃないか・・・。
カガリはぷいっとそっぽを向く。

シンとて自分の生まれ育った村には誇りを持っている。
だが、今からここで働こうとしているのにそんなことを言っていたら何も始まらない。
いいカモにされても困り者なのだから・・・




「とにかく服を買おう」
思っていた通り、この町では自分たちの服装は浮いていた。
シンは目に付いた防具屋に入る。

「いらっしゃい」
店主はカウンター越しに愛想笑いを浮かべる。
「すみません、オレとこの子の服なんですけど、何かありますか?」
できれば安いので・・・小さくそう付け加える。

さすがは商売上手、持ち合わせを聞くと、見事なまでにぴったりの金額の服を出してきた。

「これがお嬢さん、これが君のね」
「うん。いいな、カガリいいか?」
「ああ、私は何でもいいぞ」
2人はそういうとお金を払い、防具屋の1室を借りて着替え、その場を後にした。
「また来てね〜」



「えっと・・・どこで働こう・・・そうだな・・・酒屋があるからそこなら雇ってくれるかな・・・?」
シンは町を見渡しながら働き口を探す。
ハローワークでもあれば楽なんだけどなぁ・・・
「おいカガリ、酒屋」
言いながら振り返った先には何もいなかった。

「・・・・・・・カガリ!?」
シンは慌てて叫ぶもののカガリの声は聞こえない。

あいつ1人でふらふらしやがって!
シンは来た道を走りながら戻っていった。


「あれ?」
シンがいない・・・・
カガリはきょろきょろ町を見ながら歩いていた。
すると、前にいるはずのシンがいないことに気づく。

「おかしいな・・・さっきまでいたのに・・・なんだアイツ、迷子になったのか?」
迷子になったのはお前だ!
シンがいたらそう突っ込んでいただろう。


と、前の方から騒がしい声が聞こえてくる。
なんだろう・・?
カガリは不思議に思い、声のする建物へと入っていった。

ワイワイ、ガヤガヤ、といったら言いのだろうか。
中は人で溢れ騒がしい音が飛び交っていた。

酒を飲む中年男。
笑いあう青年。


ここは・・・
「酒場か・・・」
カガリはそう呟くと辺りを見回しながら奥へと入っていく。
ここなら働けるかも・・・
聞いてOKだったらシンを探して・・・

そう考えていると、ぐいっと体が傾くのを感じた。

「お嬢ちゃん、1杯ついでくれよ」
眼を向けるとそこにはべろんべろんになった親父がいた。
カガリの腕をしっかり握り。
いやらしい目つきでこちらを見ている。

「離せ!私に酒を注ぐ理由はない!」
働こうかとは思っていたが、今はまだ働いていない。
なのになぜ見も知らない人に酒を注がなければならないのか?
カガリは怒ったように握られた手を振りほどこうとする。
が、男の力は思ったより強くいくら跳ね除けようとしてもびくともしない。

「いいじゃねーか、酒注ぐぐらい」
男はそんなカガリをみて薄笑いを浮かべると、カガリの体を引き寄せた。
「減るもんじゃないし」

気持ち悪い!!!!!
体に触れる感触。
カガリは不快感から目を閉じ、体を小さくした。


リン・・・・・・・・


そのとき、鈴の音と共に自分の体が浮くのが分かった。

シン!!

カガリは自分を助けてくれた人物を見る。

しかし・・・

「嫌がってるだろ?」

そこにいたのは濃紺の髪とエメラルドの瞳を持つ青年だった。



「なんだ・・・貴様は」
「お前に名乗る理由などない」
男は冷たく鋭い瞳を向ける。
それにだじろいだ酔っ払いはふんっと鼻を鳴らし酒を飲み始めた。

「・・あ・・・ありがとう」
「いや、大丈夫か?」
男はカガリをゆっくりと降ろす。

「カガリーーーーー!!!」
と同時に叫び声が響いた。
「シン!?」
その声はシンである。
「お前、カガリに何するんだ!!」
シンは勢いよく男の胸倉を掴む。

「・・・お礼を言われても喧嘩を売られる理由はないぞ」
いたって冷静な男の言葉にシンは更にカッとなる。

「違うんだ!シン、この人は助けてくれたんだ!」
カガリは2人の間に割ってはいるとシンの胸を押さえつける。

「え・・?」
「そう言うこと」
力の抜けたシンに男は冷たく言った。


きゅぅぅぅぅ〜〜


男とシンに奇妙な音が響く。
「あ・・すまない・・・私だ・・・」
カガリは顔を赤くすると片手を上げた。

「お腹空いてるのか・・・そうか・・あれから何も食べてないもんな・・・」
シンは今更ながらに気づく。
持ち合わせはない。
服を買うのにすべて使ってしまったのだ。

オレって計画性ないなぁ・・・

「・・・何が食べたい?奢るよ」
しゅんとした2人に聞こえたのは恵みの声。

「え・・いや、いいよ・・助けてもらった上に・・そんな・・」
「捨て犬みたいな顔されたままのほうが気分が悪い」
男はマスターからメニューを受け取ると2人に手渡した。




「ザフト城に向かってるのか?」
「ああ、でもお金なくてさ、ここで働こうかと思ってたんだ」
「・・・なんでそこまでして?」
「助けてって言われたから。ほっとけないだろ?」
意味が分からない・・・
男は眉をしかめる。

「カガリ」
シンはあんまり話すな・・というようにカガリに声をかける。
奢ってもらっといて・・・失礼な気もするが・・・
そう思いながらもシンはぱくぱくとお腹を満たしていく。

「お前、名前なんて・・・」
「きゃあああああああ!!!!」

響くのは女性の声。
「魔物よ!早く逃げて!!」
シンとカガリは顔を見合わせると、席を立とうとした。
だが、
「ちっ」
という舌打ちと共に隣に座っていた男が外へと飛び出した。

リン・・・

鈴の音と共に・・・

「シン・・・」
「ああ・・狙われてるのはオレだ。お前はここにいいろ!」
シンはカガリを椅子に押しつけると走り出た。

そこにはコウモリのような黒い物体が辺りを飛び交っていた。

ザシュッ
音が聞こえそこに目を向けると先ほどまで一緒にいた男。
魔物を次々と切りつけていた。

「オレも・・・」
シンは鈴を取り出す。

リン・・・
その音と共に鈴は炎とともに剣へと姿を変える。

男は驚いたようにその光景を見ていた。

「よっしゃ!来い!!」
シンは剣を高く掲げた。
それに合わせて魔物が襲い掛かる。

「おりゃ!」
掛け声は立派だった。
しかし、見事な空振り。

「ぶっっ」
「わっ笑うな!初めてなんだから仕方ないだろ!」
シンがそう言い返している間にも男は魔物を次々倒していく。

そして最後の1匹も真っ二つに切り裂かれた。

シンはただその光景を食い入るように見ていた。

すごい・・・・
なんなんだ・・こいつ・・・

ふっと男はシンに目を向ける。

その瞬間、男の周りを激しい風が包み込む。

リン・・・

剣が姿を消し、鈴の音が聞こえる。

「え・・それって・・・・」
まるで自分が持っている剣と同じだ。
違うといえば包み込む炎ではなく風。

「お前名前は?」
「・・・シ、シン・アスカ」
「・・俺はアスラン・ザラだ」

この出会いがこの先を左右することとなる。





あとがき
アスラン登場!
アスランの持っている剣とシンの剣との関係は!?
みたいなこと書いちゃったりして(笑)
冒険物も面白いなぁ・・・