「ロゴスの町?」
シンは歩きながらアスランに言った。

「ああ、暗黒魔城の場所さえ分かってない今、情報を集めるのが最優先だろ」
「そこに何かあるのか?」
「あるというか、腕のいい情報屋がいるらしい」

イザークが教えてくれた。
『この世界を渡り歩いてるような奴で情報ならそいつが一番持ってるだろう』
ならばその人に合うことが先の道を開ける。
『だが、一箇所にとどまってる奴ではないらしいから今もいるかは分からないがな』
最後に付け足した言葉が気にかかるが、とにかく行くしかない。

「リレミト・・・、ルーラ・・・」
カガリは本を見ながらぼそぼそ唱える。
「カガリ、前見て歩かないと危ないぞ。あと無意味にに呪文を唱えるな」
「なんで?」
カガリは本から顔を上げる。

「魔法は気持ちが入っていないと意味をなさないがそれでも効かないとは限らないだろ」

「そっか!そうだよな〜元気なのに傷治されてももったいないもんな」
シンは笑いながら言った。

「そうだな・・・意味なくこの『くちぶえ!』なんて言って魔物が寄ってきても困るもんな」
あははっとカガリが笑う先には

「あれ・・?」

がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

魔物が出現していた。

「ほらみろ!」
アスランは眉をしかめた。
「でも、これも覚えたってことで・・・」
「カガリ〜」
シンはカガリを睨みつける。




デスティニークエスト〜占者〜





ザシュッッ
鋭い切っ先が魔物を貫く。
「シン、少しは上達したじゃないか」
そういいながらアスランは上から攻撃してくる敵を切り落とす。

「それなりに経験値あげてますからね!これで全然だったらへこみますよ」
シンは獣を真っ二つにする。

「わーすごい!」
カガリは戦いの済んだ2人の下へ駆け寄る。
「やっぱり私も武器が欲しいな・・・」
「じゃあ次の町で買う?」
「必要ない!」
シンの言葉をアスランは遮る。

「なんでだよ・・」
カガリはぷうっと頬を膨らませる。

「・・・魔法を極めるのに集中した方が効率がいいし・・敵に近づかなくてすむ」

心配してくれているのだろうか・・・私のことを・・・
カガリはアスランを見つめる。
「アスラン、優しいんだな・・・」
「そんなんじゃない」

どうも・・・落ち着かない。
このシンとカガリに会ってから人を守るという行為が現実になった気がする。
今までだってたくさんのものを守ってきた。
しかし、いざ戦いになると自分の事だけで十分だった。
自分しかいないのだから。

シンはやる気は見えるものの頼りない。
しかし、性格ゆえか手助けをしたくなる。

カガリはいつも元気で見ていて飽きない。
だがそのせいで危なっかしいこともしばしばある。
この子に武器を持たせると思うと気になってしかたないだろう。

アスランがそんなことを考えているのも知らずシンとカガリはおしゃべりをしながら森の中を進んでいく。




「うわ・・・近代的〜〜」
シンはまたもや上を見上げ口をあけている。
「ロゴスの町は商売の中心街だ。たくさんの人たちが集まるからな」

ロゴスの町。
それは威勢のいい声が飛び交う町だ。
建物は色とりどりのレンガを積み上げられできている。
「とにかく情報屋を探そう」
アスランは町へと足を踏み入れる。

「お兄さん、これ買わない?」
「こっちの方がいいものあるよ!」
威勢のいい声が次々と飛んでくる。
シンとカガリはあまりの元気のよさに圧倒される。
オーブとは大違いの町だった。


アスランは少し年老いた人ばかりに話を聞いている。

「ミリィっていうらしいんだが知らないか?」
「さぁ・・聞いたことないね」

「ミリィ・・・さてねぇ・・」
しかし帰ってくる答えは望むものではない。

「参ったな・・・いないどころか知らないのか・・・」
アスランは肩を落とす。

「お困りですか?」
そのとき、 後ろから声がかかる。
3人は声の主を見た。

商売人・・とは思えない格好をしているその少年は金の髪を風にたなびかせて微笑んだ。

「人を探しているんだ。ミリィというんだが・・」
2人が少年に見とれていると、アスランが声をかけた。
「存じませんが・・・占って差し上げましょうか?」
「占う?」
「はい、私は占い師をしているレイと申します」

占者か・・・
人探しを占いで当てるなど並大抵の人物にできることではない。
できるとすれば、この世に数人程度だろう。
しかし少年は自身げに「どうぞ」と、奥を指し示す。

「アスラン、占ってもらおうぜ。当たったらもうけもんだろ?」
確かにシンの言うとおりだ。

「頼む」
アスランは少年の後についていく。
カガリもついていくが、
ぼったくりじゃないだろうな・・・
と、睨みを効かすことを忘れなかった。



部屋に通されるとなんとも不思議な空気が立ち込めていた。
部屋の中は薄暗く、お香・・だろうか・・・花の香りがする。

「どうぞこちらにお掛けください」
3人はそれぞれ椅子に座った。

レイは大きな水晶玉を取り出す。
かなりの代物だ。
アスランには一目で分かった。
大きさからも天然でここまでのサイズはないだろう。
やはり・・・本物だったか・・?

「俺たち暗黒魔城に向かってるんです!」
「シン!」
あっけらかんとして言うシンにアスランは怒る。
「だって、ミリィって子に会わなくても場所が分かればいいだろ?なら聞いてみて損はないじゃん」
「それはそうだが・・・」

あまり表立って言える事ではない。
奴らの手下はどこにいるか分からないのだから。
実際、この間戦った敵はどう見ても人間だった。

彼らはなぜ魔王の味方をしているのだろう・・・
それとも魔物なのか?

人間に変身できる魔物もいると聞く。

「では占いましょう」
レイはそういうと、両手を水晶にかざす。



・・・・・・・・・・・・この3人占えない・・・・。
どういうことだ?
1人なら分かるが、なぜこの女まで占えない?

・・・・・・・仕方ない・・・・

「ミリィという少女はアークエンジェルの町にいます」


「・・・え・・・?」
暗黒魔城のことをきいたのにミリィの居場所を言ったレイにアスランは聞き返す。

「暗黒魔城の場所は黒い霧に包まれて見えませんでした」

シンは水晶を覗き込む。
なんでこんなものにそんなのが映るんだろう・・・
つん・・と水晶を触るシンをレイはクスリと笑う。


「そうか・・ではアークエンジェルに向かうしかないな」
アスランは2人を目で誘うと、レイに
「ありがとう、助かったよ」
と、声をかけた。

「あの・・・」
出て行こうとする3人をレイは呼び止める。

「もし宜しければアークエンジェルまで私もご一緒して宜しいでしょうか?」

「「「え!?」」」
3人の声がダブル。

「ちょうど用事があるものですから・・それに私がいると便利だと思います」

「そうだよな!だって、占いでいろんなこと分かるんだろ!」
「・・・・・・・お金取るのか?」
じっとレイを見つめていたカガリが言った。

「いえ、必要ありませんよ・・・私は人のお役に立てるのがうれしいのです」

それを聞いたカガリは表情を明るくして、
「ぼったくりじゃなかったぞ!」
と、うれしそうに言った。

「うわっっカガリそんなこと思ってたのかよ〜」
「だって・・・」
「思ってても口に出したら失礼だろ」
シンはなぜか偉そうにしている。

むぅっ
カガリの頬は一気に膨らんだ。

「・・・分かった・・・お願いしよう」
アスランは少し考え込んでいたがレイを見て軽く礼をした。

アークエンジェルまでなら・・・





カンカンカンカン・・・・
氷のような階段の音が響く。

「あら、キラじゃない。またあのお姫様のところに行くの?」

「ミーア・・・」

「やあね、恋でもしたのかしら?」
ミーアはけらけらとバカにしたように笑う。

「関係ないだろ」
冷たく返すキラ。

「関係ないわよ。でもあのお姫様はこれから先、目覚めることはないのよ。
あなたが可哀相だから忠告してるの」
ミーアはキラを指差す。

キラは思いっきり顔をしかめた。

「それに・・・私が変わりになるもの、この世の中のラクス皇女は私になるの」

「・・・・どういうこと・・・?」

「ふふ。すぐに分かるわ」

ミーアはそういうと、うれしそうに階段を駆け上がる。

キラはその後姿をしばらく見ていたが階段を降り始めた。

どういうことだろう・・・
ミーアがラクス皇女になる?
そんなこと出来るわけないのに・・・
確かに初めて見たときは彼女に似ていることに驚いた・・だからといって・・・・

キラの瞳が揺れる。
「まさかっっ」
キラはミーアの影を探す。
しかしそこに階段の音は響いていなかった。

・・・・・・いや・・・僕がどうにかできる問題じゃない・・・
キラは再び階段を降り始める。

どうして僕はここにいいるんだろう・・・
小さい頃の記憶がない・・・
こんなことしたくないのに・・・

キラは大きな水晶の前に立つとそっと手を添えた。

「君にこんなことしたくなかったんだ・・・」

覚えているのは君を知っていること。
君が愛しいこと。
君を守りたいー
だけど、どうしてそう思うんだろう・・・
僕には君の記憶なんてないのに・・・


「攫いたくなんてなかった・・・」

君はこの国を守っているんだよね
この国が大事なんだよね・・・
だけど、僕の手を取ったんだ・・


誰のために?





あとがき
分かっていたと思いますが、魔王のところにいた少年はキラです(笑)
もう1人いましたがそれも・・分かるかな?分かるよね(笑)
仲間が増えていきます〜
いいなぁ・・仲間が増えるって気分がいいですよね。
ドラクエの最初は1人ってときはもうっっ辛いですもん。
スライムで困るってなによっっ