「レイはいつから占いをしてるんだ?」
前を塞ぐ草木を切りどけながらシンはレイに聞く。
「・・・・・・・最近はじめたんだ」

「じゃあすごい才能があったんだな〜」

「・・・な・・なぁ・・・」
カガリが話しにくそうにレイに声をかける。
「はい?」
「お前は魔法使えるのか?」

「ええ、回復系、攻撃系ある程度は使えます」
カガリはがっくりと肩を落とす。

このレイという人物、どう見ても武器系じゃない。
やっぱり魔法だったんだ・・・
私・・・意味ないじゃん・・・

カガリがそんなことを考えていると、ぐりぐりと頭に何かの感触を感じた。
上を見ると、
「気にするな」
という顔をしたアスラン。
アスランの手が私の頭を撫でていたのだ。

そうだよな・・・後ろ向きなんて私には似合わない。
前を見よう。
自分にできることを考える方がよっぽど役に立つ。

カガリはアスランににっと笑った。




デスティニークエスト〜新たな刺客〜





「今日は野宿だな」
深い森の中、アスランが言った。
「案外広いんだな・・この森・・」
シンはぐるりと辺りを見回す。

4人は木々を集め、火をおこすとそこに座った。
「アークエンジェルまでどのくらいだ?」
問うカガリにアスランは地図をカガリに手渡す。

シンとカガリはそれを広げる。

「ここがロゴスだろ・・・えっと・・・」
「こっちじゃないか?森がここにある」
「え・・・こっちにも森があるぞ」
「だからこれが・・オーブ村だから・・・」
「んー??」
地図を必要としなかった2人にはわけの分からない問題である。
分かっているのかいないのか・・・とりあえずぶつぶつ言ってはいる。

かさ・・・
かすかに聞こえる音にアスランは反応する。

「すまない・・・辺りを見てくる・・」
「え?ああ、気をつけてな・・」
シンは地図から顔を上げるといった。

レイはしばらくアスランの後姿を見ていた。




「気をつけろ」

アスランは2人の声が聞こえなくなる場所まで歩いてくると言った。

「申し訳ありません」
それに答える1つの男の声。
その声は草木の茂る中から聞こえる。
暗闇で人の姿は全く見えない。

「どうかしたのか?」
「はい。実はラクス様がお戻りになりました」

「・・・な・・に・・!?」
ラクスが・・どうやって!?
アスランは驚き、声を上げる。

「詳細は分かりかねますが、いち早くご報告をと思いまして」

「・・・・・分かった。ご苦労だったな」

「アスラン様・・」
考え込んでいると少し揺らいだ声がかかる。
「なんだ?」

「お戻りをお待ちしています」

「・・・・ああ・・・」

声の主と共に人の気配も一瞬にして消え去る。
アスランはしばらくそこで佇んでいた。




「あ、アスランだ!」
カガリは暗闇から出てきたアスランを見つけるとうれしそうに指差す。
「アスラン、食い物とって来たんだ。食べようぜ」
そう言ってシンが差し出したのはきのこや木の実。

大丈夫なのか・・・
と不安になったが、
「レイってすごいんだぜ、どれが毒キノコだとかすぐに見分けるんだ!」
その言葉で一応安心した。

パチパチと火の跳ねる音がする。


「・・・明日・・少し用事があるんだ。俺をおいて先に進んでてくれないか?」
「え・・・アスラン・・どっか行くのか?」
シンの少し不安そうな顔。
それもそのはず、いくら剣の腕が上がったといってもアスランには及ばない。
何かあったとき頼れるのはアスランだった。

アスランだって、自分が抜けることを不安に思っている。
だが、真実を確かめなければこのまま進むかどうかも危ぶまれる。

「レイがいるから大丈夫だろ?」
アスランはレイをチラリと見る。
「ええ、魔法は使えますし、一応短剣ならあります」
レイはすんなりとそれを受け入れた。

正直ちょうど良かった・・・
シンとカガリだけでは不安で置いていけなかっただろう・・

「アスラン、そんな顔するな!私だってそろそろ攻撃呪文だって覚えられるさ!」
ニカッと笑うカガリ。

「なんだか、心配って顔してるぞ。用事があるんだろ?仕方ないじゃないか」
アスランはいつの間にかカガリに視線を向けていた。
そして・・・かなり心配な顔をしていたらしい。

「ああ・・・すまない・・」

「きのこ焼けたぞ、ほらカガリ」
シンは火で炙ったきのこを葉に乗せカガリに渡す。
「ありがと!」
カガリはうれしそうにそれを受け取ると言った。




「・・ほんとにすまないな・・・」
翌朝、別行動を取ることになったアスランは3人に言った。

「気にするなって」
シンがアスランの背をどんっと叩く。
「ああ」
そういうと、アスランは3人とは別の方向に歩いて行った。



「レイ、こっちでいいんだよな」
シンはそれを見送るとレイに向き直る。
「ああ、しかし地図ぐらい見れるようにならないと困るぞ」
「仕方ないだろ・・・必要なかったんだから」
「シンはどこに住んでいたんだ?」
「オーブ、カガリもオーブ村に住んでいたんだ」

「・・・オーブ村は魔物に襲われたらしいな・・・」
なるほど・・・こちらが・・・
レイは冷たい瞳でシンを見る。
シンとカガリはその瞳に気づくことなく俯いていた。
「この旅がすんだら・・帰るんだ・・みんなの元へ・・・」
シンは言い聞かすように言う。

「魔物を倒してラクス皇女を救って・・・そしたら前みたいに暮らせる・・・」
平凡な暮らし。
平凡だけど、それを失うとそれがどれだけ大事なことか分かる。
人間は失ってから気づくことが多すぎる・・・。



「しけた面してるねぇ・・・」

風の音と共に響く気持ち悪い声。

「だっだれだ!?」
シンはカガリを庇うように辺りを見回す。
レイも辺りを見回した。



ガァァァァァァッァァァァァッ
「ぐっ」
シンは声のするほうを向き、鈴を握り締める。
その恐ろしいような声と共に1人の男が現れた。

両側には獣を従え、憎らしく微笑んでいる。

「初めまして、僕はユウナ。君達を殺しに来てあげたよ」
腰を曲げゆっくりとお辞儀をする。
紫の髪を風になびかせ、顔を上げると、そこには嫌なぐらい悪意を感じた。


「お前も・・魔王からの使いか・・・」
シンはにらみを効かせる。

「ああ、そうだよ。ホーク姉妹は失敗したみたいだから代わりに僕が来たんだ
それにしてもこんなガキどもにやられるとはあの2人も同じバカだね〜」

「カガリ、隠れてろ」
シンは背中越しにカガリにいった。
「嫌だ!アスランがいないんだから私も力になる」

「・・・そうか・・じゃあ・・・怪我したら頼むな!」
シンはその言葉と共に、前へと走り出した。
鈴が剣へと姿を変える。

「でやぁぁぁ!」
それと同時にユウナの右脇にいた獣が飛び掛る。

ガキ!!
剣は獣の牙に捕らえられる。
シンは首に蹴りをいれそれを外す。
獣は後ろに飛ばされた衝撃を足で止め、すぐに飛びかかってきた。
それを避けるようにして走ると近くにあった木に剣を刺し、それを掴み宙を揺れると、勢いよく向かってくる獣を蹴り飛ばす。

ギャァッッ
蹴りは獣の瞳に思いっきり入った。
「よし!」
シンは視覚を失った獣を木から抜き取った剣で一刺しする。

ギャアァァァッァァァァァァッァ

獣は霧の様に消えていく。


「へぇ・・・なかなかやるんだ・・・」
ユウナは余裕の笑みを浮かべている。

「だけど、1つ言っておくよ。僕は魔物使い。魔物ならいくらでもいるからね」
そう言って、ユウナは手を高く上げる。

「おいで僕の使い魔・・・」
その言葉と共に、グウウッゥゥ・・・、ギュウ・・・と、生き物の鳴き声が多数聞こえてくる。


「お・・・い・・・」
シンは思わず後ずさりする。
目の前には無数もの魔物・・・

「シン・・・」
カガリはシンの背を見つめると、もっていた魔法の本をめくる。
確か、全体攻撃とかあったよな・・・
でも、まだ単体呪文も覚えてないのに・・・。

とにかく力になりたい。
アスランがいない間に何かあったらきっと・・・あいつ・・自分を責める・・・

「とにかく・・1匹づつ・・・」
「俺が数体を一気に攻撃する。2人はそのあと止めを刺してくれないか?」
今まで静観していたレイが声を発する。

「レイ・・・」
「だけど私・・・」
「焦らなくていい。想いを込めれば呪文は効果を発揮するだろう」
・・・うん・・・
私は力になりたい。この戦いを勝ちたい。
「行くぞ」

「「おう!!」」



「ベギラゴン!」
レイは両手を魔物にかざし呪文を唱える。
すると大きな炎が当たり一面の魔物を包み込む。

「カガリ!」
「うん」

シンは炎に包まれ暴れている魔物を剣で切り
すぐに隣にいる魔物を蹴り飛ばす。

カガリは魔物から少し離れた位置で深呼吸する。

「バギ!」
その呪文を唱えると切り付けるような風が魔物を襲う。
ギャッッ
炎に包まれていた魔物は体を切られる。
できた!

「バギ!」
カガリは間髪いれずに呪文を繰り返す。

「そ・・そんな・・・僕の魔物たちが・・・」
ユウナはその光景をあっけに取られた顔で見ている。

しばらくするとあたりに魔物の影はなくなった。
数体は逃げたようだ。


「さて・・・・・」
シンはゆっくりとユウナに近づく。

「あ・・・ああ・・・」
「後はお前だけだ!」
カチャッと剣をユウナに向ける。

「ご・・・ごめんなさい!!!!」

ユウナはそういうと、土下座をした。

「は?」
シンとカガリはそれを驚いたように見た。

「僕、脅されてただけなんだ!!君達と争うつもりなんて本当は全くなかったんだよ〜」

なんだこの情けない奴は・・・
シンはユウナを見下ろす。

「アホらしい、こんな奴ほっとこうぜ」
シンはそういってユウナに背を向ける。

「お前がアホだー!」

ユウナはやったとばかりにシンに飛びかかる。
が、ゴキンという音と共に地面に崩れ落ちた。

「みえみえなんだよ。全く・・・」
シンはフンっと鼻を鳴らす。

「よくやったな」
レイは2人にそう言いながら倒れているユウナに近づく。

と、ユウナに手をかざす。
手から炎の塊が揺らめいている。

「ちょっっちょっと待てよ!何するんだ!?」
カガリは慌ててレイに駆け寄った。

「・・?なにって・・・始末するんだ」
「始末って・・・殺すってことか・・?」

「魔王を倒しに行くんだろ?こいつはその手先だ」
「それは・・そうだけど・・・」
カガリは言葉に詰まる。

だけど・・・殺すのは・・・こいつは人間だろ・・?

「レイ・・・」
シンがレイの前に立った。
真剣な顔つきだ。

「こいつは負けたんだ。もういいだろ」
「・・・・・・シン・・・」
カガリは暗い顔でシンを見る。

「また襲ってきたら今回と同じように倒す、それでいいんだ」

じっと見つめあうシンとレイ。

「・・・・分かった」
レイは手をすっと引いた。





あとがき
カガリ攻撃魔法を使うの巻(笑)
徐々に覚えてきますよ〜
それにしてもユウナはへっぴりさんですね。
わざとそう書いたんですけど、これからどうなっていくのやら・・・