「すまない!!アスラン!!」
カガリはばたばたとキッチンにやってきた。
「まだ寝てていいのに」
昨日はあのまま泣き疲れて寝てしまったのでアスランはカガリを部屋へと運んでいたのだ。
「起きたら・・ベットで寝てるし、時間も・・寝坊しちゃって・・」

「大丈夫だよ。慌てなくて」
アスランは優しくそういうと、テーブルに朝食を置いた。
「・・・・・・・・・ごめん・・・」
カガリはそれを見て俯き言った。
お世話になっている代わりにできることはしようと決めていた。
なのに・・・
「1人じゃないんだ。協力って言うのは必要だろ?」
アスランはそんなカガリを見て言う。
「最近、カガリの作ってくれたご飯を食べてるせいか体調がいいんだ」
「え・・?」
「前は出来合いのものを食べることが多くてな、やっぱり違うのかな?」
食事のせいかは分からない・・だが、最近家に帰るのが億劫ではない。
以前は面倒だからと軍に泊まることばかりだったのに、今は毎日帰ってきている。
「そっそれはそうだよ!1人で食べるより大勢で食べる方が美味しいに決まってる!!」
うれしそうにいうカガリに、アスランは安心した。

うん。大丈夫だ。
この笑顔なら・・・
カガリのこの表情はアスランの胸に刺さることはなかった。
安心した笑顔・・・
「大勢といえば、この間ここに来てた男の人と女の人・・・食事に誘わないか?」
「え?」
アスランは少し考えた後、キラとラクスのことだろうと気づく。
「いや・・あの時はちゃんと挨拶できなかった気がして・・迷惑かけちゃったし・・」
「気にしなくていいよ」
アスランは椅子を引きカガリを座らせる。
「でも、アスランの大事な人なんだろ?」

大事・・・確かに大事だが・・・
カガリは俺の友達と仲良くなりたい・・のか?
そうだよな・・ずっとこのまま・・ここに閉じこもってるわけにもいかないし・・友達も欲しいだろう・・
「今日誘ってみるよ、でも忙しいからいつになるか・・」
そういうと、2人は朝食を取り始めた。



夢の先〜その名はハロ〜





「隊長、今日は軍本部で会議でしたっけ?」
シンは報告書を作成していた手を緩め、アスランに聞いた。
「ああ、今日はイザークが来るから長くなるかもしれない」
イザークとはアスランと同じ規模の隊を率いている。
普段は戦闘の多い地域に前線として行っているのだが、
昨日、反乱軍を制圧できた為、戻ってくるのだ。

アスランは銃の腕も、戦略もかなりのものだ。
彼が前線に出ないのはおかしい気もするが、だからこそ軍の司令部に残っている。
アスランの率いるザラ隊は将来有能と思われる軍人が配属される。
アスランが指導すればその能力は更に上がるだろう・・という、考えかららしい。

「イザーク隊長って苦手だなぁ・・」
シンはぽそっとつぶやく。
「はは・・確かに・・アイツはすぐ突っかかってくるからなぁ・・」
アスランにはそれが顕著だった。
同期で腕も良く、上層部に可愛がられているアスランをイザークは嫉妬心で敵視しているのだ。

「・・・隊長って・・ここ最近変わりましたよね」
「え?」
シンのいきなりの言葉にアスランは驚く。
「よく笑うようになりました。オレ・・うれしいです!」
「シン・・・」
アスランは少し目を見開く。

「隊長のこと目標にしてるんです」
シンはそういうと、少し頬を染め、恥ずかしそうにした。

「俺?」
シンが俺のことを目標にしている・・?
シンがザラ隊に配属されて1年がたっていた。
しかし、シンのことを人懐っこいとは思っていたが、自分のことをそんな風に思ってくれているとは
全く気づかなかった。

シンは相変わらず恥ずかしそうにしている。
「あ・・・いや・・・・シン・・報告書はいいのか?」
「あ!そうだっ」
アスランの言葉にシンはあわててPCの前に戻った。
シンの打つキーボードの音が部屋に響く。
そんな中、アスランは困ったように、少しうれしそうに、そして照れたように口を手で覆っていた。

「アスラン・・どうしたのその顔・・」
アスランはキラの研究室を訪れていた。
「今日、イザークと会議じゃなかった?」
キラもイザークとは同期である。
「もう少し時間があったから・・」
「そう」
キラは席を立つと、コーヒーを入れに歩く。
「なあ・・俺って変わったか?」
「なにいきなり?」
キラはコーヒーをアスランに手渡し、怪訝な顔をする。
「シンに変わったって言われたんだ・・・」
キラはアスランをジーと見た。

「表情が豊かになったかな?」
自分といるときはそれなりに感情を顔に出してはいるが、廊下で見かけたとき、
他の人と話しているのを見たときなどはいつも同じ表情、悪く言えば無表情?だった。

だが最近は・・笑うというわけではないが、表情が柔和になった気がする・・。
あまり気にしてはなかったが、シンの言葉を聞くと、確かに変わった気がする。

そんなことを聞きにきたのだろうか・・?
キラはすっきりしない顔をした。
「カガリが・・」
「ん?」
「カガリがお前とラクスを家に呼んで食事をしたいっていってるんだ」
「え!?本当!?」
キラの喜び方にアスランは少しむっとする。
「気になってたんだよね。アスランを通して話は聞いてたんだけど、気になっちゃって・・・」
カガリという子とはほとんどといっていいほど話していない。
前に行ったときもやはり混乱しているというか、緊張しているように思えた。
だか、彼女から感じ取れる雰囲気は悪いものではなかった。
暖かい、優しい・・なぜかはわからないけど、そんな気がしたのだ。

「落ち着くまでは僕たちも行かない方がいいかもって話してたんだ」
ラクスも毎日「カガリさんは大丈夫でしょうか?」と僕に聞いてきた。
心配させないように「大丈夫だよ・・」と答えてはいたが、正直分からなかった。

「落ち着いたの?」
「え・・・ああ・・・昨日・・・俺の思ってることを全部言ったんだ・・・そしたらカガリ・・泣いて・・」
「・・・な・・なに・・・?」

話の内容はおかしくない。
泣かないといっていたカガリが泣いたのだから、気持ちを吐きだせたのだろう・・・
でも、この・・・このアスランの表情はなんなの!?
「キラ」
そのとき、ラクスが戸をあけて入ってきた。
「まぁ・・」
入ったとたん、アスランを見てラクスが驚く。
「?」
アスランは自分を見てのその表情に不思議がる。
「アスランどうなさいましたの?」
「え?」
「何かいいことでもありまして?とてもうれしそうになさってますわ」
そう、アスランは頬を軽く染め、瞳は優しく揺れていたのだ。
2人はこんな表情のアスランを見た事がなかった。

気づかぬは本人ばかり・・
アスランは何のことを言ってるのか分からない様子できょとんとした。

「アスランが今日家に来いって。カガリがご飯ご馳走してくれるらしいよ」
「まあ!本当ですか!!」
カガリは飛び跳ねる勢いで喜ぶ。
「気になってましたの。でも、ご迷惑になってわと、なかなかお会いできなくて」
「あ・・でも今日は僕・・・」
そうだ、急ぎの用事があったことをキラは思い出す。
「いいんだ。今日は無理だろうって伝えてあるから」
「そう?じゃあ・・・明日でもいい?」
「ああ、伝えておくよ」
アスランはそういいながら部屋から出て行く。
「あれ?もう時間?」
「遅れるとうるさいからな」
イザークは・・・とアスランは苦笑いをしながら去って行った。



「掃除しよっかなぁ・・」
家で暇を持て余しているカガリは呟く。
じっとしていると、昨日のことを思い出してしまう。
がっしりアスランにしがみついて泣きじゃくった自分。
今思い出すと顔から火が出そうだ。

う〜〜〜恥ずかしい!!!
今まではじっとしていると家族のことを思い出して欝になっていたが、今はアスランのことばかり思い出してしまう。
思い出すのが嫌とじゃなくて・・・
とにかく恥ずかしい・・・。
私が無理して笑ってるのに気づいてたんだ。
私が弱い人間だということも、私が泣いてないことも、全部気づいていてくれた。

「ダメだ・・・顔が笑ってしまう・・・」
カガリはにやけ顔を何とか抑えながら席を立つ。
掃除機を手に取ると、アスランの部屋に向かった。
『資料とかあるからここは掃除しなくていいよ』
そう言われていた。
だが、今日は朝からにやけてしまう顔を抑えるため、掃除や洗濯などをあっという間に済ませてしまった。
やってないことといえば、この部屋の掃除ぐらい。
無くしたり、いじったりしなければ大丈夫だろうとカガリはアスランの部屋の戸を開けた。
「・・・・・・・・・・・・ん?」
目に入ったのは散らばった工具と、何かの物体。
「丸い・・・オレンジの玉?」
カガリは思わずその球体を手に取った。
くるりと一回りさせてみるも・・・なんなのかよく分からない。
「あ・・・スイッチ?」
カガリは球体に電源らしきものがあるのを発見した。
・・・ちょっとだけ・・・
カガリはごめんっと舌をペロッと出した後、そのスイッチを入れた。

「ハローーー!!」
「わああああああああああ」
いきなりその物体から声が発せられたことに驚きカガリは思わず球体を投げた。
「しまったっっ」
そのすぐ後に、投げたことを後悔したがその球体は壁にぶつかることなくぴよーんと跳ねた。

「え・・?」

「ハロハロ、ゲンキ?」
「・・・え・・・話すのか・・?これ・・・」
ペットロボット・・なのだろうか・・・オーブでもこんな感じのおもちゃがあった。

「ゲンキ?」
「何だお前、私に聞いてるのか?」
「ゲンキ?カガリ、ゲンキ?」

カガリは自分の名前が呼ばれたことに驚きながら気づく。
これは・・ひょっとしなくてもアスランが私に作ってくれたのだろうか・・?
昨日、大きな袋を持って帰ったアスラン。
すぐに部屋に閉じこもって何かをしていた。
仕事だといっていたけど・・・これを作っていたのだったら・・・
カガリはぎゅっと目を瞑り、琥珀の瞳を潤ませた。

「わ・・・私は・・・元気だ」
「ゲンキ?ハロゲンキ」
「そっかお前も元気なのか!」
「ハロハロ!」
「よしハロ!かけっこだ!」
カガリはそういうと、アスランの部屋を飛び出し、リビングに走っていった。




「人使いが荒い・・・」
シンはむすっとした顔で歩いている。
「だいたい、家まで持ってこさせるなよな・・・」

ここは隊長クラスの人が与えられた建物。家だ。
さすがに隊長クラスになると建物も立派で、部屋も広い。

「オレなんてただの兵士だから部屋なんて2つしかないのに・・・」
だからといってそれで十分なのだが・・。
これ以上部屋があったとしても使えないし、掃除が面倒なだけだ。
なんでシンがこんなところにいるかというと、廊下でイザーク隊長に会ったとき、仕事を頼まれたからだ。
「この資料をクルーゼ隊長にもっていってくれ」
と、それはいい。
だが、どこにいるのかも言わないで去っていったのだ。
散々捜した挙句、今日は休暇であることが分かった。
だが、連絡を取ると、家までもってきてくれ・・・といわれたのだった。
そういえば隊長の家もここだよなぁ・・・。
だからどうって訳ではないが、シンはふと思った。
下の階に降りていく途中、ちらりとアスランの部屋を見た。
「あれ・・?」
シンは何かに気づく。
アスランの部屋であろう扉が少し開いていたのだ。
隊長戻ってきてるのかな・・?でも、今は会議中・・・
シンは不審に思いながら部屋に近づいていく。
「犬・・・逃げないのかな・・・?」
ぽそりと呟くと、シンは家の中を覗く。


「ハロ!ハロ!」
「あ・・」
アスランの部屋の中から声がした。
隊長ハロ作ったんだ!!
さすが隊長!早い!!

「隊長?」
シンはうれしそうに部屋の中に呼びかける。
あれ?
しかし返事はない。
ハロが扉を開けたのか?
やはりアスランは会議中・・・だよね・・とシンは考えた。
「かぎ開いたままじゃ危ないじゃん・・・」
シンは「失礼しまーす」と小さい声でいい、とりあえず中へと入って言った。
気は引けたものの、このままでは危ないし、・・・隊長の部屋に興味もあった。
アスラン以外の隊の仲間の部屋には入ったことがある。
しかし、アスランの家だけは入るどころか、覗いたこともなかった。

「わ・・・片付いてるなぁ・・・」
シンは部屋のきれいさに驚く。
「・・・ご飯自分で作るんだ・・・そろってる・・・」
調味料などは一通りあるらしく、キレイに並べられていた。
最近、軍に泊まることなくなったもんなぁ・・・
前はいっつも泊まってたのに・・・
子犬がいるから世話があるもんな。

子犬!!
シンは何かを思い出したように辺りを見回した。
「子犬見たいな・・・」
あの隊長が犬を飼ったというのにも驚いたが、仕事を早めに終わらせる程大切にしている犬。
シンの興味を引かないわけがない。
シンは近くで跳ねていたハロを掴むと、
「わんちゃん〜ハロだよ〜」
と、低姿勢で進みだした。


ここ?
悪いと思いながら近くにあった部屋を開ける。
違う。
ここ?
いない・・・
ほんとにいるのかな?
と思いながら次の部屋を開けた。
「いた!」
何かの気配がしたため、シンはうれしそうに部屋に入る。
が、次の瞬間、うれしそうな顔は固まり、体は石と化した

そこには、子犬ではなく、人がいたからだ。

え?ええ・・!?
その人はベッドの上に寝転がり、幸せそうに寝息を立てている。
「ハロ!」
「うわっばかっ」
ハロの声にシンは慌てて電源を切る。
「ん・・・・・ん・・・」
シンは更に固まる。
お・・起きた・・・?
やばい・・オレ・・・・・このままじゃ・・・
「んー・・」
しかし、女の子は寝返りを打つと気持ち良さそうに寝息を立て始めた。

ほっとしたシンはゆっくりと女の子に近づく。

隊長が飼ってる子犬・・・子犬?
まさか、子犬じゃなくてこの子?

シンは近くまで寄るとベットのそばにしゃがみこんだ。
キレイな髪の色だなぁ・・
見たことない・・・軍関係の子じゃないのかな?

・・・気持ち良さそうに寝てる・・・
風邪引きそう・・・布団ぐらいかけないと・・・
シンは女の子を見ながらいろんなことが頭の中をまわった。
すっと立ち上がると、下のほうに蹴られていた布団をかけてやる。

「隊長の・・恋人?」
またベットの側にしゃがみこむと、頬杖をついてじっと見た。
あの隊長に恋人かぁ・・・
そんな話、1度も聞いたことないな・・・。
ぽかぽかと日差しの差し込む中、シンは女の子の顔を見ながら考えていた。


隊長はそんなことに興味ないって感じだもんな。
前から隊長の凄さは噂で聞いていて同じ部隊になれたときは凄くうれしかった。
この人の下で学べるんだと。
だが、実際に会ってみると、どうも人と関ることを避けているようで、教えてもらいたいと思いつつも
いろんな面で壁を作っているため上手くいかない。
1年たって、少しは馴染めてきた気がしたけど、

子犬って嘘つかれたってことは・・・オレが思ってるほど隊長はオレのこと信用してないのかな・・・




「イザークはどうして人に突っかかることしかできないんだ・・・」
アスランはやれやれといった顔で会議室を後にしていた。
今回の会議は戦後処理についての意見の出しあいだったのだが、アスランの出す意見にイザークは
いちいちそれはどうだとか口を挟んでくる。
最良の結果が得られるのならいいのだが、イザークの言葉は時間を無駄にしているとしか思えなかった。

そうこうしているうちに今日は次の日に変わっていた。
カガリ・・・寝ずに待ってるんだろうな・・・
アスランは早足で家へと向かった。


「・・・・・・開いてる・・・・」
アスランはドアの前まで来ると簡単に開くドアに眉をひそめた。
カガリには危ないから必ず鍵を閉めろといってある。
今まで、鍵が開いていたことはなかった。
アスランは少し不安に駆られながらゆっくりとドアを開いた。
カガリの靴が目に入るとほっと息をついた。
「暗い・・・」
アスランは手探りで明かりのスイッチを探し、電気をつけた。

寝てるのだろうか・・・。
確かに今日はいつもより遅い時間だから仕方ないか・・・

とりあえず着替えようと自室へと入ったアスランだが、
そこにはあるはずのものがないことに気づく。
ハロだ。

「あれ?」
カガリに渡しそびれていたハロ。
ここにないということは・・・カガリに見つかったのか?
別に見つかってもよいのだが、できれば・・・自分で渡し、カガリの喜ぶ顔を目の前で見たかった・・
という思いがある。

アスランは音を立てないよう、カガリの部屋へ向かった。
ゆっくりとドアをあけるとそこは真っ暗だった。
やはり寝ているのであろう。
「ん・・・・・・」
そのときカガリの声が部屋に響く。
「あ・・すまない・・起こすつもりはなかったんだが・・・」
そのとき足にこつんと何かが当たる。
「やっぱり見つかったんだ」
アスランはハロを持ち上げるとカガリ寝ているベッドに近づいていく。

カガリはそんなアスランに気づきゆっくりと体を起こした・・・が・・・
目の端に覚えのないものが映った。
こんなところに何か置いてたかな?
カガリはまだ良く見えない瞳でその物体を見ながら手でそれを触る。
「ん?」
妙な感触にカガリは強くそれに触れた。すると
「いたっ・・・もう・・・なんだよ・・・眠いのに・・・」
部屋にいるはずのない第三者の声が響く。
アスランはその声に動きを止め、驚いたように声のするほうを覗き込んだ。
「シ・・・・・・・・・」
アスランの表情は驚き、だがすぐに恐ろしく険しい表情に変わり、
「シン!?」
と叫んだ。





あとがき
期間があいてるのでここでUPします☆切るにはいい位置だったし。
いやぁ・・・シンがアスラン大好きですね。
アニメでも本当は大好きだったと思います。
表現が下手なだけで、尊敬してたんじゃないかな?アスがへたれてなかったらもっと良かったんだろうけど。。
今のうちに言っておきますが、このお話、難しい戦争の話は出ませんので。
書くの苦手なのが一番の理由ですが、やはり、CPというとをメインにいきたいので。。
なので、変なとこがあっても突っ込まないでください(笑)
私は行き当たりばったり人間。。