あの優しく私を抱きしめてくれたのはなんだったのだろう・・・
1人ではないと、すがってもいいと私を解放してくれたアスランはなんだったのだろう・・・
すべては同情?
哀れみ?

そんなもの欲しくない・・それなら・・

死んでいたほうが良かった。
怖くても逃げ出してしまっても1人で死んでしまった方がよかった!!


「おい。直ったぞ・・」
イザークが話しにくそうにハロをカガリに差し出した。

「・・・・・・・」
カガリはハロをチラリと見るがすぐに視線を下に落とす。

「・・・なんだか分からないが・・・お前・・戻る場所はあるのか?」
先ほどの2人の会話。
『帰ろう』アスランはそう言った。
それは帰る場所が同じなのだと、イザークには聞き取れた。

「戻る場所・・?」
カガリは虚ろな瞳のままイザークを見上げる。
戻る場所ってどこ?
両親のいた世界?
アスランの家?

『俺もカガリがいなくてもいいから』
アスランのところには戻れない。

「私は・・・」
甘えてたのだろうか・・・1人で寂しくてアスランのそばにいたのだろうか?

違う・・・
寂しかった。
アスランは優しくて・・・でも、すがってなんかいない!!

最初はそんな気持ちがあったかもしれない。
でもアスランと暮らして、アスランを知って・・・

好きになってたんだ・・・・
カガリはぎゅっと目を瞑るとボロボロと涙をこぼした。




夢の先〜異常気象〜





カガリはハロを抱えトボトボと歩いていた。

『大丈夫なのか?』
『ああ、ハロを直してくれてありがとう!』
『でもお前行くところ・・・』
『アスランに謝るよ・・・だから心配するな』
カガリはそう言ってイザークの部屋を後にした。


「どうしよう・・・」
アスランのところには戻れない。
戻れるわけがない・・・彼はきっと、私を可哀相だと思って家に置いてくれてたんだ。
そうだ・・私たちは一緒に暮らしていたけど、恋人でもなんでもないんだ。
アスランに好きだと言われたことはない。
「バカだなぁ・・・」
カガリはクスリと笑った。

アスランと心が通じ合ってると思ってたなんて・・・

「なんかもう・・・頭こんがらがっちゃって・・・死ぬ気にもなれないや・・・」




「アスラン、グーがいい?パーがいい?」
「・・・・キラ・・・」
キラは笑顔でアスランに話しかける。
しかしその笑顔はどう見ても怒りが込められていた。
殴るならどっちがいいということなのだろう。

「どう考えてもアスランが悪いよ」
「でもカガリが帰るのを嫌がったんだぞ!」
「帰るのって・・・どうせアスランが無理やり引っ張ろうとしたんでしょ」
「・・・」
図星だった。
「カガリさん可哀相ですわね。アスランの嫉妬のせいで八つ当たりされたのですわ」
「・・・」
何も言い返せない。
「僕アスランがここまで嫉妬深いとは思わなかったなぁ・・」
「私もですわ」
「人間味があるってことが分かってよかったけどね」
「おい・・」
アスランはむすっとしたままキラを見た。

「何?慰めて欲しかったの?」
「嫌ですわ。今苦しんでるのはカガリさんのほうではありませんか?」
カガリの方・・・?
「アスラン探して家を出たものの、迷子になっちゃって怖いところにイザークが現れたんでしょ?で、ハロを直してくれるっていうんだ」
「ついていきますわよね」
「ね、あの子なら。でも、いきなりアスランがでてきて、カガリはもういらないって言われたんだよ」
「いらないなんていってない!!」
「でも、そういうことでしょ」
キラは冷たい視線をアスランに向ける。

「・・・・っ」
アスランは少し沈黙したあと、ガシガシと頭をかいた。
これが嫉妬というものなのか・・・?
そういえば、シンとカガリが一緒にいるのを見たときも同じような気持ちだった。

「・・キラがスコールについて聞くっていうから・・」
アスランはぽそりと呟く。

「何?あまりに毎日が楽しくてカガリが別の世界の人だって忘れてたの?」
図星なのかアスランの顔が真っ赤に染まる。

「で、カガリは今もイザークのところにいるの?」
「知らない」
キラは驚いて口を開けた。
「知らないって・・・では、カガリさんがそのあとどうなさったか分からないのですか!?」
ラクスも驚いてアスランに詰め寄る。
「・・・ハロを直したら家に帰るんじゃないか」

「アスランのバカ!!!」
キラの声が部屋に響き渡る。
アスランは思わず顔を歪めた。
「アスランにいらないって言われてアスランがいる家に帰るわけないでしょ!!」

言われて・・当然だ・・と思った・・・。
俺は何をやっているのだろう・・・
勝手に嫉妬してカガリにひどいこといって・・・それでもまだカガリが俺のところに帰ってくるなんて・・・
「カガリがいなくていいなんて・・本気じゃないんだ・・・ただ、イライラして・・・・」
アスランは今更ながらに恐ろしいことを言ってしまったことに気づく。
「俺はカガリが・・・いないと・・」
アスランはガクガクと手が震えだすのを感じた。

「とにかくイザークに・・」
キラはそういうと、通信機を取り、イザークへと連絡を取った。
「あ、イザーク?」
「うん、それでカガリはそこにいる?」
「・・・帰ったの?」
キラの言葉にアスランは表情を硬くした。
「分かった」
通信を切ったキラがアスランの方に向く。
「カガリ帰ったって・・・アスランに謝るっていってたらしいけど・・・」
みんなの考えは同じだった。
そう言ったのはイザークを心配させない為。
カガリはアスランの家に戻ってなどいないと・・

何をやっているのだろう。
カガリが元の世界に戻ってしまったのではないかと心配していたのに、
今度は自分からカガリを突き放してしまった。
アスランはうな垂れるようにその場にしゃがみこんだ。

「とにかく探しましょう」
ラクスの言葉にキラは頷いた。
アスランもぎゅっと目を瞑ると、決心したように立ち上がる。



「外・・・」
イザークから外への道を聞いていたカガリは迷うことなく、軍施設から外に出ていた。
何本かの舗装されていない道路と少し離れたところには森がある。
この道は・・・確かアスランとミネルバという街に出かけたときに通ったところだ。
アスラン・・・
その言葉が胸を刺す。
どこへ行けばいいのか・・・
それすら考えられなかった。
だが、ここにいてはいけない。そう思った。
ここにいたらアスランに迷惑をかけてしまう。
同情の眼差しで見られてしまう・・・・

カガリは一歩ずつ、ゆっくり歩き出した。




「何・・・この空・・・・」
キラはカガリを探そうと表に出ると、まだ日中なのに外は薄暗く、陰湿な空気が漂っていた。
「・・どうしたのでしょう・・・・」
ラクスもボーゼンと空を見上げる。
「雨にしては・・・こんな・・・」
アスランもその空を見上げた。
いくら雨とはいえ、こんなに恐ろしい空気を感じたのは初めてだった。
空はどす黒い雲に覆われ、今にも落ちてきて押しつぶされそうだ。
側にいた軍人たちも初めての異常気象にざわつきはじめた。

「おい、キラ!」
後ろから声がかけられる。
「イザーク・・」
「通信が気になってな・・どうしたんだこの空は?」
イザークは険しい顔で近づいてきた。
ポツリ・・・そのときアスランの顔に水滴が落ちる。

「・・・雨・・・?」
雨は珍しいものではない、普通に起きる自然現象だ。
しかし、そう思った瞬間、滝のように空から雨が降ってきた。
「わっ」
キラは慌ててラクスを屋根のある場所へ連れて行く。
アスランとイザークもそれに続いた。

轟音・・とでもいえばいいのか建物にあたる雨音はすさまじい音を立てていた。
「・・・おいおい・・・なんなんだ・・・」
イザークは驚いたまま地面に落ちる大量の水を見ていた。

「気持ち悪いですわ・・・」
この世の終わりではないか・・・
そう思うほどの雨が当たり一面に降り注いでいる。

「初めてだよ・・・こんなの・・・文献にだってこんな異常気象のってなかったよ・・・」
「キラも知らないのか・・?」
キラが知らないということは珍しいどころか今までに1度もない現象なのかもしれない。

「とにかく中に入ろう・・・」
キラは足元を見た。
つられて3人が足元を見ると、跳ね返った水で、下半身はずぶぬれ状態だった。
地面は吸いきれない水が湖のように溜まっていく。

「おい、あの女はどうした!?」
イザークが不意に叫んだ。
「あの女?」
キラは急な言葉に意味がわからず聞き返す。

「カガリだ!アイツ、外への出方を聞いていたんだ。お前に謝るといっていたのに外への行き方を聞いていたから変だと思ったんだが・・・」
アスランの表情が強張る。
「さっきの通信で気になってな・・・来てみたんだ」

「カガリが・・・外に出たのか・・・?」
アスランは震えるような気持ちを抑え聞いた。
「・・それは知らん」

「どの道を教えた!?」
アスランはイザークの胸倉を掴むと大声で怒鳴った。。

何だ・・・妙な不安が押し寄せてくる・・・
この雨音が彼女とであったときのことを思い出させる。

濡れた服・・・

『突然スコールが来て雨宿りに森へと入ったんだ・・』
彼女の言葉が蘇る。
『スコールなんてもの俺たちは知らない』
『初めてだよ・・こんなの・・』
キラの言葉がだぶる。

この異常気象は何だ・・・・?
俺たちは知らない・・・
雨宿り・・・

「ちが・・・っっ・・」
キラはアスランの手が震えだすのが見えた。
「アスラン!?」
雨が容赦なくアスランに降り注ぐ。
これはなんだ・・・?

まるでこれじゃあ・・・
出会った時のカガリと同じじゃないか!!

「イザーク!!どこの道を教えた!?」
アスランは叫んでいた。
だが、頭の中は真っ白で意識がない。
ただ、カガリを探さなくては・・・
カガリを捕まえて抱きしめなくては・・・
その想いが胸の中で渦巻いていた。





あとがき
ちょっとアスランの言葉が切れたときのステラみたいだなぁ。。なんて・・・(笑)
物語りもクライマックスですね〜★
次回、最終話になります〜
なのでサイトのTOPを記念絵にしようと思ってます。
で、それをフリーに・・・いらないかもしれないけど・・・フリーに・・
なんか記念って感じがするので。。