「つめたいっっ」
カガリは手で頭を抱えるようにして走っていた。
しかし大量の雨にそれは意味をなしていない。
これって・・・・
スコールだよなぁ・・・?
カガリは走りながら考える。
カガリがしばらく歩いていると、いきなり厚い雲が現れ、世界を暗く染めた。
カガリは雨宿りをしようと慌てて走り出したのだった。
知らないっていってたけど・・・名称が違うだけなのか?
そうのとき、1本の大木が目に入る。
森への入り口だった。
良かった・・・あそこで雨宿りをしよう・・・
カガリはその木に走り寄った。
夢の先〜夢の先には〜
ゴーという凄まじい音、まだスコールは止まりそうにない。
「この木のおかげで助かった・・・」
助かった?
カガリは苦笑した。
死んでたほうがマシだったと思ったばかりなのに何を考えているのだろう・・・
ただ・・・・ここに来たときは怖くて、不安で、寂しくてすべてに絶望していた。
両親を亡くし、どことも分からないところに来てしまったのだ。
でも、今は同じように怖くて、不安で、寂しいけれど何かが違う。
アスランは生きている。
自分とは共に歩めない、でも、愛しいあの人は生きてここにいるのだ。
それだけでカガリは救われた気持ちになった。
「たとえ私が必要とされてなくてもアスランは生きているんだ・・・
アスランは私に幸せを与えてくれた、居場所を与えてくれた・・それは事実だ」
それだけで・・・・
もういい・・・・
カガリはゆっくりと瞳を閉じる。
ああ・・・なんだろう・・・とても穏やかな気持ちだ・・・
ビチャッ
どしゃ降りの雨の中アスランは走り続けていた。
息をすることを忘れるぐらいに走り続ける。
カガリはどこにいる!?
早く探さないと・・カガリは・・・・
なぜかは分からない・・・だが、確信に近いものがあった。
カガリはいなくなってしまう!!!
カガリがそれを望むなら俺もそれを受け入れよう。
でも、彼女を傷つけたまま、自分の気持ちを・・・正直な自分の気持ちを伝えないまま離れるなんてできない!!
「くそうっっ」
雨で視界が歪む。
「俺は・・・俺は君に好きだとも伝えてはいないじゃないか!!」
毎日を当たり前だと感じ、それが普通になっていた。
言う必要なんてないと思っていた。
俺が君を好きなのは・・一緒にいたいのは分かってくれていると思っていた。
だが、俺が言った言葉は何だ?
『カガリがいなくていいから』
そんなこと言いたかったんじゃない!!
「君が好きだと・・・それすら言わずにあんなこと・・・」
アスランはイザークに聞いた道を走り続ける。
夢を見た。
お父様とお母様が笑っている。
ああ、あそこに行きたいな・・・
行ってもいいかな?
行ったら楽になれるかな?
え?
目の前が歪む。
楽しそうに話していた両親は悲痛な表情に変わった。
何?何ていってるんだ・・お父様・・・
逃 げ ろ
っっ!?
ここは・・・っ
爆発音が響く。
『ここにいてね、でてきちゃダメよ!!』
いやだ!!
会えなくなってしまう!!
行かないで・・・1人にしないで・・・
『1人じゃないでしょう?』
真っ白な世界・・・
お母様は何て言った・・・?
1人じゃない?
だって、私は今・・・1人だ・・・
どこへいけばいいかわからない・・・
愛しい人はもういない・・・
愛しい人は私が必要ない・・・
お墓が見える・・・
お父様とお母様のお墓だ・・・
そうだ・・・守らないと・・私が2人を守らないといけないな・・
戻って、1人で暮らせばいいか・・・
このまま眠ればいいんだ・・・
私が2人のために泣けば2人はそこに存在するんだ。
そうして生きていけばいい・・・
「じゃあ、俺はどうなる?」
誰の声?
「俺は・・カガリがいないと生きていけない・・・俺は生きてるんだ」
ぼうっとした頭がゆっくりと晴れてくる。
「アス・・ラン・・?」
ぼんやり見える姿・・薄暗いがそこには見覚えのある人。
「カガリにここにいて欲しい・・・・」
「やだな・・アスラン・・むりするなよ、私は大丈夫だから」
カガリはふふっと笑う。
ポツリ・・
カガリの瞳に水滴が落ちる。
雨?
違う・・
見上げるとアスランが大粒の涙をこぼしていた。
アスランはカガリの頭を膝に乗せ、震える手でカガリの頬に手を当てていた。
涙だけでなく、髪からも水滴が滴り落ちる。
「すまない・・ひどいこといって・・・違うんだ。俺の本当の気持ちは・・・」
「君を愛してるんだ」
霧が晴れた・・・
カガリの視界は澄み切るように冴えわたり、雨で冷え切った体は温かい血が流れていく。
「どっちが見える?」
「・・・どっち・・?」
「いま、カガリの心には両親のいた世界と俺のいる世界・・・どっちが見える?」
どっち・・?
お父様・・お母様・・?
2人の影が遠ざかる。
「ちがっ忘れたいわけじゃない!!お父様っっ」
カガリは体を起こし空に手を伸ばす。
アスランは優しくその手を掴む。
「忘れないよ・・・どこにいても、カガリの両親は君の側にいる」
「・・・・・」
「今もいるだろう?」
目を閉じると優しく微笑む2人の姿。
「・・・いる・・・・」
カガリは閉じた瞳から1筋の涙を流した。
「忘れない・・私は」
カガリはアスランに向き合い、流れた涙を拭った。
「アスランといたい。
アスランを・・・愛してるんだ・・」
「カガリ・・・」
濡れた体で2人は抱き合う。
「びしゃびしゃだ・・・」
カガリがつぶやく。
「でも暖かいよ・・・」
アスランもつぶやいた。
「不安にさせてごめん・・・」
抱き合い、目を閉じた暗闇に明るい光が差し込む。
鳴り響いていた雨音は少しずつ消えていき、暖かい日差しが差し込む。
「止んだ・・・」
カガリがゆっくり目を開く。
アスランもゆっくり眼を開いた。
そこには眩しいくらいの日差しと、暖かな空気が差し込んでいた。
「帰ろう。カガリ風邪引くぞ」
「引いたら・・・・看病してくれるか?」
「仕事休んででも」
「じゃあ、引かないようにしないとな・・・」
優しく微笑むアスランにカガリはうれしそうに笑う。
アスランが見たカガリの笑顔の中で1番輝いた笑顔だった。
守ろう・・・
どんなことがあっても・・・
君がずっと笑っていられるように・・・
夢の中に引き込まれないように・・・
アスランとカガリはお互い笑い合った。
その時、「アスラーン」という、キラの声が森の外から聞こえてきた。
あとがき
完結!!!
いかがだったでしょうか?
このあとの番外を1話ぐらい書こうかと思うのですが、・・読みたいですかね?
どうなんだろう・・・。
ただ、ラブラブな日常生活があんまり書けてないので(仕方ないですけど)
読みたいという方がいらっしゃったら書こうかな〜なんて。。
拍手ででも一言言ってくださると。。
本当はもっと長くも続けようかと思ったのですが、あんまりごちゃごちゃしても
なんなんで、最短距離で(笑)
このあとの2人はラブラブでしょうね〜。アスランは頑張ってカガリの戸籍とったりなんかして。