「ちがう!そこじゃなくて・・」
カガリはキッチンでジャガイモをむいている。
アスランはというと、テーブルにお皿を並べていた。
「だから・・・えっと・・・」
カガリはジャガイモをむぎながらお皿を置く位置を指定していたのだ。

「・・・そこまできっちりしなくてもいいんじゃないか?」
アスランは半ば呆れた顔でカガリを見た。

それを聞いたカガリはむくれた顔になる。
「だって・・・・記念じゃないか・・・せっかくの・・・」

『アスランとカガリが「恋人」として一緒に暮らすようになった記念としてお祝いをいたしましょう!』
ラクスが私たちに提案してきたのはアスランと私が仲直りした次の日だった。
1度会ったっきりだったけど、ラクスはお姫様みたいにきれいで、話しやすくて、
仲良くなれそうな気がした。
こっちで初めてできそうな友達だ。
で、するのならここでと私が提案したのだ。
食事に誘う予定だったし、記念をするなら・・・ここがいいと思ったんだ。
アスランと私が暮らす家。

「カガリ」
アスランは後ろからカガリを優しく包んだ。
「おまっっラクスたち来るぞ!!」
「まだ来ないよ・・」
アスランはカガリの唇に顔を近付ける。

「あら、早く来すぎましたか?」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「いてっっ」
ラクスの声にカガリは慌ててアスランを突き飛ばした。
「あらあら」
ラクスはそんな2人を見て笑う。
「いちゃつくんなら2人っきりのときにしたほうがいいよ」
キラも横から顔を出すとそう言って笑う。
「すみません、お返事がなかったので勝手に上がらせていただきました」

いないと思ったからしようとしたのに・・・
アスランは少しむくれていた。







夢の先〜2人の時〜





「はい!」
テーブルの上にはサラダ、チャーハン、おにぎり、エビフライ、ハンバーグ、からあげ・・・・
ゆで卵・・・おすい・・・もの・・・ニラレバ?

なんだろうこの組み合わせは・・・
アスランとキラはじっと並べられた料理を見た。

「まあ、いろいろ楽しめていいですわね」
そんな中ラクスは楽しそうに言った。

「だろ!とりあえず作れるものは作ろうと思って・・何が好きかも分からないし」
カガリはみんなに取り皿を渡す。

「でも良かったよ。カガリがアスランのそばを選んでくれて」
キラは席につくカガリを見ながら言った。

「え・・ああ・・・」
恥ずかしそうに返すカガリ。

「アスランって女の子・・っていうか、他の人にあんまり関心なくてさ」
「あんまりではなく全くです」
ラクスが鋭く突っ込む。
「そうそう。このままで大丈夫かなぁって思ってたんだ」
「なんだよそれ・・」

「だってそうでしょ。話す人みんなに壁作って・・それじゃあ安らぎなんて得られないじゃない」
「ですわよね。カガリさんこれいただいていいですか?」
ラクスはチャーハンを指差す。
「ああ」
カガリはチャーハンを差し出す。

「俺は1人でも平気だし・・」
「だってカガリ」
キラはカガリのほうを見て笑顔で言った。
「え!?いや!!そういう意味じゃない!」
アスランはカガリに慌てて訂正する。
「・・そうなんだ・・アスラン・・」
もちろん冗談で返したのだがアスランは困ったようにカガリを見つめた。

「ね!アスランはカガリのおかげでこんなに変わったんだ。僕、感謝しちゃうな」
ん?
と、カガリはキラを見た。

カガリは軍でのアスランを知らない。
自分が知っているのは口下手だけど、優しいアスランだ。
それに自分と出会ってからアスランが変わったということは出会う前のアスランを知るわけがない。

「なんだかんだ言ってもアスランは大事な親友だからね」
「2人はいつからの知り合いなんだ?」
「6歳ぐらいかな?公園に遊びに来てたんだけど、アスラン1人でぼーとしててさ、不気味になって話しかけてみたんだ」
「不気味になって話しかけるってなんだよ〜」
「僕って変なものに興味がわくからさ」
だから博士という称号をもらい、いろんな実験をしている。

「アスランが変ってことか?確かにちょっと変わってるかもな
この間、パソコンに向かって一生懸命何かしてるから何やってんのかなって覗いたんだ
そしたらアスラン、楽しい健康体操やすぐできる簡単料理のページ見ててさ〜」
見た目からは想像できないから笑っちゃって・・とカガリは話す。

「それはっっ」
カガリ・・・の役に立つかと思っただけだろ・・・
こちらで暮らしてくれるのはこの上なくうれしい。
だが、体に異常をきたさないとも限らない・・・違う世界から来たんだ・・・
キラが言うには人間として俺たちと変わりないといっていたが・・・
それでも心配なものは心配だ。

「そういえば、ラクスとキラも一緒に暮らしてるんだってな」
カガリは困ったようなアスランの顔にこの会話はここでやめようと話をキラに向けた。
「はい」
恥ずかしそうにキラとラクスは見合う。
「結婚してるんじゃないのか?」

「ええ・・・」
「でももう一緒に住み始めて5年にはなるだろ」
アスランが会話に入ってくる。
「・・・・」
ラクスは悲しそうに微笑んだ。
「ラクス?」
キラはそんなラクスを心配そうに見る。
「キラには・・・プロポーズもされましたの・・・でも・・わたくし・・・」
「それはいいんだよ!ラクスがまだ早いって思ってるんだったら僕はいつまでも待つって言ったでしょ」

カガリは慌てた。
アスランから会話を逸らしたものの、キラに振った会話もまずかったらしい。
「えっと・・・キラ・・・」
オタオタした様子でカガリはキラとラクスを交互に見る。

「私・・キラに言ってないことがあるんです・・・」
「・・・え・・・?」
キラは目を丸くしてラクスを見た。
「忙しいからと・・・私はここで歌姫として軍の施設を回って忙しいしのでまだ結婚は考えられないといいました」
ラクスはプラントで歌姫と呼ばれ、軍施設を回り、歌を歌い、平和を呼びかけていた。
「うん」
「ですが・・・そうではないのです・・・」
伏せ目がちに話す語尾は揺れていた。

カガリは他の部屋に行ったほうがいいのではないかとアスランを見る。
そんなカガリをアスランは『大丈夫』と微笑みかけた。
アスランがラクスのこんなに真剣な表情を見たのは初めてだった。
しかも俺やカガリのいる前で・・・だからこそ、ここにいたほうがいいと判断したのだ。


「私は自信がなかったのです・・・キラに相応しいのか・・・歌姫として毎日いろんなところを回っています。
遠いところへ行けば1週間は帰らないこともあります。
そんな私がキラと結婚してあなたに安らぎを与えられるのかと・・・研究者して毎日忙しく過ごすキラを私は支える
自信がなかったのです・・・」

「ラクス・・・」

「ですが、私・・分かったんです。カガリさんを見て・・・」
ふと向けられたラクスの視線にカガリは胸がドキンと弾く。

「自信がないと・・・怖いから出来ないと・・そんなことを言っていてはなにもできない。
私はキラが好きで愛していて、ずっと一緒にいたい気持ちはこんなに溢れているのに・・・
そんな恐怖心からあなたに壁を作ってしまっては何のためにあなたの側にいるのか分からなくなります」

「・・・・僕は君に支えられたいんじゃないよ。一緒に歩きたいんだ
持てない荷物があるときはお互い持ち合って・・ただそれだけでいいんだよ」

震えるようなラクスの声をキラは優しく受け止める。

「はい。アスランとカガリさんを見てそれに気づいたのですわ・・・だからキラ・・」
ラクスは伏せていた頭をゆっくりと上げると

「もう一度プロポーズしていただけませんか?」
と、笑った。

「・・ラク・・・・・もちろん・・・!」
キラは本当にうれしそうに微笑んだ。

「じゃあ、俺たちはお邪魔かな?」
アスランの声にカガリはアスランを見上げた。

「君たちもでしょ」
キラはそう言うとアスランに1枚の紙を渡した。

「頼まれてたものだよ」
「・・・ああ・・・」
アスランは少し考えるとそれが何か分かったのか照れたように笑った。

アスランはそれを受け取るとカガリを促すように部屋を出た。

「さて・・・」
キラはそれを見送ると、ラクスに向き直る。

「ラクス、僕と結婚してくれますか?」

「・・はい!」




「アスラン・・・どこ行くんだ?」
カガリはアスランに手を引かれ外を歩いていた。
アスランはカガリを見て微笑むだけで何も言わない。

どこにいくんだろう・・・
ただ・・・見たことある気がする・・・
いつだったかな・・・?

見えるのは木・・・森の中だろうか・・・
森なんてどこも一緒で違いなんてよほど知った場所じゃないと分からないはずなのに・・

アスランはしばらく歩くと立ち止まる。
そこには少し大きな木・・・

「・・ここ・・は・・・」

アスランと私が初めて出逢った場所・・・?

「あれから初めて来るな・・・」
「・・うん・・・」

「ここで初めてカガリを見たとき・・正直・・面倒なことに巻き込まれたくはないと思ったんだ。
それまでも戦争で1人っきりになった人とあった事があって・・どう対応していいか分からなかったし・・・
俺・・・人付き合い苦手だから・・・」

アスランはそっと、木にもたれかかると、カガリに手を差し出した。
カガリは引き込まれるようにしてアスランへと手を伸ばす。

ぼすっという音と共にアスランの胸の中へと流れ込んだ。

「でもアスランは優しかったぞ・・・」
「多分・・カガリだったからだと思う。今はね」
「私は救われたよ・・・アスランの優しさに、想いに・・・」
カガリはそっとアスランの胸元を撫でる。

いる・・・アスランはここにいるんだ・・・・

「その・・・順番が違う気がするんだが・・・」
アスランは先ほどまでの声色とは違い、照れたような、恥ずかししそうな話し方をする。
カガリはなんだと顔を上げると、そこには頬を赤く染めたアスラン。

「キラに頼んでおいたんだ。俺よりあいつのほうが詳しいし、ツテもあるみたいで・・・」
「なんの話だ・・?」
カガリは首をかしげる。
アスランは何が言いたいのだろう・・・

アスランはそっと目線を服のポケットに移すと、中から紙を取り出した。
先ほどキラが渡していた紙のようだ。

「これ・・・その・・戸籍なんだけど・・・」
戸籍・・・
そうだよな・・・私はここにいるはずのない人間なんだ。
「ありがとう・・・作ってくれたのか・・」
「・・・・それで・・その・・・」
アスランは恥ずかしそうにその紙をそっと開く。

「名前・・カガリ・ザラにしてるんだ・・・俺と結婚してくれないかな・・?」

カガリ・ザラ

戸籍を印刷してある紙にはカガリ・ザラ。
アスランの妻となっている。

「〜〜〜〜〜〜っっ」
カガリは思わず手で口を塞ぐ。

「先に言った方がいいのは分かってたんだけど、戸籍ができてからのほうがカガリが安心するだろうと思って・・」


「キラたちじゃないけど、俺も同じ気持ちなんだ。
俺はカガリがいてくれると頑張れる。カガリも俺といたい・・だろ?
恋人としてでなく、妻として一緒に暮らしてくれないか?」

恥ずかしそうにカガリを伺うアスラン、
恥ずかしそうにアスランを見つめるカガリ。

「私で・・よければ・・一緒にいたい。アスランの奥さんになりたい・・・」

「カガリじゃないと嫌なんだ」

「うん」

「愛してる」

「うん」

「だから泣かないで」

「ばか・・・うれし泣きはいいんだよ・・・」

カガリはアスランの胸に飛び込んだ。

アスランはギューとカガリを抱きしめる。
「もっと早く出会えてたら良かったのに・・・」
「ん?」
「1分でも1秒でも長くカガリと過ごしたかった」
「過去は取り戻せないけど、未来は私たちで作るんだ・・ならそれだけで幸せだ」

「・・・ああ」




「え!?隊長結婚したんですか!?」
「ああ」
「カガリって子でしょ〜早いなぁ・・・隊長まだ20歳でしょ」
「アスランは立派に仕事してるからいいんだよ」
キラがひょっこり顔を出す。
「それに僕もね」
「え!?博士も結婚するんですか!?」
アスランはにこりとキラを見る。
キラもそれに答えるように笑ったが、
「ねえ、いつする?」
と、変な言葉が返ってきた。

「・・・何を?」
「やだなぁ・・合同結婚式だよ〜僕たちとアスランたちの」

その言葉により、俺とカガリはあわただしい日々をしばらく送る事となり、
それから2週間後、結婚式を挙げた。





あとがき
番外というより、こっちが最終回でもいいぐらい?(笑)
幸せなアスカガ&キララクもちょっと入れてみました。
このおはなしではキララクがそんなに前面に出てきませんでしたからね。
同棲状態ってだけでしたから。
ここまで書くとちょっとすっきり☆楽しんでいただけましたでしょうか〜?