「アスラン!!一緒だ!!一緒!!」
カガリは登校してきたアスランに蜜色の髪をちらばせながら走ってきた。
一緒?何がだ?
アスランは向かってくるカガリを見ながら考えた。
本日、カガリ・ユラは3年生になりました。



輝く星〜始まりの日〜




「クラスが一緒なんだ!」
アスランの前までたどり着いたカガリはうれしそうに掲示板を指差して笑った。
「だろうな」
アスランが喜ぶと思っていたカガリはがっかりしたように
「うん」
と呟いた。
そんなカガリを見てアスランはカガリの頭を撫でた。
「この学校、クラス変更は無いんだ」
「は?」
「掲示板にはクラス表が貼ってあるがそれは形式的なもので1年からずっと変わらないんだよ」
そういえば・・・キラもあってラクスもあってミリィもあって・・・・
何で気づかなかったんだ・・・
そう思いながらカガリはうな垂れた。
「でも、俺としてはカガリがそんなに俺と同じクラスになれたのを喜んでくれる姿が見れてよかったよ」
とアスランはまたカガリの頭を撫でた。
カガリは子ども扱いされた気がして頬をぷうっと膨らませた。
「ほら早く行くぞ」
怒った顔も可愛い・・などと思いながらアスランは教室へ向かう。
が、カガリはついてこない。
なんだ?
変に思いカガリのほうへ振り返った。
するとカガリは校門のほうを見たまま止まっていた。
「何してる・・」
「シンじゃないか!!」
アスランの声も聞かずカガリは校門に向かって走り出した。

シン!?

アスランはその言葉に驚くと同時に不快な感覚が押し寄せてきた。
走っていくカガリの手を掴み自分の元へと引き寄せる。
「へ?」
アスランはカガリを背中から自分の胸へと入れ込んだ。
「わわっっ」
カガリはバランスを崩しアスランの胸でオタオタとしている。
アスランはそんなカガリを支えながら前を睨みつけた。
そこには青空学園の制服を着たシン・アスカが立っていた。
「オハヨウゴザイマス」
シンは負けじとアスランを睨みつけながら言った。
「受かったんだ?」
少しこばかにした物言いをされてシンはムカッとする。
お互いにらみをきかせ一歩も引かない。

「おはようございます」
その雰囲気をぶち破ったのは1人の男子生徒の声だった。
「レイ・・・・」
どうやらこの生徒はシン・アスカの知り合いらしい。
睨んでやりたい気分だったが、このままここにはいたくはないし、この男に恨みなんかない。
というか、正月に会っているのだが、シンに気をとられて覚えてないらしい。
アスランはじたばたしているカガリを包み込んだまま靴箱へと歩いていった。

校門ではシンとレイがじっと立ったままである。
「なんでレイがあいさつするんだよ」
いくら年上だとからって、レイが知ってもいないアスランにあいさつするのがどうにも理解できない。
「彼はこの学園の生徒会長をしている 挨拶してもおかしくはないだろう」
レイは表情を変えず淡々と言う。
「生徒会長?誰が」
シンはレイが何を言ってるのか分からず聞き返した
「さっきの彼だ。アスラン・ザラ」
「はあ!?」
あんな男が生徒会長!?
人に睨みきかせるやつが!?カガリのか・・彼氏だと俺にいに来る奴が!?
シンの怒りが更に増した。
「クラス見にいかなくていいのか?」
レイにそう言われると、確かに入学初日にここで怒っている場合ではない・・・と、急いで掲示板に向かった。

「アスラン苦しい・・・」
アスランはカガリを抱えたまま3年の靴箱に来ていた。
1年の靴箱とは死角になっていて1年の嫌なやつが来ても見えない。
「ああ、ごめん」
アスランはそう言いながら手を離さない。
「アスラン〜〜」
カガリは怒ったように言ったが
「もう少しこのままでいたい」
と、アスランに言われ・・・恥ずかしかったが頬を赤く染め動きを止めた。
「でも生徒会長が遅刻なんてかっこ悪いよ」
「「キラ!!」」
後ろから聞こえたのはキラの声だった。
カガリは今の自分の姿を思い出し、慌ててアスランから離れた。
あ・・・・
カガリのその行動にちょっと寂しさを覚えるアスランだった。
「カガリさんおはようございます」
ラクスがキラの後ろからひょっこり顔を出す。
カガリはそんなラクスの姿にラクスって絶対もてるよなぁ・・
としみじみ思ってしまった。


カガリがアスランと付き合うようになると、アスランは毎朝うちに迎えに来てくれる。
それを見ていたキラが「僕もラクスと登校したいな・・」と言い出し、
その次の日からいつもより1時間早く家を出て、学校を通り過ぎラクスの家まで行っている。
そんなキラの行動にカガリは感動を覚えている。
そこまでして一緒に登校したいんだ・・・ラクスのこと本当に好きなんだなぁ・・と。
ふと、1年の靴箱に向かう為の通路を見ると今考えていたラクスが見えた。
ラクスだ・・・
しかし、よく考えると目の前にラクスはいる。
ラクス・・・
「ん?」
ではあっちの方に見えたラクスはなんだ?
カガリは1人、ラクスと1年の下駄箱があるであろ方を交互に見ている。
「どうしたんだ?」
アスランがそれに気づいてカガリの見ている1年の下駄箱の方を見る。
まさかシンがいるんじゃないよな・・と苛立ちをかかえつつ。
しかしそこには誰もいなかった。
「カガリ?」
カガリは眉をしかめどうもすっきりしない顔をしている。
「カガリ どうしたの?」
キラも不思議そうに聞き返す。
「いや・・・なんでもないんだ・・・」
気のせいか?カガリはそう自分を納得させ、みんなで教室へと向かった。
そのときのカガリはシンのことなどすっかり忘れていた。



「なあ、レイ もしかして生徒会役員の中にカガリっている?」
シンは1−Bだった。レイも同じだったらしく、一緒に教室へと来たのだ。
「カガリ・ユラならいるが。会計をしている」
はぁ〜やっぱり。
シンはがっくり肩を落とした。
あのアスランを見る限り、カガリは常に身近においておきそうだもんな・・・。
「生徒会・・・」
シンはつぶやいていた。
「入りたいのか?」
レイはすかさず聞いてきた。
「いや・・・そういう・・・」
そのときシンの頭に1つの考えが浮かんだ。
それでなくてもカガリと会える機会は少ないはずだ。
何とかして機会を作りたい!!
カガリのためにこの学園に入学してきたのだ。行動を起こさなくては意味がない。

シンはアスランが青海中学にお礼参り(?)に訪れた日から今まで以上に猛勉強していた。
両親からは何かが乗り移ったのではないかと言われるぐらいだ(ちょっと酷いが)
試験当日は緊張で顔が引きつっていたが、いざ試験を受けてみると、なんなく問題が解けた。
レイの作ってくれた問題集とほとんど同じ内容だったからだ。
レイには感謝してもしきれないな・・・
と思い、とりあえずプラモデルをお礼に渡してみたが・・さてどうなったのか・・・

「生徒会って入れるのか!?」
シンは思いっきり笑顔でレイに聞いた。
「6月に選挙があるがだいたい前年から引継ぎが多いみたいだな 3年が卒業した分2人ぐらいじゃないか?」
それを聞いてシンの顔は更に喜んだ。
じゃあ、カガリもまた生徒会に入るよな。あいつもいるだろうけど・・・
「レイ俺、生徒会に・・・」
レイに言っても仕方ないのだが意気込みを誰かに言いたくてシンが口を開いたとき

「みなさ〜ん 初めまして〜」
と、甲高いとうか、甘ったるいと言うか、うるさいというか、とりあえずあまり好ましくない声が
教室中に響いた。
声の主を見てみると、そこにはピンクの長い髪をした女生徒が立っている。
なんだありゃ・・・
その女生徒はドアの前で私はアイドルと言わんばかりのポーズを取っていた。
「私、ミーア・キャンベルです。今日からよろしくね!」
どうやらこのクラスの生徒らしい。
それにしてもきゃぴきゃぴした女だな・・(正直・・うざい)と思いつつレイのほうを見ると
さすがはレイ、動揺もなにもない、いつもの表情で本を読んでいた。
俺・・・目の前にいるのに・・・・。
シンはちょっと寂しかった。



「カガリは今年も生徒会に入るんだろ?」
アスランはポッキーを食べているカガリに話しかける。
カガリはよく食べる。
朝でも、休憩時間でも、ご飯の後でもお菓子をよく食べていた。
これだけ食べてよく太らないよな・・・
アスランはカガリの体を思い浮かべる(もちろん裸)
誰にもばれない程度に頬が赤くなるのを自分だけ感じた。
「へ?」
学年が変わっても生徒会には入ったままだと思っていたカガリは抜けた声を上げる。
「ああ、去年カガリが入れたのはちょうどやめた子がいたからなんだ」
カガリが転校してくる以前、生徒会で会計をしていた子がいたのだが、どうも自分目当てだったらしく、
業務はこなさないし、いっつもひっついてくるし、アスランは我慢の限界が来てその子をやめさてたのだ。
いていないようなものだったのでやめさせても困るわけでもなく、後任をわざわざ探さなくても
自分たちでできるだろうと空席になっていたのだ。
「え・・・選挙とかあるのか?」
「あるよ」
カガリは一気に血の気が引いた。
選挙と言えばその人が自分たちの代表と認められるかられないかを判断するものである。
判断されなかったらどうしよう。
カガリの頭にはそれが渦巻いていた。
ポッキーを口にくわえたままぶらぶらと揺らしている。
と、カガリの顔に影がかかる、次の瞬間アスランの顔がカガリの目の前にあった。
驚いて眼を見開くと、アスランはぱくっとカガリの咥えているポッキーを咥えた。
カガリが固まっていると、アスランはにっこり微笑んでポッキーをかじり
「大丈夫だよ。カガリなら」
と優しく言ったが、硬直しているカガリにはアスランのその声は届いていなかった。
カガリは自分の状況を理解すると真っ赤になって俯いてしまう。
アスランはそんなカガリを可愛いな・・と思いながらうれしそうに見つめていた。

「そっくりなのよ!!その1年生!」
アスランとカガリの隣でミリィとラクスがなにやら話している。
気にしなければいいのだが、ミリィの驚きようがすごかったので2人はつい聞き耳をたてた。
「顔はちょと違うけど、髪の色とか髪型とか!」
「そうなんですの?」
「あれってラクスの真似してるのかな?だって、ラクスって人気じゃない」
カガリはミリィの「ラクスの真似してるのかな?」という言葉にピクリと反応した。
似てる・・・ラクスに?
「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
カガリは大声で叫びながら立ち上がった。
「私も見たんだ!朝!ラクスが2人いて!!気のせいかなって!!」
「カガリ・・・落ち着いて話せよ・・」
アスランはカガリのめちゃくちゃな文に突っ込みを入れた。
「カガリもラクスに似た新入生見たの?」
「ああ。なんか、あっちにもこっちにもラクスがいてさ・・・」
なんだ幻覚じゃなかったのか。
カガリは自分の頭がおかしくなったのではないと知り、少しほっとした。

「ねえ、ちょっと見に行かない?」
「え?」
ミリィは好奇心マンマンの目でそういった。
「だって私も遠めに見ただけなんだもん 見たいじゃない」
「私は遠慮いたしますわ 騒ぎになると困りますし」
確かにラクスが2人現れたら騒ぎになるよな・・・
「じゃあついていくよ」
「え!?」
アスランはカガリのその言葉に声を上げる。
「なんだ?」
「・・・いや・・・」
1年というのが気に入らないが、ミリィもいるし、奴は同じクラスではないだろうと
「行ってこいよ」
と、送り出した。

カガリとミリィは1年の教室へと向かった。
クラスは知らないが、ラクスにそっくりと言うのならすぐに見つかるだろう。
まずA組を覗く。
ミリィはこっそりのぞく為なんとも怪しい格好をしている。
中腰になり、窓のサッシに手をかけ覗き込む。
廊下を歩いている人から見たらバレバレだ。
だがカガリは違った。
ガラッと思いっきりドアを開け、中にいる生徒に見られているのも気にせずきょろきょろ見回していないことを
確認するとガラっと戸を閉めた。
「カガリ・・・」
ミリィはあまりのすごさに尊敬した。
「いない。次だ」
ミリィのそんな気持ちは微塵も知らずさっさとB組へと向かう。
ガラッ
B組でもカガリは迷うことなく扉を開ける。
辺りを見回すとピンクが目に入ってきた。
「「あ!!」」
発見したことに声を上げるとなぜかその声がダブっていた。
「カガリ!?」
ダブった声を不思議に思うと、聞き覚えのある声がする。
呼ばれた方へ振り返るとそこにはシンがいた。
「シン!!どうしたんだお前!?」
お目当てのピンクばかりが頭のなかに入っていた為、シンがいることに驚き、失礼な言葉を投げかける。
「どうしたって・・・・入学できたんです・・・それに朝だって会ったじゃないですか・・・」
カガリの言い方にシンはふてながら言う。
なんだよ・・・そんな言い方ないじゃんか・・・
シンがそう思った瞬間
「そっか!受かったのか〜よかったな〜うれしいぞ!」
カガリは満面の笑みでそう言ったため、シンのふてた顔は一気に笑顔へと変わった。
「どうしたんですか?1年の教室に来るなんて?」
シンはうきうきした気分で話しかける。
本当はどうして来たかなんてどうでもいい。だが、話を膨らませたいのだ。
「ラクスにそっくりな子がいるっていうから見に来たんだ」
「ラクス?」
ほらっといいながらカガリはミーア・キャンベルの方を指差した。
それを見たミーアは
「私・・貴方に指を指される覚えありませんわ」
と、敵意丸出しの態度で言った。
シンはミーアを見てああ!と納得する。
そういえば文化祭に来たときピンクの髪の人が歌ってたなぁ・・
シンは会場にいたときは興味がなかったため全く見ていなかったし、
ステージに上がったときもパニくってほとんど周りが見えてなかったことに気づく。

ラクスのことはこの学園中の人が知っている。
ラクスは学園行事では表立って歌うが、それ以外では水面下で活動しているため、
新入生や県外から来た人は知らない人も多く、あまり騒ぎにならなかったらしい。
だが、ここの生徒ではそっくりだとかなりの噂になっている・・・らしい。
「そういえば似てるかなぁ・・?髪は同じだけど、やっぱり雰囲気は違うか・・」
カガリはミーアをマジマジと見ながら言った。
そんなカガリをミーアは睨むようにしていた。

「そんなことは置いといて、カガリは今年も生徒会に入るんですか?」
「なあシン」
カガリは急に神妙な顔をした。
シンは何か変なこと言ったかな・・と焦る。
「敬語で話さなくていいぞ なんか聞いてて変だ」
何が変なのかシンには分からない。
「名前が呼びつけなのに他は敬語だと気持ち悪い だから普通に話していいぞ、友達なんだから」
といいながら気持ち悪そうに舌を出す。
友達・・・・
カガリを恋愛として好きなシンには微妙な言葉に思えたが、当の本人は喜んでいた
友達にレベルアップ!!
こっそり後ろでガッツポーズをしているのをミーアは見ていた。

「じゃ、用は済んだし」
カガリが帰ろうと体を反転させると、思わずシンはカガリの右手を掴んだ。
「あ・・・・」
カガリは「なんだ?」という顔でシンを見ている。
「あ・・あの・・それで生徒会は?」
「ああ!入ろうと思ってるんだけど、投票があるんだってな」
そういえばそんな質問をされたな・・とカガリは思い出し答えた。
「ん〜入ろうと思ってても落選しちゃったら入れないからな〜」
えへへと、はにかんで笑ったカガリはシンのハートに火をつけた。
「カガリなら大丈夫だよ!!俺も入るから一緒に頑張ろう!!」
シンは周りの眼も気にせずカガリにラブラブな姿を振りまいていた。
「そうか!!お前も入るんだ!」
カガリは仲間ができたと言わんばかりにシンに抱きついた。
「わわわっ」
シンは喜びと恥ずかしさで慌てまくっていた。
やばい・・・まじで可愛いんですけど・・・そんなことを思いながら。

廊下ではミリィが隠れるようにしゃがんだままあちゃーという顔をしている。
「こりゃ アスランには言えないわね」
アスランのこの先を想像するとごくろうさまと言いたくなったミリィであった。






あとがき
さて、シンちゃんどう動く!?
って感じですかね〜。なんか大事件とか入れたいんだけどなぁ・・・。
シンを成長させたかったり・・・やりたいことありすぎて困っちゃいます。
計画性ないんで・・・。
でも、書いてる本人にも先が分からないって言うのは1つの楽しみですよね★