ミリィは1年の教室であったことをアスランに言わなかった。
言えるわけがない。
なのに今日のアスランはかなりの不機嫌顔だ。
前の席のカガリもアスランを見ようともせずにふてた顔をしている。
なぜこうなったのか?
それは10分前にさかのぼる。



輝く星〜青天の霹靂〜




「おはよう アスラン」
「キラ、ラクス おはよう」
「ラクス おはよう」
「カガリさん、アスランおはようございます」
アスラン、カガリペアとキラ、ラクスペアは校門のところで出会った。
時間的なタイミングが合うのか校門で出くわす確率は5分の4という高確率だった。
「今日もいい天気ですわね〜」
「そうだな これだけ晴れてると外で暴れたくなるよな〜」
暴れる・・?何して・・?
アスランはカガリの言動にいつも頭を回転させる。
こういう場合自分では使わないであろう文章を使ってくるので、その意味を知るのに少し時間がかかるのだ。
「カガリさん、今日の放課後、一緒にお買い物に行きません?」
ラクスが顔の前で手を合わせうれしそうに言った。
生徒会の仕事も学年が変わったこの時期はあまり忙しくない。
次の選挙があるまでは生徒会というのはあってないような状態だ。
「あ、僕も行きたい」
「俺も」
アスランはキラに負けじと自分も言った。
「ええもちろんですわ」
「じゃあ4人で・・・」
カガリがそう言いかけると
「わああああああああああっっ」
という叫び声が聞こえてきた。
4人は驚きながら声のしたほうを見ると、そこには掲示板の前で真っ赤な顔をして固まっているシンがいた。
「あ、シンだ」
そういうとカガリはシンのいる掲示板の方へ走っていった。
「おい!カガリ!?」
アスランは急いで止めようとしたがカガリはすでにシンのところへ到着していた。

「シンどうしたんだ?」
カガリは固まっているシンの顔を見たがすぐにシンが何かを見て固まってるのに気づき目線をシンが向けてるほうにもっていった。
そこには
「激写!!1年のシン・アスカと3年のカガリ・ユラがラブラブを披露!!
2人は去年の文化祭でであった、運命的なカップルです!!」
と、写真付で貼ってあった。
「あ・・シンと私がハートマークで囲まれてる」
カガリは見たままのことをつぶやいた。
「わわっ俺じゃないっすよ!!」
シンは自分が貼ったのではないと慌てて否定する。
「分かってるよ」
あははっと全く気にしてないそぶりでカガリは笑った。
少しは気にして欲しいかも・・・
そんなカガリを見て思わずため息が出そうになるシンだが、そのときいつものあの視線を感じた。
アスランだ。
アスランはシンに睨みをきかすと掲示板の方に目をやる。
「・・・・・・・・・・・・・なんだこれ・・・・・・・・・・・」
アスランは思いっきりの不機嫌声と顔で言った。
「誰かが遊んだんだろ?」
「剥せばすむ・・・」とカガリは言おうとしたがその前にアスランがその紙を勢いよく剥ぎ取り、
ビリビリに破いた。
「俺じゃないっすよ」
シンはアスランを睨みつけながら言った。

「カガリ 今度どこか遊びに行こうよ」
シンは先ほどとは180度違う顔でカガリに話しかけた。
こいつの前で誘ってやる!
昨日の晩シンは決めていた。男なら正々堂々勝負だ!!という意気込みを込めて。
なのに気合を入れてやってきた学園で眼にしたのはあの記事。
写真を撮られた記憶はない。撮られるほどの事か?とも正直思ったが、悪い気はしなかった。
恥ずかしいのは当然だがオレとカガリが付き合ってるみたいに書かれた記事を見るとちょっとうれしかった。

「え?でも私・・この辺、詳しくないぞ?」
カガリはその誘いに普通に答えている。
「大丈夫 俺、詳しいから だって俺たち友達だろ」
友達だ。
カガリはその通りだと思った。
せっかく誘ってくれたのに断るのも悪いと
「ああ、いいぞ」
と返したがその瞬間
「カガリ!?」
というアスランの大きな声がカガリの鼓膜に響いた。
「どうしたアスラン?お前も一緒に行きたいのか?」

なんで俺がシンと出かけなきゃならないんだ・・・・
そうじゃなくて・・・・分からないのか?
と、カガリの顔を見ると、分からない。という顔をしていた。
「2人でいこうよ!せっかくだし」
シンはアスランにまでついてこられては困ると慌てて言った。
「ん?そうか?」
カガリは何がせっかくなのかは分からないが、シンはそうしたいのだろうと同意した。
そんなカガリの態度にアスランはため息をつき、カガリを置いて靴箱に向かっていく。
「アスラン!?」
カガリはアスランを呼ぶがアスランは振り返らずに去って行く。
「シン、またな!」
そういうとカガリはアスランの後を追った。

「何怒ってるんだよ!」
「・・・・・・・・・」
アスランは真っ直ぐ前を見ていてカガリを見ようとしない。
「アスラン!!」
アスランはちらりとカガリを横目で見る。
「バカ」
そうつぶやくとさっさと教室に入っていった。
ば・・・ばかぁ・・・・・?

そして今に至るわけである。
キラやラクスから見たらアスランが怒るのも当然の気はするのだが、
カガリは自覚ナシに言っているのであって、それを責めるのもどうかと思う。
が、嫉妬深いアスランにそんなこといっても無駄なのでキラは黙ってみてることにした。
その横で、放課後のお買い物はどうしましょう・・とラクスは心配していた。


何でアスランは怒ってるんだよ?
授業中、後ろにいるアスランに疑問を投げかけたが、答えが返ってくるわけもなく、カガリはため息をついた。
友達と遊びに行くぐらいいじゃないか・・・それともそのことじゃないのかな?
それにバカってなんだよ・・・
バカなんてアスランから初めて聞いたぞ。
カガリは黒板を写しながらプンプンと怒っていた。

なんでカガリは分からないんだ?
俺が考えすぎなだけなのか?いや、シンって奴はどう考えてもカガリが好きだ。
そんなの誰が見ても分かるだろう?
そいつに誘われて遊びに行くってどうだよ・・しかも2人で・・・それじゃ・・デートじゃないか!!
そんなの喜んで送り出せるわけないだろう!!
アスランは黒板を写すのも忘れて怒っていた。


今日のお買い物は中止ですわね・・・
ラクスはそんな2人を感じ取り残念そうにため息をついた。
仕方ありません。キラと2人で行きましょう!
と、言わんばかりの瞳でキラをちらりと見た。
キラはオッケーと目配せした。



「じゃあ俺は会計を狙った方がいいのかな?」
シンはレイの机の上に座り腕を組んで言った。
「シン、行儀が悪いぞ」
レイはシンの為を思って言ったが全く聞いてないようでそのまま唸っていた。
レイはやれやれとため息をつきながら話を続ける。
「アスラン・ザラが生徒会長、キラ・ヤマトとラクス・クラインが副会長、カガリ・ユラが書記になるのは必須だろう
前年度からの役員はそのまま承認されることが多いからな」
「空いてる会計を狙えってことか・・・」
他に候補がでなければいいけど・・・
シンはやる気はあるものの、だからといってすべて上手くいくとは限らない。
さすがにアスラン・ザラから生徒会長の座を奪ってやろうとは思わないらしい。
当然不安もあるが、カガリと一緒にいるためだ全力で行こう!!と心に決めた。
「レイありがとな!いつも相談にのってくれて」
「気にするな」
レイは短く返事を返したが、実は彼は照れているということをシンは気づいていた。
レイとは幼い頃からの友達で、この話し方なので誤解されることも多いが本当は優しくて、思いやりのある奴なのだ。
シンにとっては親友といえるほどの。
「あなた生徒会に立候補するんですの?」
シンとレイが話しているところにミーア・キャンベルがやってきた。
「あ?ああ」
何でこいつが出てくるんだ?とシンは疑問と不快感を感じたが、とりあえず質問に答える。
「ふうん・・・ねえ!あなた今度カガリ・ユラとデートするんでしょ?いつするの?」
「デート!?」
シンはその言葉に飛び跳ねるように言った。
「男と女が2人で遊びに行くって言ったらデートでしょう!」
「そ・・そうかな?」
「そうよ!で、いつ?」
「え?まだ決めてないんだけど、今度の土曜に誘おうかなって・・」
シンは頭をかきながら照れたように言った。
「そ、がんばってね」
そういうと、ミーアはさっさと去っていった。
なんだ?何がしたかったんだ?
シンは訳のわからないミーアの行動を不思議に思った。
その横で「踊らされてるぞ・・・」と、レイは何かを感じ取っていた。



放課後になるとアスランはカガリを置いて生徒会室に向かった。
「え?行ってもすることないでしょ?」
キラはとりあえず言ってみたが
「俺にはある」
と、予想通りの答えが返ってきた。
カガリはそんなアスランをふてたようにして見ていた。
なんだよ・・しつこいなあ・・・
・・・・・・・・・・・・・誤った方がいいのかな・・・・・・・・・・?
カガリはあまりに怒りの収まらないアスランを見て自分も怒っていたのだが、そのうち自分が悪いのか?という方向に
考えが変わっていった。
でも、何が悪いのかは分かっていないのだが・・・
・・・・・・・今日は帰ろ・・・・・・・・
本日の結論はこうだった。
「ラクス・・」
鞄に荷物を入れているラクスにカガリは声をかける。
「ごめん 今日は・・」
「ええ また今度、4人で行きましょうね」
ラクスはカガリが気にしないよう、にっこり微笑んだ。
「ありがとう!」
ラクスの気遣いがうれしかったカガリはラクスの手を握りそう言った。

カガリはトントンと階段を下り、靴箱に向かって歩いていた。
「カガリ!!」
そのとき誰かに呼ばれ足を止める。
「ひょっとして今日、生徒会ないの?」
シンだった。
シンはカガリが1人なのにも喜んだが鞄を持って向かっている方向が靴箱ということに更に喜んでいた。
「一緒に帰ろうよ」
「ん・・いいぞ」
ちょっとそんな気分でもなかったのだが、1人でいるより気がまぎれるかもしれないと、承諾した。
2人が一緒に靴箱の方へ向かって行った後ろで跳ねるようにして生徒会室に向かう女生徒がいた。

頭痛い。
アスランは生徒会室で1人考えていた。
カガリが俺のこと好きなのは分かってる・・・俺もカガリが好きだし・・・・
なんでキラは平気なんだろう・・・
と、方向違いの考えへと向かっていったがあながち間違ってない。
ラクスは昔からかなりモテる・・らしい。
俺は・・まあ・・可愛いのかもしれないとは思うんだが・・・
通学途中でラクスに告白する奴もかなり見てきた。(俺たちがいるのに)
その度にキラは黙ってラクスの答えを聞いていた。
しつこい奴には自分が彼氏だといっていたが、そんなことが多々あっても、キラは不安な顔1つしない。
隠してるのか?
それとも自信があるのだろうか?
そんなことを考えていると部屋の扉が開く音がした。
アスランはカガリかと思いすぐにドアの方へ顔を向けた・・・がそこにいたのは知らない女生徒だった。
「こんにちわ」
ピンクの髪をふわふわ揺らして少女はにっこりと挨拶をした。
あれ・・なんかラクスに似てるな・・?
ラクスに似てる?
ああ!これが例の子か?
アスランは少女を見つめながら考えている。
「私 1年のミーア・キャンベルと申します」
声は違うものの話し方はラクスそっくりだ。
「生徒会にすごく興味がありましてぜひお話を伺いたいと来ましたの」
だが、ラクスはこんな媚びたような話し方はしないな・・・
「入っても宜しいですか?」
ってもう入ってきてるじゃないか・・・
欝になってるところに入ってきた妙な来客にアスランは眉をひそめる。
「ああ」
だが、生徒会に入りたいとやってきた生徒を断ることもできずそう答えた。
ミーアはその言葉を聞くと走るように窓に近づいた。
「まあ 噂のアスカとユラさんが一緒に帰ってますわ」
「!?」
ミーアが窓の外を見たとたん発した言葉にアスランは思いっきり反応した。
カガリとシン!?
アスランは勢い良く立ち上がり、窓に張り付くようにして下を見た。
そこにはカガリとシンが仲良く下校している姿がある。
「私、アスカと同じクラスですの この間もユラさんが教室にいらして、アスカと仲良くお話してましたのよ」
どう考えてもミーアの行動はおかしなものがある。
しかし、カガリとシンが一緒に帰っている姿を見たアスランにはそんなことを気にする余裕などなかった。
「どうかなさいました?」
「え・・?いえ・・・」
アスランはミーアの言葉に我に返り、椅子に座りなおした。
ミーアはそんなアスランの姿を満面の笑みで見ている。
「土曜日もデートするとおっしゃってましたわ」
「は?」
アスランは思わず大きな声を上げる。
デート?ああ・・朝言っていたやつのことか・・・
「私たちも土曜日にデートしませんか?」
「・・・・・・・・・・・・・・は?」
ミーアのいきなりのお誘いにアスランは驚く。
「実は私、あなたの婚約者なんですの」
アスランはその言葉を聞いたとたん頭が真っ白になり何も考えられなくなっていた。



「カガリ 遊びに行くの今度の土曜でもいい?」
シンはカガリと帰れる事に喜び、うきうきで話しかける。
「あ・・うん」
しかしカガリはというとどこか上の空である。
シンはいつもあんなに元気なカガリなのに・・・と心配になり、
「どうしたの?具合でも悪い?」
と聞いた。
「うーん・・・アスランが朝から口きいてくれなくなってさ・・・なんでか分からなくて・・・」

分かりますよ・・・俺。
シンはそういいたい気持ちだったが言うことではないので口をつぐむ。
なるほど・・・それで今日は1人で帰ってるのか・・。
いつも必ずといっていいほど側にいるのに(1年の教室に来たときはいなくてラッキーだったが)
「ケンカしたの?」
「ケンカというか・・・原因は分からないし、でも私が何かしたのかなって・・」
「そ・・・そんなことないよ!カガリが悪いわけないよ!!」
シンはカガリの辛そうな顔を見て励まそうと声を荒げ言った。
「だいたいあいつは人を見下した目で見てるから気に入らなかったんだ!カガリもあんな奴と一緒にいることないよ!」
思わず本音が飛び出る。
カガリと恋人だというのも気に入らないが人間としてもあの態度は気に入らない。
あれで生徒会長なうえ、モテるとはもっと気に入らない!
シンが怒りパワーを燃やしてる横で、カガリは口を開いた。
「ダメだぞシン!人を良く知らない状態で判断したら!」
「へ?」
シンはその言葉に怒りを忘れ素っ頓狂な声を出した。
「最初は嫌なやつって思っててもその人を知ると案外いい奴だったりするんだ」
カガリは経験済みだった。
イザーク。
最初は感じの悪い奴だったが(うるさいし)いざ、一緒に活動を共にしてみると、以外に気の使い方は上手いし、
親切なところもある。
卒業式の日、生徒会役員1人1人をまわって挨拶もしてくれた。
「いい奴だったんだ・・・あいつ・・・」
カガリは少し遠い眼をした。
「何?死んだの?」
「アホか!生きてるよ!!」
カガリのその表情に思わず口に出してしまったシンだが、カガリはうまいことつっこみを入れてくれた。
「卒業しちゃった3年のイザーク。生徒会の副会長をしてたんだ」
「へえ・・・」
カガリから自分の知らない男の名前が出たことにシンはむっとする。
「でも・・そうだよな」
アスランは気に入らないが、人というものは深く関ってみないとその人のことを知ることはできないのだ。
シンはそれには納得したが、アスランにだけは深く関っても無理だ・・・と思った。






あとがき
ミーアの攻撃開始!!
それにしても扱いにくいなぁ・・ミーア・・
もっと扱いやすいと思ったんだけど大変だ・・これから。
ちなみに悪っぽい役なんでミーア好きさんゴメンナサイ。
でもいい子になるでしょう(笑)
ちなみにさくらんぼは女難は嫌い。