「アスラン大丈夫か?」
「ああ」
その日、アスランは体調が悪そうだった。
朝から顔が赤いとは思っていたが、元来からの性格ゆえか顔にあまり出ていなかったため、辛そうには見えなかった。
しかしお昼を過ぎるとカガリもアスランの異変に不安を感じてきた。
「大丈夫じゃないだろ・・・はっきり言って具合悪そうだぞ」
カガリは怒ったように言う。
「ついていってやるから今日は早退しろ!」
そういうとアスランの腕を掴み席を立たせようとした、が引っ張ったその腕にカガリは逆に引っ張られた。
「おい!」
と、カガリがアスランのほうを見ると、アスランは机に伏せていた。
「だ・・大丈夫か!?」
カガリは慌ててアスランに近づく。
「・・・・動けない・・・」
「何!?」
「・・・・・カガリが一緒に早退してくれるんなら帰る」
「へ?」
「俺のいない学園にカガリだけおいとくなんてできるか・・・」
「・・・・・・おい・・・」
なんとも子供じみた物言い。
しかしカガリはやれやれといった感じで笑い
「分かったから、早退しろ。ほんとに具合悪いんだろ」
「分かった?」
「一緒に早退してやるよ」
そういうと、カガリは1人で教室を出て行った。

なんか・・・わがままなこといってるよな・・
アスランは熱のある頭を一生懸命働かせている。
実は朝から熱があるのは分かっていた。
だが、体調不良よりも自分が休むことでカガリを1人にすることのほうが嫌だった。
カガリがシンを好きになるのはありえないとは思っているが、奴も男だし、何があるか分からない。
なるべく側にいてあげたいと思うのが当然だ。
でも、本当にカガリも早退してくれるとは思わなかった。
アスランは熱の辛さから机にうつぶせているのだが、先ほどのカガリの言葉を思い出し、顔がにやけていた。



輝く星〜風邪は吉報〜




「先生の承諾もらってきたぞ」
「・・・・・・ありがと」
アスランは相変わらずうつ伏せたままだ。
ほんとに辛いんだ・・・
カガリはいつもと違うアスランを心配していたが、
そのときのアスランはまだ顔が緩んだままなのでそうしていただけだった。(確かに辛いが)


「なんか不思議な感じだよな」
「なにがだ?」
「みんなが授業してるのに私たちはここを歩いてるなんてさ」
確かに。いつも他の学生が1人や2人はいるものだが今は誰もいない。
「やっぱりタクシー呼ぶか?」
「いや、いいよ 歩けるし、カガリに支えてもらう方がうれしい」
支えるといっても腰に手を当てているだけだがアスランはうれしそうに言った。
「そっか」
「でも情けないな・・生徒会の選挙も近いって言うのに・・」
生徒会選挙は2週間後に控えていた。
俺たち4人がフラガ先生のところに用紙を持っていったとき、希望者は会計に1人来ているだけだといっていた。
嫌な予感がするが、多分アイツだろう。
アイツの行動力のすごさは感心するところがあるな。
真っ直ぐで、勝気で・・・
「いいじゃないか、今日帰って治せばすむんだし」
「ん」
カガリの声にアスランは顔を上げた。
「アスランなら大丈夫だ。私と違って何でもできるし」
カガリはアスランを見ず、真っ直ぐ前を見て瞳を輝かせている。
「私だってアスランに票を入れるぞ!」
そう笑ったカガリはやっぱり可愛くて・・・だけど・・
「立候補者には投票権はないぞ」
「え!?そうなのか!?」
「ああ」
抜けてる。(そこがまたいいんだが・・)


家に着くとすぐに布団に寝かされた。
「さて」
そう言ってカガリが立ち上がると、
「待って・・っっ」
アスランは思わず声をあげていた。
まさか・・学園に帰るのか?
確かに・・俺のせいでカガリにまで早退させたのは良くはないが・・・
カガリを見つめたまま何も発しないアスランにカガリが口を開く。
「大丈夫だ。おかゆかなんか作ってくるだけだから」
そう言ってカガリは優しく微笑んだ。
「あ・・・ありがとう・・・」
「いや」
カガリはアスランの返事を聞くと台所へ向かった。
全く・・・捨てられた子犬みたいな顔しやちゃって・・
あんな顔してたら置いて行けるわけないだろ・・。
「で・・っと・・・米はどこだ?」
人のうちというのは使い勝手がよくないものだ。
キレイに整えられているアスランの家も例外ではない。
カガリは米を探し始めた。



はぁ・・・
体が重い。
熱なんて出したの久しぶりだな・・・
・・・・暖かい・・・
キッチンからはカガリの気配がする。
その暖かさを感じながらアスランは眠りへと落ちていった。




どのぐらいたっただろうか・・・ アスランの額に感触が触れる。 冷たい?
気持ちいい・・?
「あ・・・悪い起こしちゃったか・・」
アスランはゆっくりと瞳を開く、そこにはぼんやりと誰かの姿が見える。
「誰・・・?」
寝起きのせいか声がかすれている。
「お前寝ぼけてるな・・ご飯食べるか?ちょうどできたんだ」
カガリは横においてあったお盆を持ち上げる。
アスランはその動きをボーとみていた。
ここは夢の中か?
誰かが俺を心配そうに見てくれている・・・・
何年振りだろう・・この感じ・・・
いつも1人だった。
母も父も仕事が忙しくていつもいなかった。
寂しくて、キラの家へよく行ってたっけ。
寂しいなんて言えなかった・・・
俺は1人で何でもできないといけないんだ・・・でないとみんなが困る。

「ん?どうした?アスラン」
ぼーとしたままのアスランにカガリは優しく微笑んだ。
その瞬間、アスランに胸に熱いものが流れ込んでくる。
この人は・・・
カガリはそっとアスランの髪をなでた。
俺の大事な人・・・カガリ・・・
そう思い出して見たカガリの顔は驚いてるようだった。
「アスラン・・・」
「・・・・どうした?」
カガリの驚いた顔に少し現実に戻ってきたアスランは聞き返す。
「泣いてる・・・」
泣いてる?カガリが?
カガリは泣いてない・・じゃあ・・・

「俺・・?」
軽く顔に手をやると冷たいものが頬に流れていた。
「・・・なんで俺泣いてるんだ?」
「さぁ」
カガリはそういうと、おかゆにレンゲをさし、
「ほら」
と、アスランの前に差し出した。
「辛いことがあるんなら聞くけど、とりあえず食べて元気になれ」
辛いこと?
そういえば・・昔のことを思い出していたような・・・
アスランは眉をひそめ考えた。
だが、過去のことよりいま、カガリがこうしてくれていることのほうが大事だ。
「いただきます」
と、アスランは手を出さず口を開けた。
「へ?」
アスランのその行動にカガリは「なんだ?」とばかりに声を上げた。
「食べさせて」
ニッとアスランは笑う。
「おっおっおまっ」
カガリは顔を真っ赤にし、どもり始めた。
「寝たおかげで楽にはなったんだけど、まだ体だるいんだ」
「だけど・・・あの・・・」
カガリはおかゆとアスランを交互に見る。
「看病のために来てくれたんだろ」
「・・・・・・・・うん」
恥ずかしがりながらも観念したのか、カガリは持っていたおかゆをレンゲですくった。
それをアスランの口元へと運ぶ。
アスランはうれしそうに口を開き、レンゲを口に含んだ。
「うん。美味しい」
「よかった!食欲あるんだ!」
カガリはそういって喜ぶと、どんどんアスランの口におかゆを運ぶ。
さっきまで恥ずかしそうにしていたのが嘘みたいに。
カガリ・・・スピード速い・・・熱いし・・・
といいたいところだが、カガリがあまりにうれしそうに食べさせてくれるので黙って食べていた。

「まだ食べるか?」
アスランがちらりと器の中を見ると空っぽになっていた。
「いや、もういっぱいだ」
アスランはペロっと舌を出した。
「あ、もしかして火傷したのか?」
アスランのその行動にカガリは珍しくカンがよかった。
確かに火傷をしていた。
別に痛くてたまらないわけではないのだが舌がヒリヒリとする。
「水・・・」
そういって立とうとしたカガリをアスランの手が引き止める。
「カガリが舐めて治して」
「舐めて?」
「そう舐めて」
アスランはうれしそうに微笑んでいる。
その瞬間、カガリの顔は茹でたタコ並みに真っ赤になった。
が、瞳はアスランを見ている。
ん?
いつもなら目を逸らし怒って逃げるか口をパクパクさせるのに今日は逃げない。
アスランはカガリを不思議そうに見た。
すると急に間の前に蜜色が広がった。
アスランは思わず瞬きを繰り返す。
すると、アスランの瞳に琥珀の瞳が映ったと思うと、それは瞼で塞がれ、次の瞬間、アスランの口に
暖かい感触が訪れた。
目の前にいるのはカガリ。
この感触はもちろんカガリで・・・
アスランが状況を理解しようとすると、ペロッという優しい感触にそれが中断された。
「舐めたぞ!」
その言葉に意識を戻したアスランはカガリを見上げる。
先ほどまで自分の目の前にいたはずなのにすでに立ち上がり、お盆まで持っている。
「え・・?」
カガリはキッチンへ去っていく。
今のはーーーー・・・舌をペロッと・・・
アスランはカガリの行動を思い出すと
「ぶっ・・・くっくっっ」
と、カガリに聞こえないように笑った。
舐めてくれたわけだ。
まあ、なんていうか・・・カガリらしいというか、一生懸命というか・・。
「・・もったいない・・・」
してくれるって分かってたらもっと味わえたのに。
それでもアスランの瞳はうれしそうに細められていた。
「さて」
アスランはそう言うと、自分の額に手を当てる。
熱はだいぶ下がったみたいだな・・一過性のものだったのか・・・
「カガリには責任をとってもらわないとな」
アスランはカガリのいるキッチンの方を見て言った。


「よし、洗い物終了!」
カガリは食べ終えたお皿を洗い終わり一息ついた。
・・・アスラン大丈夫かな・・・
1人でこんな広いうちに住んでると寂しくもなるよな・・
カガリは辺りを見回した。
初めてきたとき立派なマンションだなぁ・・と思ったがそれより驚いたのがここでアスランは1人で生活をしている
ということだった。
軽く見るだけでも4つは部屋があるし、キッチンも無駄に広い。
リビングなんかは私の部屋の倍はあるぞ・・・
両親は海外に行ってほとんど帰ることはないって言ってたけど、アスランは何でついていかなかったんだろう・・
そりゃあ・・・簡単にいけないよな・・日本じゃないんだから。
カガリは自問自答していた。
アスランの涙がずっと頭の中に残っている。
「気にしてても仕方ない!気になるんなら聞けばいいんだから」
カガリは気合を入れるようにいうと、アスランの寝ている部屋へと向かった。

カチャリ
扉の開く音がする。
アスランが眠っていたらいけないのでカガリはゆっくりと扉を開いた。
「起きてるよ」
「あ・・ああ」
さっきはあんなに大胆だったのに今は恥ずかしそうに目を泳がせている。
「寝てなくていいのか?」
「だいぶ良くなったよ。最近 眠りが浅かったせいかもな」
シンとミーアのことがあったせいかよく眠れない日が続いていた。
さっきはカガリがいたおかげか少ししか寝てないにもかかわらず今は、すっきりとしている。
何で泣いてたのかは分からないんだが・・・

ポンポンっとアスランはベットのわきを叩いた。
ここに座れということだろう。
カガリは少し考えた後、アスランの叩いた場所に座った。
「お前大丈夫か?」
カガリは座ったとたん真剣な表情でアスランに聞いた。
「何が?」
「何が・・ってさっきの・・その・・」
言い難そうなとこを見ると俺が泣いてたことだろう。
「俺にもよく分からないんだが、ただ・・・昔を思いだしてたのかもな」
「昔?」
カガリは心配そうに顔を覗く。
「父も母も家にいないことが多かったし、この性格だから人付き合いも苦手だし
まぁ・・・嫌な思いだってそれなりにしたよ」
「アスラン・・」
「だけど、青空学園に入って、・・カガリに会えて・・・それだけで今までの嫌なことは帳消しになったな」
アスランは愛しそうにカガリを見つめている。
「親について海外に行かなくてよかったよ」
「どうしてついていかなかったんだ?」
カガリが知りたかったことだ。
家族というのはなるべくなら離れていないほうがいい。
キラとのことでカガリはずっとそう思っていた。
仕方ないにしても・・・やはり寂しさというものはあった。
「好きなようにしろっていわれたし、まあ、面倒だったしな今更新しい環境に慣れるのも」
アスランはそう言って苦笑した。
「だけど・・・」
アスランはカガリの頬に手を添える。
「カガリに会えてよかった・・・それだけは言える」
カガリが現れてから俺の心には陽が灯ったんだ・・・

「で、この話はここまでにして、俺 カガリが欲しいの我慢してるんだけど」
「へ?」
今までの話にあまりに関連性のないことをアスランが言ってきたためカガリは口を開けぽかんとしている。
「さっきの続きしない?」
「さっき・・?」
さっき・・・
何したっけ?アスランを布団に押し込んで・・・ご飯食べて・・・食べさせて・・・
火傷・・・・火傷!!!
何に思い当たったかはカガリの顔を見ればアスランには簡単に分かった。
はい。それです。
とばかりにアスランはうれしそうにしている。

「寝てなくていいのかよ・・・」
「カガリと話してるほうが元気になれる」
「そっか・・・」
カガリは目を閉じ顔をアスランに近づけた。











あとがき
この後は裏へと続きます。
久々にアスカガラブ〜☆☆を書いた気分です。
いろんなキャラでてるんで、アスカガばっか書けないですから・・・
そこが書いて楽しいんですけどね。
アスカガだけじゃネタつきますよ・・・素人ですから・・・