シン・アスカ邸。
ここで鏡を見つめ気合を入れている男がいる。
「気合ばっちり!制服OK!」
「お兄ちゃん何してるの?」
シンは大きな声で鏡に映った自分を確認するかのように声を上げている。
「マユ、今日のお兄ちゃんはどうだ!?」
シンは気合の入ったままマユを振り返る。
「いつもと変わんない」
そういうと、マユは部屋を閉めさっさと下に下りていった。
変わんない・・・・変わんないって・・・・
制服はクリーニングに出してピシッとしてるし、髪も切りに行ったし(あんま変わらないけど)
ばっちりなはずだ!

なぜシン・アスカはこうも気合を入れているのか?
それもそのはず今日は生徒会の役員選挙の日なのだ。



輝く星〜緊張の選挙〜






「おはよう・・・ん?カガリどうしたんだ?」
いつものようにカガリを迎に来たアスランはカガリの顔色がよくないことに気づく。
「具合悪いのか?」
「違う。緊張してるんだ・・・」
カガリは玄関のドアを開けたまま呟く。
「なんで?」
アスランは全くと言っていいほどいつも通りである。
それを見たカガリはこういうしかない。
「何で緊張してないんだよ!今日、生徒会の選挙だろ!忘れてるのか!?」
「覚えてるよ」
あっさりとアスランは言葉を返した。
「大丈夫だろう・・今回は他に立候補したの1人だけだから」
「そうなのか?」
「昨日フラガ先生に聞いてきた。形だけスピーチすればいいんだよ」
アスランはそう言うとカガリを手招きしながら学園への道を歩いていく。
カガリはそれを見るとパタンと戸を閉め、小走りでアスランに追いつく。
少しの間アスランの顔を見つめたあと、
「でもすごいよな・・・」
と、カガリは口を開く。
「何が?」
「ほら、私達のクラスには4人も生徒会の人間がいるんだぞ。バランス悪くないか?」
よく考えるとおかしい。
前年はイザークとアスラン、キラ、ラクスと私。
3年が1人に2年が4人。なんというか、学年的にもバランスが悪いように思える。
「2年のときは立候補者がけっこういたんだ。」

「で、俺たちが勝った」
よく考えれば当然なのかもしれない。
アスランはこの容姿に頭脳だし、
キラは下級生や上級生にかなり好かれてるみたいだし・・(人懐っこくて可愛いらしい)
ラクスは言うまでもなくアイドル的存在だ。
では、イザークは?
「なあ、イザークはアスランに負けたんだろ?」
「ああ・・でも、俺と争わなければかなりの票をもらえただろうからな。先生が上手く計らってくれたんだ」
「ふーん」

「うるさいけど、あいつはけっこうやること上手いからな」
ほんとにうるさかったけど、あれで人には好かれやすいのだから不思議だ。
というか、自分の周りには人に好かれやすい人が集まってるよな・・・。
カガリも下級生によく声をかけられる。
気さくな性格と、スポーツ万能なところがかっこいいらしい。
かっこいい・・・というよりはやっぱり可愛いというほうが合ってると俺は思うのだが・・。

今期の立候補者が少ないのはどうせ無駄だと分かってるからではないか?
アスランは思った。
それなりにプライドの高い奴も多いから、落選なんて印は押されたくないのは当然だろう・・。
「心配しなくていいよ。みんな承認されるだろうから」
アスランはカガリの不安を取るよう、優しく微笑んだ。
「ありがとな・・」
それを読みとったかのようにカガリも微笑む。



「おい、準備はいいかー?」
体育館の舞台裏では生徒会に立候補した人たちが集まっている。
顧問のフラガは指を動かしながら人数を数えた。が、
「・・・・あれ?」
「アスラン・ザラ」
「はい」
「キラ・ヤマト」
「はい」
「ラクス・クライン」
「はい」
「カガリ・ユラ」
「はい」
「シン・アスカ」

「いないのはシン・アスカか・・・」
全員で辺りを見回すが、確かにシンの姿はなかった。

「すみません!!!!!」
そのとき、ドアから勢い良く誰かが入ってきた。
「緊張したら・・・鼻血でました!!」
そういったシンの鼻にはティッシュが詰められていた。
「アスカは血の気が多いのか〜」
フラガは場を和ますかのようにそう言った。
「まあ、緊張しなさんな、今回は立候補者が少ないからな。はっきりいって、みんな承認されるだろう」
確かにその通りだが、先生がそんなことを言っていいものなのか?とアスランは微妙な表情をした。

「どうした?ユラ お前緊張してるのか?」
フラガが見たカガリは顔は固まり、体には妙に力が入っている。
「してないぞ!」
カガリからは威勢のいい言葉が返ってくる。
・・これはカガリにとっての気合入れの方法なのだろうか・・・
誰が見ても緊張してるようだが、それを認めたら余計、緊張するのかもしれない・・・
アスランはそんなカガリに声をかけようとするが、
「そうか、ユラは選挙初めてだったな!」
フラガ先生に先を越された。
「緊張するなって!みんなの前でしゃべるだけでいいんだからさ」
「そうだよ!しゃべるだけでいいんだから!」
シンはフラガに続き声援を送る。ティッシュを鼻につめたまま。
しかし、シンの表情もカガリと大差ない。緊張しているのだろう。
「お前もきばんなよ!」
フラガはシンとカガリの頭をぽんぽんと叩いた。
『『お兄さん!!!』』
2人の間には同じ想いが流れていた。





放課後、承認の結果が出た。
承認された者は生徒会室に集まってきている。
「はぁ・・・1日中緊張しっぱなしだったなー」
結果を聞き今日、初めて笑顔を見せるカガリ。
「今回は平気だったな・・・承認だけだし」
キラはラクスと一緒の副会長なのがうれしいのかかなりニコニコだ。
「でも ほんとによかったですわ」
ラクスはみんなを圧倒させるようなスピーチをした。今の雰囲気とは全く違う高貴なものだった。
「カガリとシンだけは爆笑されてたな・・」
アスランがちらりとシンを見て言う。
「あっあれは仕方ないでしょ!1番最初だったんだから!!」
とまあ、いいわけをいっては見るが、どう考えても緊張のせいだった。

生徒会選挙・・・
結局はみんな承認されたのだが、とりあえずシンとカガリはおかしかった。
おかしかった・・というより、見事なパフォーマンスだった。
シンは歩くとき、手と足が同じように出ていたし、礼をするときマイクに頭をぶつけていた。
スピーチをはじめたかと思うと、また鼻血をだした。
自分も緊張しているのに、カガリはティッシュをシンに渡そうと走ったのだが、
つまずき・・・顔面からこけた。
そのまま動かなくなったので、俺が抱きかかえて退場。
そんなことがあった後のスピーチでカガリが冷静に出来るわけもなく、

言葉はカタコトの外人みたいになってるし、スピーチの内容を書いた紙を持っていたのだが・・なぜか字が逆だった。
しかし、内容的にはなかなかいいことを言っていた。
不思議だ・・・カガリはすごい・・・
アスランはちょっとカガリを尊敬してしまった。


「集まってるかー?」
フラガが生徒会室に入ってくる。
「えーと・・・はじめての奴はシン・アスカだけだな」
「はい」
「じゃあ、説明は俺がしなくても大丈夫だな・・生徒会長たのんだぞ」
説明といっても大したことはないのだが、形式的に活動内容などを教えておく必要がある。
しかし、1人のためにそれをやるのはフラガには面倒だった。
「え・・・」
アスランはいかにも嫌そうに返事をした。
「嫌か?」
「いえ・・・」
「じゃあ、ユラ」
と、フラガが言った瞬間
「俺が説明します!!」
と、アスランは勢いよく言った。
「オレ、カガリのほうがいいな・・・」
シンはぽそっとつぶやく。
「黙れ、俺が教える」
アスランは睨みをきかせるようにシンに言った。
「ああ、なるほどね」
それを見たフラガはこの3人の関係をすぐに見て取った。
なんとなく噂では聞いていたのだが、ほんとにアスラン・ザラとカガリ・ユラが付き合ってるとはなぁ・・
あのアスラン・ザラが・・・
フラガはアスランが1年のときも生徒会の顧問だったが、そのときの彼は
礼儀正しくて、頭の回転も良い完璧な生徒ではあったのだが、人間的に言うと、
気難しく、一線を引いているのがよく分かる生徒だった。
ところが今は思いっきり感情を出している。しかも人前で。
フラガは驚きながらもうれしい気持ちだった。
教師として教え子が成長していく姿を見れるのが楽しみでもある。
「じゃあ、よろしく頼むな」
そういうと、フラガは部屋から出ていった。が部屋からでる前に、
「お嬢ちゃんは罪作りだね〜」
と、カガリのほうを見て言った。
「・・・生徒にお嬢ちゃんはないんじゃないか?」
少し子ども扱いしすぎじゃないか?という思いをこめてカガリはフラガに言うが、
「高校生なんかまだまだ子供だよ。今のうちに子供を楽しみなさい」
片手を振りながらフラガは教室を後にした。
その言葉には深い意味も込められていたのだが、まだ若い彼らには分からないであろう・・・

「あの先生って先生らしくないよな」
みんながフラガの出て行った戸をじっと見ている中シンが口を開いた。
「私・・・思いっきり子ども扱いされた気がする・・」
カガリが頬を膨らませた。
「先生から見たら僕らなんてずっと子供なんだろうね」
「私は子供でもいいですわね。子供の時間のほうが大人の時間よりずっと短いですもの」
「そうか?」
寿命で考えたら・・・・・確かにそうかもしれない。
カガリはそれについては納得したが、子ども扱いされたのはどうもスッキリしない。

「お前らはいつまでたっても子供だな!」

「なんだとっっ・・・・・・へ?」
カガリは腹の立つ言葉に言い返そうとしたがその声に懐かしさを感じ言葉をとめる。
ん?この声は・・・なんだっけ?
「イザーク!」
「よう!アスラン」
なんと、そこに現れたのはイザークだった。
シンは誰だかわからず、ぽかんとしていたが、「イザーク」には聞き覚えがある。
「何でここにいるんですか?」
キラは驚いた様子もなく普通に話している。
「なんでって、お祝いだ。生徒会就任のな」
イザークは卒業後、県外の大学へと進学したと聞いている。
そのときに引越しもしたというが・・・生徒会の就任祝いにここまできたのか・・・?
アスランの眉のひそめ具合に言いたいことがわかったのか、
「ま、用があったんでついでだがな」
と、イザークは言った。
「ああ!!!」
そのときシンが大声を上げた。
「イザーク」・・・前年の生徒会にいたやつか・・!
「お前が新しく入った奴か?」
「・・はい・・・」
シンはカガリがイザークのことをいい奴だったと言ってたのを思い出し・・・なんとなくムカついていた。
「イザークは今何してるんだ?」
カガリは好奇心の塊みたいな顔をして聞いた。
「何って、普通に大学に通ってる」
「それだけ?」
「他に何がある・・」
カガリは何が聞きたいのだろう・・・アスランは不思議に思った。
「宇宙人と交信してるとでも聞きたかったのか?」
イザークはいたずらっぽく言う。
すると、アスラン、キラ、ラクスは氷と化した。
「んな分けないだろ〜もっと、なんか、あるかなって思っただけだよ」
カガリは大笑いしながら言った。

「イザーク先輩って・・・こんな感じの人だったっけ・・?」
「もしかしたら・・・」
「分かるの?ラクス」
「アスランから離れたことによって開放的になったのかもしれませんわね
前年はアスランに敵対心をもって生活してましたから余裕がなかったように思いますわ」
「確かに・・・」
「俺のせいみたいに言うなよ・・・」
3人はイザークに聞こえないよう、ひそひそ話している。

「ほら」
イザークはカガリに細長い紙を差し出した。
「なんだ?」
カガリはそれを受け取り、書いてある文字を読む。
「テー・・マパーク?入場券・・」
「祝いだ。5枚あるから行って来い」

「5枚・・・」
ということは・・・カガリは人数を確かめるように後ろに振り返る。
アスラン、キラ、ラクス、私、シン・・・で5人・・・。
「イザークありがと!」
カガリはイザークに向き直ると笑顔で言った。

は!?こいつと!?
え!?こいつもいるのか!?

同じ思いでアスランとシンはお互いを見合った。
しかし、イザークの好意である。
ここでこいつとは行きたくないといったらイザークに失礼だし、なにより・・・
カガリはいくだろう・・・。キラとラクスもいるのでは・・・。
シンもここでこいつとは嫌だといったところで、自分にいいことはない。
自分が抜ければWデートになるだけだ・・。

「ありがとう」
「ありがとうございます」
2人は引きつった笑顔でイザークに言った。
そんな2人の姿を見ていたイザークは「なるほどな」と、この3人の関係を読み取った。
カガリとアスランが付き合いだしたと聞いたときはまぁ・・驚きはしなかったが(アスランの気持ちは知っていたし)、
上手くいくのか?という疑問があった。
アスランはどう考えても人付き合いが苦手だ。
悪い奴ではないのは知っていたが・・・それとこれは話が別だ。
でも、今見る限り悪くはなさそうだな・・恋敵ができたみたいだが・・
イザークはちょっと大人になった心でそう思った。
イザークも2人のことは少し気になっていたのだ。
アスランには敵対心を燃やしてばかりだったが、やはり大事な仲間だった。
「じゃあな」
「もう帰るのか?」
言葉を発したのはアスランだった。
「頑張れよ」
そう言うとイザークは部屋を出て行った。


「いつ行く!?」
カガリは満面の笑みで問う。
「早く行きたいんだろ」
アスランはうれしそうなカガリを見て自分もうれしくなった。
「今度の日曜にする?土曜日はラクスがダメだから」
「何があるんだ?」
「老人ホームで歌を歌うんだよね」
カガリの問いにキラが答える。
「はい。ボランティアでいろんなホームを伺ってますの。土曜日も1時間ほど歌いに・・」
「へーラクスってすごいなぁ・・」
カガリは感心した。
ボランティアってことはお金をもらわないんだよな・・・仕事じゃないってことだ・・。
去年の文化祭でラクスと一緒に歌を歌ったとき、もちろん楽しかったが、あんなに疲れるものとは思わなかった。
ラクスは年に数回、コンサートを開いてるらしい。
もちろんあまり公にはしないが、業界の間ではかなり有名らしい。
私もラクスの歌をはじめて聞いたときは鳥肌が立った。
人を引き付ける力がすごい・・・声も姿も・・・
それがキラの彼女だもんなぁ・・・
カガリはじーとラクスを見つめ思った。
「どうかなさいました?」
「いや・・・」
カガリはにこりと微笑む。

「シンは日曜日大丈夫??」
キラがシンに尋ねる。
「え・・はい 大丈夫です!」
「アスランとカガリも大丈夫だね」
と、聞かずに決定された。
キラには分かっていたからだ。
休みの日のほとんどをカガリとアスランは一緒に過ごしている。
その2人が一緒にいくなら予定など聞かなくてもわかる。
「ああ、大丈夫だ」
アスランはそういうとシンの方に向き直る。

「シン、これが生徒会の仕事内容全般だ。読んでおけ」
アスランがシンに1枚の紙を渡す。
「聞くより読んだ方が分かりやすいだろ」
アスランはいつの間にかフラガに頼まれた説明を紙に書いていた。
「アスラン・・いつのまに作ったの・・?フラガ先生が言ったのさっきだよ・・」
フラガ先生が去ったあとも、イザークが来たりして話していたのに・・・
シンに渡された紙にはびっしりと業務内容が書かれていた。
「げっっ」
シンはそれを見て嫌な顔をする。
そこには読むのも面倒なぐらいに文字がびっしりと書いてあった。
嫌がらせじゃないのか?
シンはちらりとアスランを見る。
予想通りそこには憎いぐらいの笑顔をしたアスランがいた。
「きちんと読んでおけよ」
「分かってますよ・・」

「分からないとこがあったらアスランに聞けよ」
そんな2人の思いも知らずカガリは言った。
「カガリに聞いてもいい?前はカガリが会計だったんでしょ?」
「ん?私で分かることなら・・・」
自信はないが、それなりにやってきたし・・・
でも、アスランがよく怒ってたけど・・・違うって・・。
「俺に聞け!!」
アスランはすかさず言った。
シンにカガリを近づけたくないのもあるが、カガリに聞くということもあまり勧められなかった。
後で自分が倍以上苦労するからだ。

「さて、今日は挨拶するってことで集まっただけだからそろそろ帰る?」
話が一段落したと取ったキラが声をかける。
「ああ、そうだな」
アスランもその言葉に頷き鞄を取る。
シンがその手元を見ると、カガリのであろう鞄も手にしていた。
・・・・・・・・・・・・やな感じだ・・・
これは・・どう見てもオレへのあてつけに見える。
「アスランありがと」
アスランの手に自分の鞄があるのに気づいたかガリはそれを受け取ろうとしたが、
「持つよ」
と、アスランは笑顔で断る。
「でも・・」
「いいから」
はたから見るとなんて仲のいいカップル・・・
でいさせられるわけない!!
シンは自分の鞄を勢いよく持つと
「カガリ!一緒に帰ろう!」
と、カガリの腕を掴んだ。
「あ?ああ、よーしみんな帰ろう!」
がっくり。
カガリはシンの行動になんとも思わず、普通にみんなを誘い扉へと向かった。

くそ・・・負けてたまるか・・・

今度の日曜日は俺だって行くんだ!!
そう思い、拳を強く握りしめた。









あとがき
やっと選挙まできました(汗)
すんごく長くなってますね、学パロ。
気に入ってくださる方もけっこういて、うれしいです☆
拍手のコメントいつもうれしく読ませていただいております。
おかげでここまで書けました。
以前のを読み直せないんですよ・・恥ずかしくて・・・
いやあ・・いろいろ書いてますよね。恥ずかしい・・・
初めてこられた方は読むの大変ですよね〜長くて。
私は長い話し好きなんですよ。読み応えがあるというか・・
お次の話は・・・すごくすごく隠してUPしそうです。
隠しに行っても更に隠されてるぐらいの・・(笑)
それに関してのこと、以下反転(裏が平気な人は)
次はアスカガ裏とキララク裏が入ったお話しです。
なので、ちょっと・・さくらんぼ的に・・・恥ずかしくて隠しUPできないかも・・。
UPするときはそれについて明記しますので(汗)
私が読んで平気になれば隠しにUPするとは思うんですけど。