「バレンタイン・・・?」
「やだ!忘れてたのカガリ!!」
ミリィは身を乗り出して叫んだ。
「ミリィ、声大きいよ・・・他のお客さんに迷惑・・」
「なんてこといってる場合じゃないでしょ!!」
「カガリさんはアスランにお渡しになるのでしょう?」
ラクスがにっこりと笑いカガリに聞く。
「・・・・どうしよう・・・」
「どうしようって付き合ってるんなら渡すのが当たり前でしょ!」
「う〜〜ん・・・」



輝く星〜チョコの惨劇〜



バレンタインかぁ・・・
喫茶店からでたあと、それぞれ別れ別れに帰宅へと向かったカガリは悩んでいた。
「いい思い出ないんだよなぁ・・」
ぽそりというと、カガリは昔の記憶をたどった。


「バレンタイン?」
「そうよ!カガリってばそういうことに関心がないでしょ。でも、義理ぐらいあげてもいいんじゃないの?」
フレイはそういうと、バレンタイン特集と書かれた本を差し出した。
「私は手作りなの」
「誰に?」
「誰にって・・もう!ほんと恋に関しては疎いんだから!」
フレイは怒ったように腰に手を当てた。

「フレイ」
「あ、サイ!!」
フレイは慌てて本を裏返す。
「なっなによ!?」
フレイは眉をつり上げサイに怒鳴った。
「先生が呼んでたよ・・・」
「もう!カガリと大事な話をしてたのに・・」
そういうと、フレイは職員室へと向かった。

「・・・なぁ・・」
そんなフレイを寂しそうに見送くっているサイにカガリは声をかけた。
「なに?」
「なんでフレイはサイにいつも厳しいんだ?」
「厳しい?」
「だって、サイと話すときだけ、必要以上に怒ってないか?」
先ほどまで楽しそうにしていたのにサイが現れると不機嫌になることが良くあった。
カガリは前々から不思議に思っていたのだ。
「さぁ・・嫌われてるのかな?」
そういうとサイはその場を後にした。

ふと机の上を見ると、フレイが慌てて裏返した雑誌が置かれていた。
カガリはそれを手に取るとぱらぱらとページをめくった。

「本命には手作り、義理にはチロルチョコ」
カガリは目に付いた一文を読み上げる。
おい・・・チロルチョコは失礼じゃないのか?

「この程度のものをあげると、ブランド物のネックレスをもらえる」
・・・・・・・もらうためにあげるのか・・・?

「片想いの場合、あまりにこりすぎると引かれるかも」
手作りの意味ないじゃないか・・・

カガリは今までバレンタインにチョコをあげたことがなかった。
興味もなかったし、誰も欲しいとも言わなかった。
義理チョコなんてあげなくても友達なら問題ないだろう。
そう思っていたからだ。
いま、この本を読んで更にバレンタインの意味が分からなくなってしまった。

「カガリ〜〜!!」
そのとき、泣きの入ったフレイの声がした。
「どうしたんだ?」
「委員会の仕事がたくさん入ったの〜どうしよう・・チョコ作るの初めてで練習しようと思ってたのに〜」
フレイはカガリの席まで来ると机に伏せてしまった。
「そんなに時間がないのか?」
カガリはそんなフレイを覗き込む。
「だって、授業のあとで委員会の仕事でしょ。バレンタインまで3日しかないのに・・」
しばらく沈黙が続いた後、フレイはガバッと起き上がり、カガリの手を掴んだ。
「え!?」
カガリは、目を見開いて驚く。
「手伝って!」
「は?」
「前日にかける!カガリが手伝ってくれたらできるわ、きっと!!」
フレイの輝く・・・というより睨みの聞いた瞳にカガリは
「・・あ・・ああ」
と答えた。


そしてバレンタイン前日になり、フレイが誰にチョコを贈るのかも分からないままカガリはフレイの家を訪れた。
「材料は買ってあるの、後は作るだけ!」
それが一番大変なんだ・・・
カガリは心の中でそう思った。
カガリは料理は得意な方ではない。
何度か作ってやっと食べれるものができたが、最初は吐きたくなるような味付けだった。
最低限のことは自分でできなければ!!
その信念の元、なんとかまあまあのものが作れるようになったのだ。

「本の通りにやればできるのよね・・・」
そういいながら2人はエプロンを身につける。
「私・・・チョコなんて作ったことないぞ?」
手助けになるのだろうか・・・
カガリは少し不安を覚えた。
「これこれ・・・生チョコを作るの」
「生チョコ?」
「チョコが生なのか?」
「・・・生なんじゃない?生チョコでしょ」
「「んーー??」」
2人は本を覗き首をかしげる。

「とにかく生クリームを混ぜればいいのよ!!」
何を思ったのかフレイは自信ありげにそういった。
よく考えればこの2人が本を見て作るという細かいことをできるはずがなかった。
本人たちがそれに気づくこともなく、時間は過ぎていき・・・。

「なんで・・・こんなにごつごつしてるの・・?」
フレイは出来上がったチョコを見て顔を青ざめた。
「生クリームが足りないのかな?」
そういうと、カガリは出来上がったチョコの上に生クリームをたし、混ぜ始めた。
ありえないその行動。
ところがフレイも
「そうね・・」
と、一緒になって混ぜ始めた。
当然のことながら固まったチョコが生クリームと混ざり合うことはない。
カガリは眉をひそめた後、
「レンジで溶かそう!」
と、生クリームが妙に混ざったチョコをレンジに入れた。
「このぐらいかな?」
適当に時間を合わせレンジを回す。

チン
という音と共に蓋を開けると、そこにはドロのような物体が現れた。
「「げ・・・」」
2人はそれを見たとたん、顔がさらに青くなる。

「見・・・見た目は悪いけど、味はきっといいわよ!!」
「そ・・そうだな・・」
2人は味見をすることもなくドロのようなチョコをレンジから出すと、冷蔵庫に入れた。

「後は冷やすだけだから私だけで大丈夫よ」
「そっか?」
「ええ、遅くまでありがとう」
そういわれ時計を見ると11時をまわっていた。
「じゃあ、明日学校でな!」
「うん」



「カガリおはよう〜」
「あ、フレイおはよう!昨日のはどうなった?」
「ふふ。さっき渡してきたのサイに」
フレイはカガリの耳元でこそりといった。

サイ・・・・?
ってことは・・・・
「え!?そうだったのか!?」
「・・やだ・・ほんとに気づかなかったのね・・」
「だって、フレイはいつも怒ってるじゃないか!」

「・・愛情の裏返しよ・・でね」
フレイはカガリの前に可愛くラッピングされた箱を取り出した。
「カガリにも。手伝ってくれたお礼!昨日作ったチョコが入ってるの」
「・・フレイ・・・」
義理でもなんでも、お世話になったお礼という思いが込めてあるものは・・うれしいものだな・・
カガリは考えを改めながらその箱を受け取った。
「ありがとう!」

しかし次の日、カガリとサイの姿は教室にはなかった。



「絶対、あのチョコが当たったんだよな・・・」
家に帰ると、さっそくフレイにもらったチョコを食べたカガリだったが、そのあと、急にお腹が痛くなり、
次の日もそれが治まることはなかった。
3日ぶりに行った学校では自分と同じように少しやつれたサイの姿があったが、
フレイとは上手くいったようで楽しそうに話していた。


「あれ以来チョコは作ったことないんだよな・・・」
アスラン・・・欲しいのかな・・やっぱり・・・・

バレンタインまでは1週間。
次の日からカガリからその話を聞いたキラの恐ろしいチョコ教室が始まったのだった。











あとがき
バレンタインです★
連載中に書こうかと思ったんですが、クリスマス、正月と行事短編が続いてたのでかけなかったんですよ。
ちょっと思考を変えて、昔のカガリが出てます。
転校する前の学校ですね。
なんか・・・アスカガ以外のCPないとか言っておきながらいろいろありますね(笑)