キラの隠し事



「キラが怪しい」
すべてはこの一言から始まった。

カガリは生徒会室のテーブルに頬杖をつき、真剣な顔で言ったのだ。
「キラ先輩がどうかしたの?」
シンはカガリに聞き返す。

「夜、部屋に入れてくれないんだ!」
「ぶっっっ」
席でお茶を飲んでいたアスランが吹いた。

「夜って・・・カガリは夜キラ先輩の部屋にいつも行ってるの?」
シンはそれを横目で見るが無視して話を進める。
「いつもじゃないけど、よく行ってるんだ。ゲームしたりとか、勉強聞いたりとか」
カガリは唸る。
「ところがだ!ここ1週間は『キラ、ゲームしよう』って呼びかけても
『ごめん今ダメなんだ』って返って来るし、部屋に入ろうとすると慌てた顔してキラが部屋から出てくるんだ」

「確かに変だね」
シンも同じく唸る。

「キラにだって1人になりたい時間があるんだろ」
アスランはそういってみるもののどうもスッキリしない。

はっきり言ってキラはカガリが大好きだ。
俺への態度を見ていてもそれはすぐに分かる。
そんなキラがカガリを部屋に入れないというのは・・・

気になる・・・
アスランは同じく唸った。


「お待たせいたしました」
そこへラクスとキラが入ってきた。
3人はじっとキラを見つめる。

「何?」
その気持ち悪さにキラは声を上げるが、
3人はじっとキラを見つめたままだった。

「キラ、前年の予算資料はどこにありますの?」
「ああ、それはね」
キラとラクスは奥にある棚へと移動する。

「隠してるって事は聞いても言わないですよね」
こそりとシンが言った。
「聞いたんだけど言わなかったんだ、アイツ」
「気になるよな・・・」
アスランも会話に加わる。

3人は目を合わせにっと笑った。




「アスランさん、こっちですよー」
その晩、シンとアスランはヤマト邸にいた。
「シン」
アスランとシンは草陰に隠れるようにしてしゃがみこんだ。

「いよいよですね!」
「ところでシン、言っておくけどカガリの部屋には入るなよ」
アスランはにっこり笑う。
「カガリが入れって言ったら入りますよ」
シンもにっこり笑う。

カガリなら言いそうだ。
アスランは肩を落とす。

そもそもなんでここで怪しい格好をしてるかというと、
もちろんキラの秘密を探る為だ。

キラがカガリにまで隠し事をする理由がアスランには思いつかなかった。
もともと俺とは違い自分のことをなんでも話す性格なのでカガリにまで内緒にする
「秘密」にかなり興味があった。


「アスラン、シンー」
2階の窓からカガリの小さな声が聞こえる。
カガリは隠れるようにしている2人に気づくと、裏口の方を指差した。
アスランはそれを見ると、こくんと頷き裏口へと向かった。

かちゃっと扉が開くとそこには・・・

パジャマ姿のカガリがいた。

「バッ・・」
バカと叫びたかった。が、カガリがアスランの口を塞ぐ。
「大きな声出すなよ!」
カガリは小声で叫ぶ。

だってお前、パジャマ姿で現れるとは思ってないぞ!
しかも今はシンも・・・
アスランははっと気づき、シンに目線を向ける。

シンは真っ赤な顔をしていたが、しっかりカガリを見ていた。

「ご飯すんだらすぐに部屋にこもっちゃったんだ。」
カガリは2回へ登る階段を見て言った。

「あら、いらっしゃい」
母がカガリの後ろから覗き込む。
「お母さん、キラには内緒だぞ!」
「はいはい。何か知らないけど、頑張ってね」
母はにこりと笑うと言った。
「アスラン君と・・えっと、あなたは?」

「は、はい、カガリさんの後輩をさせていただいています!シン・アスカです!」
シンは慌てた様子で返す。
「カガリとキラがお世話になってます」

「ちょっと、世間話してる場合じゃないんだ!」
のほほんと話す母にカガリはつっこんだ。



3人はゆっくりと階段を登る。
キラの部屋の前まで行くと、アスランとシンを開いたドアの影になるよう居場所を指示した。

「キラ、いいか?」
カガリがキラに声をかける。

「カ、カガリ!?ごめん、今は・・っ」
焦ったようなキラの声。
どう考えても何かある!と、アスランとシンは思った。

「キラ、大事な用があるんだ。開けてもいいか?」
カガリにしては甘えた声。
アスランはキラにむっとする。
「ごめん、ちょっと・・」
しかし、キラはそれでも扉を開けない。
カガリのこんな可愛い声にも扉を開けないなんて・・・
アスランは更にムカつきが増す。

「キラ・・・実は・・アスランが・・・」
悲しそうなカガリの声。

は?
俺が何?
そうアスランが思った瞬間
「アスランがまた何かしたの!?」
と、キラが勢いよく扉を開け出てきた。

「なんちゃって」
カガリは出てきたキラににっこり笑うとそう言った。
と、そのとき、がしっとキラは何かに掴まれる感覚を覚えた。

ゆっくりとそちらに眼をやると・・・

「キラ先輩、隠し事はいけませんよ〜」
「ほんとに」
なぜかシンと・・・アスランの姿・・・・

「じゃ、お邪魔しまーす!」
カガリはそういうと、キラの部屋に入っていった。

「わーーーーーーーーーー!カガリ!やめてーーーーーーー!」

キラの声も虚しく、カガリはキラの秘密を目にした。
「で、なんなんだ・・・・これ?」
キラの部屋に散らばっていたのは小さな金属片やレースのリボン。

3人はここにあるものの意味がわからなかった。
しかも隠すようなものでは・・ない。


「言わない」
キラはぷいっとそっぽを向く。
アスランは転がっている金属を手に取ると
「・・・・・・・髪留め・・・?」
と呟いた。
「え?髪留めって・・女の子がつけるあれ?」
シンはアスランの手元を覗き込む。

アスランはカチッとそれを動かす。
「あ、ここで髪を止めるんだ・・・」
どれどれっとカガリもそれを覗き込む。
「あ、ほんとだ」
「確かラクスの髪留めもこんなのついてたぞ。前につけたことあるんだ」

カガリがそう言った瞬間、何かを悟った3人は一斉にキラを見た。

「だから・・・」
隠すことはできないと観念したのか、キラは話始めた。


『あ・・・』
『どうしたのラクス?』
『最近、髪留めが落ちやすくて・・・』
ラクスは髪留めを付け直す。
『ラクスはいつもつけてるよね、それ』
『はい、お気に入りなんですの。頂いたので、同じものが欲しくても手に入りませんの』
『へぇ・・・』


確かに・・この部屋に散らばっている金属はラクスの髪留めと同じ色だった。
「でも、なんで秘密にするんだよ」
「だって・・・」
「上手くできなかったのか?」
キラはアスランの言葉にしょぼんとする。

「最初はできるまでは秘密にしておきたかったんだけど、なかなかできなくてさ・・・
そのうち、できないかもしれないのにラクスにばれたら困ると思って・・・」

「お前、器用なようでけっこう不器用だもんな」
アスランの言葉にキラはため息をつく。

「じゃあ、みんなで作ればいいじゃないですか!」
輝くような瞳でシンは言った。
「そうだよな。大事なのは気持ちだ。私たちが協力しても大丈夫だろ」

カガリ、大丈夫だけど、君が手伝うと恐ろしいことになりそうだよ・・・
「俺が教えるから、キラできるな?」
キラの心を代弁するかのようにアスランは言う。
「うん。ありがとう・・・」

「このリボンはどうしたんだ?」
カガリは落ちているリボンを拾った。
「いや、ほんとに無理だったら違うの作ってプレゼントしようかと思って・・・」
ラクスに似合いそうだったから・・・



その後、アスランの厳しい指導の下、キラは何とか髪留めを作り上げた。
「ちょっと歪な感じもするがいいだろ・・・」
アスランは出来上がった髪留めを見て言った。
「ねえ、アスラン・・・なんか怒ってない?」
「何が・・?」
アスランは冷たい瞳をキラに向けた。
「え・・いや・・」

何もしてないのにカガリに甘えたような声で呼ばれやがって!!
アスランはまだ根に持っていた。

「あれ?カガリとシンは?」
「え!?」
アスランは慌てて部屋の中を見回す。
キラに教えるのに熱中していて気づかなかった!!
最初の頃はうんうん。とか、そうか・・とか言っていた気がするのだが。

「カガリ!!」
アスランは勢いよく部屋を飛び出す。

「あ、アスラン終わったのかー?」
聞こえてくるカガリの声は・・カガリの部屋から聞こえて・・・

まさか・・・
アスランはゆっくりとドアをあける。

「終わったんですか?アスランさん」
うれしそうにお菓子を食べるシンの姿。
その隣にはパジャマ姿のカガリがいて・・・


「$kfogvcmpn;:/5%%@3#!!!!!!」

そして家中にアスランの声が木霊した。




「まあ、キラありがとうございます!」
次の日ラクスに出来上がった髪留めをプレゼントした。
「これも作ったんだ・・・似合うと思って」
キラは可愛らしいレースで作った髪留めも差し出した。

「可愛らしいですわ!本当にありがとう、キラ!」
ラクスは満面の笑みで答えた。
ラクスはリボンの方を手にすると、髪についているのを外し、リボンの髪留めをつけた。
「・・うん!似合ってるよ!」
「ふふ」


2人が微笑む空間の隣には、
むっとしたままのアスランが座っていた。
その横でカガリはアスランからもらった髪留めをアスランにつけていた。




PSカガリ様

俺につけてどうするんですか?
カガリのために、キラに作り方を教えてる間に作ったんです。
それに・・男に髪留めはどうかと思います。
あと、気軽に男を部屋に入れないで下さい。
すごく心配なうえ、ムカつきます。

アスラン

あとがき いやぁ・・短いつもりが意外に長い話になりました☆