夏休みも終わり、忙しい日常が始まる。
キラは朝早くからラクスを迎えに行き、俺はカガリを迎に家へと向かう。
日常だ。


「は?」
声の主、アスランは職員室に呼ばれていた。
「だから、最後の文化祭でしょ。せっかくだから生徒会としても何かやったらどうかな?」
提案者はフラガ先生。
全くこの人は・・・
アスランは眉間に皺をよせ話始める。

「先生、もうすぐ体育祭があるんですよ?」
「知ってるよ」
「私たちが忙しいの知ってますよね」
「もちろん」
「なら!!」
フラガは言い寄るアスランを手で落ち着くように言うと、
「だから言ったでしょ。最後だよって・・忙しいのは分かるけど、学生の時間は短いからな」
そういえば・・・
アスランの頭に1つの記憶が浮かび上がる。

『今のうちに子供を楽しみなさい』
この人は以前、そんなことを言っていた。

この人が言いたいのは自分がカガリに言ったことと同じなのだろうか?
貴重な学生の時間・・・・カガリにとっては本当に最後かもしれない。

「・・では・・・何をするか相談してみます・・・」
アスランのその返事にフラガはにっと笑った。



輝く星〜選択の期間〜




「アスランは何でもできるよね」
教室に戻るとうれしそうなキラの一声。

「何の話だよ・・」
「今、体育祭の競技、何に出るか話してるんだ!」
答えを教えてくれたのはカガリだった。

「私は何でもいけるぞ」
「カガリ運動神経いいもんね〜」
うらやましそうにミリィが言う。
「私は・・・・どうしましょう・・・」
ラクスは困っていた。
そういえば・・・ラクスは運動が得意ではない。
1年の時、リレーの選手に選ばれそうだったのをキラが笑顔でねじ伏し、2人3脚へと変更させた。
当然組んだのはキラで、上手くラクスをリードしていた。

懐かしい・・・・俺は1500Mとか、リレーとか、100Mとか、2人3脚とか・・・
あれ・・なんでそんなに出てたんだろう・・・?
アスランに疑問が沸いた。
ま、いいか・・・
結局は何でもこなすアスランにみんなが出てくれと懇願していたり、
2人3脚にいたってはクラスの女の子に無理やりやらされたりしただけなのだが、インプットされるだけの思い出ではないため、
アスランはあまり覚えていなかったのだ。

カガリと過ごした時間はすべて鮮明に覚えてるんだよな・・・
カガリがいるだけで、周りの色がきれいに見える。

「で、アスランの第一希望はなんだ?」
輝くような蜜色の髪を撒き散らしながらカガリがアスランに聞いた。
「え?ああ・・・・・・・・」
アスランは種目を書いた紙をじっと見つめる。
どれって・・・やりたいといえばカガリとの2人3脚。
それしかない。
「でもさ、今年はサクラ学園とでしょ〜競争心とかかなりでそうじゃない?」
ミリィは面白そうに言う。
「敵の規模がでかいと燃えるよな!」
「カガリ、張り切るのはいいけど、怪我しないでよ」
キラは笑いながら言った。
「分かってるよ!」
カガリはぷりっと怒ると、下を向いているラクスを見た。

「ラクスは何がいい?」
「私・・・・」
思いつめたラクスの表情、
キラは心配になり、今年も2人3脚でいこう!と心に誓ったのだが、
「リレーに出たいですわ」
と、思わぬ言葉が口から出てきた。

「「「リレー!?」」」
キラ、アスラン、ミリィは声を合わせて叫ぶ。
それもそのはず、3人はラクスが運動音痴・・・というほどでもないが、
運動が苦手なのを知っている。
それなのに自ら「リレー」を選ぶとは・・・・。

「キラとカガリさんとアスランとミリィさんと・・一緒にリレーに出たいんです!」
拳を握るようにするラクス。
「最後ですもの。私、皆さんと協力して走りたいですわ!」
ラクスの瞳には決意の炎が渦巻いていた。

「よしラクス!一緒にリレーに出よう!」
カガリはラクスの手を取り、握りしめた。
「カガリさん・・私、運動苦手ですの。でも精一杯頑張りますわ!」
「大丈夫!ラクスの分も私がカバーするし、みんないるんだ」
「そうだよ。僕も全力で頑張るよ!」
「私も頑張るわ!」
なんで・・・こんなに団結しているのだろう・・
アスランはほおけたようにみんなで手を握り合う姿を見ていた。

「アスラン?」
ラクスが不安そうにアスランを見る。
「・・・俺も頑張りますよ」
アスランはみんなの手に自分の手を添えた。


結局、
キラはリレーと2人3脚と1500M。
アスランはリレーと2人3脚と1500Mと400M。
ラクスはリレー。
カガリはリレーと100Mと2人3脚と、400Mと借り物競争。

「やっぱり・・俺多い・・・」
アスランがつぶやく。

「キラ・・私も2人3脚・・・」
「ラクスはリレーにかけるんだ!2人3脚までしたらばてちゃうよ」
「・・・その通りですわ・・・」
ラクスは少し寂しそうに言った。
「大丈夫!キラとは私と組むから!」
ミリィがラクスの顔を覗き込む。
「他の女の子は近寄らせないわ!」
そんなミリィにラクスは恥ずかしそうに微笑んだ。

「カガリ、そんなに出て大丈夫なのか?」
アスランはカガリの出る種目を確認した。
「平気。アスランの方が大変じゃないか」
「まあ・・・俺はいいけど・・・生徒会の仕事もあるんだぞ?ほんとに平気か?」

「しつこいなぁ!最後なんだ!最後の・・・」

「・・・カガリ・・・」
静まり返る教室。
確かに最後だ。
体育祭も、文化祭も今していることすべてが最後なのかもしれない・・・

「卒業しちゃったらラクスもミリィも・・・違う道を歩くんだ・・そりゃ、いつまでも友達でいるけど・・学園生活は最後になる・・・」

「カガリ、頑張りましょう」
優しく肩を叩いたのはミリィだった。
転校してきた私に優しくしてくれたミリィ。
お姉さんみたいで、頼りになって・・・
カガリの瞳が光で潤む。
「やだ!まだ卒業まであるんだからそんな顔しないで!」
「そうですわ、毎日を大切に過ごせばそれは充実した思い出になります」
「カガリ!僕はいつでも一緒だよ」
「キラ・・・みんなありがとう・・・私、幸せだなぁ・・」

喜ぶカガリをアスランは少し寂しそうに見ていた。



「そんなに出て本当に大丈夫なのか?」
アスランはため息をつく。
「え?カガリそんなにたくさん出るの?」
HRを終え、生徒会室に来たシンがカガリに問う。
「えっと、リレーと、100Mと、2人3脚と、借り物競争」
「出すぎじゃない?疲れるよ〜」
「大丈夫!楽しい疲れならいくらでもOKだ」
うれしそうに言うカガリ。

「シンは何に出るか決まったのか?」
アスランは文化祭についての山のような資料を片手に席につく。
「はい。オレ、リレーだけです」
2個ぐらいでるのが普通なのだが、クラスの人が生徒会の仕事で忙しいだろうと気を使ってくれたのだ。

「サクラ学園との合同は初めてだし、何もないといいんだが・・・」
アスランは不安を感じていた。
それでなくても全校生徒300人はいる。
当然、サクラ学園もそのぐらいいるわけで・・・600人?
何も問題が起きないといいが・・・
「大丈夫じゃない?とりあえず肩書きはエリート校なんだし」
キラはのほほんと言った。

忘れていた!!!
そういえばこの学園は県1のエリート校。
サクラ学園も同レベルである。

だから人間ができているとか、人徳があるとかそういうわけではないが・・・・・
まぁ、大丈夫か?
アスランは今から悩んでも仕方ないと、大丈夫だと思い込んだ。

「そういえばサクラ学園の学長!ワカメみたいな奴でしたよ〜」
「サクラ学園って・・・講演会のことですか?」
「はい。話しはよく分からないし、髪は長いし・・・」

絶対こいつ寝てたな・・・
4人は心の中で突っ込む。
「でも、レイはすごい感銘を受けたらしくて、個人的に話を聞きに行ったりしてるみたいですけどね」
「なら・・無駄でもなかったってことか・・」
俺は興味なかったが、誰かにとってはとてもいい経験だったのなら準備した苦労も報われる。

「とにかく話が長かったんですよね」
「話の長い学長とかって嫌われるよね」
キラは立ったままの苦痛を思い出す。
「私の前いた学校はよかったぞ。『皆さん頑張りましょう』でおわったんだ」
「それいいっすね!」
「だろ〜みんなから好かれてたんだ。文化祭のときも」

「あ、文化祭」
アスランの言葉に、カガリとシンの会話が止まる。
「どうかなさいましたか?」
「フラガ先生に今年の文化祭は生徒会として何か出し物をしたらどうかといわれたんだが」
「生徒会として?」
5人は顔を見合った。
「僕たち5人で何かするってこと?」
キラがアスランに問う。
「ああ」
「でも、クラスの出し物もありますよね」
「クラスの出し物に生徒会の出し物、生徒会の仕事・・・できるかな?」
キラは少し考え込む。
だよな・・・やっぱりきついか・・・

「いいや!私はするぞ!」
威勢のいい声はカガリ。そしてセリフは先ほども聞いたような言葉、
「最後の文化祭なんだ!生徒会としても学園の生徒としても!!」
そしてくらいつくのは
「ですわよね!多少忙しくても成せば成るですわ!」
ラクスだった。
「えっっオ、オレもやりますっっ」
「じゃあ、僕もやるよ」

「・・・決定だな」
このとき僕らはそれがどれほど大変かなんて本当のところ分かってなかったのかもしれない。



「え!?劇?」
「みたいよ。シンデレラをするんだって」
昼休み体育祭も近づき、生徒会役員は作業に追われていた。
教室に1番に戻ってきたのはアスラン。
そんなアスランにミリィが声をかける。
「劇なんて1番大変じゃないか?」
「まあね。配役も決まったみたいよ」
ミリィはにんまり笑う。
「おい・・・まさか・・・」
ミリィは自分の体で隠していた黒板を見せるかのように体を動かす。
そこには・・・

『王子・アスラン・ザラ』
『シンデレラ・ラクス・クライン』
『継母・キラ・ヤマト』
『姉1・ミリアリア・ハウ』
『姉2・カガリ・ユラ』

と、思いっきり書かれていた。
「なんで俺たちなんだ!?」
アスランは叫んでいた。
この忙しいときに、劇はいい・・だがなんで俺たちが全員主役級なんだ!

それはあなたがかっこいいからと、いなかったからよ・・・
ミリィはそう思いながらも口に出さなかった。
せめてもの報いに自分も役を受けたのだから・・・

「カガリが・・・姉・・姉って意地悪な姉・・」
似合わない!
カガリは姫役だろう・・・
「っていうか・・俺が王子!?なんで!?」
今のアスランは突っ込み大王と化していた。
「キラが継母!?あれって女性だろ!?」

「どうしたんだアスラン?」
「カガリ!」
肩を叩かれアスランは引きつった顔で振り返る。

「いや・・・文化祭で劇をやるみたいなんだが・・・」
「あれ?私たちが役になってる」
「さすがにキツイだろう?俺がみんなに・・」
「いいよ。決まったんだし、頑張ればいいんだから」
「でもカガリ・・・」
「面白そうだしな!」
カガリのその笑顔に俺は何も言えなくなってしまった。



「喫茶店?」
「はい!良いでしょう〜」
「でも僕たち料理できないよ」
「食べ物は出来合いのでいいし、飲み物を充実させれば良いじゃないですか」
シンはうきうき顔で文化祭の出し物を考えていた。
「たしかに手間はかからないな・・・」
「でしょ!」
それにカガリのウエイトレス姿見たいし。
シンはにんまりした。
「僕らのクラス、出し物は最後の方だからね、それまでに店を閉めちゃえば大丈夫じゃない?」
キラはシンの意見に賛成を示した。
「そうですわね。準備もそうかかりませんし、良いのでは?」
「私は何でもいいぞ」
全員の視線がアスランに注がれる。
「・・・じゃあそれでいこう」

こうして文化祭、体育祭の準備は着々と進んでいくのである。






あとがき

ほんと着々と進んでいきます。
出し物は悩んだんですが、分かりやすく、簡単なものにしないと私が苦しむので
シンデレラにしました。