「やったあ!!!!!」
カガリとアスランはダントツで1位だった。

「なっ・・・ちょっと・・・そんなに・・・」
キラは思いっきり息切れをしている。
「カガリ・・・はやすぎっっ・・・」
キラと組んでいたミリィも苦しそうにしゃがみこむ。

「ふふん!私とアスランの力を見たか!」
「カガリ、同じチームだから・・・」
キラに自慢しても・・
といいつつ、アスランはカガリの頭をうれしそうに撫でる。

キラたちとは大違いでカガリもアスランも余裕顔だ。

「僕がカガリと組んだらもっと早かったのに・・・」
キラはむっとする。
ミリィとが悪いとは言わないが互いが合わせようとするもののそれが空回りしてしまった。

「いや、俺とのほうが早いに決まってる!」
アスランは断言するかのように言った。
「僕だよ!!」
キラも負けじと言う。

む〜〜と睨みあう2人。

「はいはい、1位と2位だったんだからいいでしょう」
と、マリュー先生が仲裁に入った。



輝く星〜炎の体育祭〜




「ご苦労様でした、キラ」
ラクスはタオルをキラに差し出す。
「ありがと」
「では私は参りますね」
ラクスはにっこり笑うと言った。

「は?どこに??」
何の話?と聞き返すキラにラクスは拳を握り締めた。

「私、リレーにしか出ませんから・・せめて皆さんの応援だけでもやろうと応援団に入ったのです!」
ビシッと言い放つラクス。
「わーすごーい・・・」
キラはラクスのあまりのやる気に圧倒されパチパチと手を叩く。

「ラクス応援団するのか!?私もやる!」
「まあ、カガリさんもご一緒に!?」
ラクスはうれしそうに飛び跳ねた。


「おい待て待て!」
アスランはカガリの肩に手を掛け呼び止める。
「まだ出る競技が2つもあるんだぞ・・そんなことしてる場合じゃないだろ」

というのは建て前。
そういえば前のときは短いスカートをはいた女性徒がいた気がする。
男は学ランで女はチアリーダみたいな格好をしていた・・
アスランにそんな記憶が浮かび上がる。

カガリにそんな格好させられるわけがない!

「大丈夫だって!いきなり参加してもいいんだろ?」
「カガリさんなら大歓迎されますわ」
な。と、カガリはアスランを見た。
だからそういう意味じゃないんだってば・・・
会話が交わらない。
カガリといるとよくあることだ。
それが嫌とかそんなことは思わないが・・・・

「分かった!」
アスランはカガリとラクスの肩に手を置く。

カガリには何をいっても無駄だ。
この輝いた目はやる気満々。何をいっても無駄な証だ。
ならば・・・

「俺も出る!」
そしてミニスカートのカガリを守ろうとアスランはちょっとアホな決意をするのだった。

「アスランが出たら女性の方が喜びますわ」
ラクスはそんなアスランを見て微笑んだ。




「青空学園、男性の方はこちらです」
控え室に行くとカガリと別々の場所に通された。
ちょっと焦ったが・・当然だ。
目の前で着替えられるわけが無い。

「臨時の方ですよね。これをどうぞ」
そう言って渡されたのは・・・
「学ラン・・・」
初めてだな・・学ラン着るの・・・

アスランの通ってきた学校はブレザー系だった為、学ランは新鮮に見えた。



「カガリさん、これですわ!」
ラクスが差し出したのはプリーツのスカートと学ラン(上)。
「なんで上は学ランなんだ?」
「さぁ?なんでも私達の1つ上の先輩が学ランにプリーツのスカートがグレイトだかなんだか言って
着させたらしいですわ。それが意外に好評でそのまま着てるみたいです」

何がグレイトなんだか・・・・
カガリはそう思いながら学ランに袖を通した。


男女別々に応援の掛け声について説明を受ける。
オス!とかフレーフレーとか・・・
私はいいけどどうもラクスには似合わないなぁ・・・
なんて思いながらラクスを見るとラクスはふふ・・と微笑む。

そうだよな・・・リレーにしか出ないんじゃせっかくの体育祭も寂しいよな・・・


そして男女は同じ部屋に通された。
「あら、アスランですわ」
カガリはその声に反応し、アスランの姿を探す。
「どこだ?」
しかし見当たらない。

「ここだよ」
「わあっっ!」
声は目の前で聞こえた。
「え・・・あ・・・アスラン・・・?」
「なんで疑問がつくんだよ・・」

そこにいたアスランはいつもと違って・・・いや・・いつもと同じなのだが・・
なんというか・・・
かっこいい。
と思ってしまった。

「アスラン、とてもお似合いですわ」
ラクスはそういいながら少し寂しそうな顔をする。

・・・・キラがいて下さればもっと宜しかったのに・・・
いいえ!キラは私と違って他の種目にも出てるのですから、私は私で頑張らなくては!
ラクスは自分に気合を入れるよう小さく「よし!」呟く。


「気合入ってるね」
「え・・・?」
振り向くとそこには学ランを着たキラ。
「ラクスが出るんなら僕だって出たいよ」
キラは頬を少しだけ染め言う。
ラクスはぱああっと顔を明るくし、キラの腕に自分の腕を絡める。
「ラ・・ラクス!?」
キラは珍しいラクスの行動に目を丸くした。
「うれしいですわ、キラ」




そして始まる応援合戦。

高校生にもなってなんでこんなことをするんだろう・・
なんてアスランは思いながらも青空学園だけでなく、サクラ学園の気合の入れようも見事だったため、
逆に感心してしまった。

俺たちが出て行くと聞こえたのは悲鳴。
きゃーだ、わーだ・・・それはすごい。

「アスラン」
「なんだ?」
立ち位置までくるとカガリが振り向き言った。

「その・・・に・・似合ってるよ・・・」
ふてたようにそう言うカガリ。

似合う?何が・・?
しかしカガリはすでに前を向いていた。
似合う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・
アスランは自分の格好を見下ろす。

うわ・・・恥ずかしい・・・・
アスランは後ろからかすかに見えるカガリの赤い顔より赤くなった。


「フレフレ!」
楽しそうにそういいながら飛び跳ねるカガリ。

それを幸せそうに見つめる・・・なよ!
さっきから男子生徒の視線はカガリとラクスに集中していた。
キラももちろん面白くなく、指定された位置はどこへやら、
お互い大事な彼女を守るため、視線から隠すように動く。

そんな2人にも女子生徒の視線が集中していたのだが、そんなことは全くもって気づかなかった。




「「・・・・・・・・・・疲れた・・・・・・・・・・」」

応援が終わるとへたり込むキラとアスラン。

「なんだよだらしないなぁ・・」
カガリはそんな2人を見下ろすと言った。

「仕方ないだろ」
「仕方ないでしょ」

あんなに熱い視線を受けて何で気づかないのかなぁ・・・?
ラクスもカガリも一体化した空気に飲み込まれそんなことは気にもかけてなかったのだ。

「ラクス・・ゆっくり休んでよ・・・もう少ししたらリレーだよ」
「はい!」
ラクスは息は荒いなもののうれしそうに座り込む。

そのとき、パーンとスタートの音が鳴る。

「お・・800Mかぁ」
カガリはスタート地点に目をやる。
そこには今走り出した選手達が見える。

その中に金に輝く髪・・・

「ステラだ!」
カガリは叫ぶとうれしそうに手を上げる。


「ステラガンバレーーーーーーーーーーーーー!!」
大きな声で叫ぶ。
敵に声援を送る、なんとも不思議な光景だ。

ステラはそんなカガリに気づくとうれしそうに笑った。

「あ、気づきましたわ」
ステラは徐々にこちらに近づいてくる。

「ステラ!」
応援するカガリを見ていた3人は思わず・・・

「ステラさん、頑張ってくださーい!」
「がんばれよー!」
「いけー!」
と、叫んでいた。

すると、ステラはぐんぐんスピードを上げ


カガリに突っ込んだ。


騒然とする一同。

「ステラ、頑張った!」

「うん・・・」
カガリもあまりの出来事にいい言葉がでなかった。


「じゃない!ステラ、ゴールはあっちっっ」
カガリはゴール地点を指差す。
しかしステラは首をかしげた。

「ああ、もう!」
「カガリ!?」
アスランの声をかすかに聞きながら、カガリはステラの手を取り走り出していた。

「・・・・・・・・・なにやってんだ・・・・・・・・・・?」
それを反対側でシンは見ていた。

敵の手を取り先導してゴールへ向かうカガリ。
こんな不思議な光景はないだろう・・・。


「くそっっ3位だった!」
悔しそうに言うカガリ。
「カガリ・・いいんだけどね。ほんとにいいんだけど・・・君は青空学園の生徒なんだよ・・・」

キラは苦笑いしながら言った。
「へ・・・?ああ・・・そっか・・・うん。でも、いい。うん。ステラが勝ってくれるほうがうれしい」
カガリは自分自身を納得させるとステラに笑いかけた。

「ありがとう・・カガリ。一緒に走れるの楽しかった」
えへっと笑うステラにカガリは思わず頬を染める。
照れたようだ。

そんな2人を見つめるキラ、ラクス、アスラン。
「ほのぼのしてていいですわね」
「髪の色も似てるから姉妹でもいけるかもよ」

・・似てるか・・・?
アスランは首をかしげる。

それぞれ色んなことを思っていた。




そしていよいよ、ラクスおまちかねのリレーの時がやってきた。
「待ってませんわ・・・」
「誰に言ってるの?」
「いえこちらの話です」
にっこり笑うラクス。

「キラ・・・私、緊張してますわ」
ラクスは胸にそっと手を当てる。
手に平に心臓の鼓動が響く。

「ラクス、大丈夫?」
ミリィが覗き込むようにして聞く。

「はい、「「大丈夫ですわ」」
・・・え・・?
ラクスの声にハスキーな声が加わる。

「ラクス!無理しなくていいんだぞ!緊張してるならしてるっていえばいい。
私達は一緒に戦うんだ。想いをぶつけ合わなくてどうする!」

どこかの熱血教師のようなセリフ。
一同はカガリを見ている。

「カガリさん・・・」
「そうだろ。楽しいことも悲しいことも苦しいことも一緒に乗り越えるんだ、それが青春だ!!」

最後の言葉は何か違う気がしますけれど・・・
「・・・ふふ・・・」
「なっなんだよ・・」

「うれしいです。私、緊張してますの・・・でもやる気だけは十分ありますわ」

「やる気が一番大事だからそれで十分だな」

やはり、キラとカガリさんは双子ですのね。
私の心を開いてくださいます。
手を引いてくださいます・・・それがどれだけ暖かく・・・幸せなことか・・・

お2人は気づいてらっしゃらないでしょうね・・・・

「ラクス・・・」
アスランが話しかける。
ラクスがアスランを見ると、アスランは優しく微笑んでいた。

きっと、同じことを思ったのでしょうね・・・
ラクスも微笑返した。



走る順番はラクス、ミリィ、キラ、カガリ、アスラン。
ラクスの分をみんなで補うんだ!を合言葉にこの順番に決まった。
もちろん、アスランがアンカーなのは1番速いから。
それにアンカーは1週回らなければならないのだ。

カガリは手首を回したり、屈伸して体をほぐしている。
その横でラクスは固まっていた。

「ラクス、私向こう側だから」
カガリが声をかけると、どこから見ても緊張しているラクスの顔があった。
「すみません・・・さっきカガリさんが言ってくださったことはうれしいのですが・・」
やはり緊張するものはする。

「こう」
カガリはラクスの手を取る。
「ここにキラって書いて飲むんだ」
「・・・・・・・・・・キラ?人ではありませんの?」
「キラでダメだったらカガリ、それでダメだったらミリィ、それでもダメだったらアスランだ」

ラクスは自分の手をじっと見つめると、そっと手を動かした。

『キラ、カガリ、ミリィ、アスラン』
そしてそれをぱくっと飲む。

「私欲張りですの。これなら絶対効きますわ!」
笑ったラクスの顔は先程よりかなり和らいでいた。




「位置について・・・よーい」

パーン
と、リレー開始の音が響く。

まず走り出したのはラクス。
やはり緊張するのは仕方なかったが、走り出してしまえば緊張どころではない。
INコースで最初は1番だったがどんどん抜かれていく。

「ラクスー!がんば!」
「頑張れラクスー!」
仲間の声がラクスに届く。

はぁ・・はぁ・・
抜かれようが何しようがとにかく走らなければ!!
ラクスは足がもつれないように注意しながら全力で走った。

バトンがミリィに渡る。
「ミリィさんっっ」
「任せて!」

ミリィは最下位で走り出した。
ラクスは倒れこむようにコースのから出、座り込んだ。
「ラクス!よく頑張った!」
カガリは息の荒いラクスを覗き込むと、頭を撫でた。

「ま・・まぁ・・・わたくし・・・子供みたいですわ・・・」
荒い息のままうれしそうに笑うラクス。

カガリはコースへと歩き出す。

「任せろ!1番になるから」

と、ミリィがキラにバトンを渡すのが見える。
よし!
順位は3位。
さすがミリィ、見た目はそうでもないが、実はなかなか足が速い。

キラはバトンを受け取ると頭の中で何かを唱えていた。

ラクスラクスの分も僕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

そのパワーなのか、キラは1人また1人と抜かしていく。
そこでカガリの番が来た。

「カガリ!」
「よし!」
1位の人と同時にバトンが渡される。
ところが、カガリが行こうとした瞬間、体が傾いた。

え・・・?

隣の走者がバトンの受け取りに失敗し、落ちたバトンにカガリがつまずいたのだ。

ドサッッ
という音と共に、カガリはその場で倒れた。
「カガリ!?」
「カガリさん!!」

カガリはすぐに起き上がると走り出した。

ラクスの分も頑張るって言ったのにっっ
私・・・

前を見ると走者は4人。
倒れてる間に抜かれたのだ。


うっっっ・・・
悔しさと悲しさがカガリに中に溢れる。
しかし、足だけは勢いを増していた。
1人・・・抜き返す・・・
しかし、前にはすでに次の走者にバトンを渡している人が見える。

悔しい!!!!!

カガリは見えてきたアスランに胸が痛んだ。
1位で渡せたのに・・・・

ぎゅっと歯を食いしばりアスランにバトンを渡す。
が、アスランは走り出さない。

「アス・・・」

「大丈夫。1位になるから」
そういい残すとアスランは走り出した。

アスラン・・・・・


アスランはすごい勢いで走っている。

「え・・・嘘・・・」
ぐんぐんスピードをあげ、前の走者に近づく。


「アスランすごい・・・」

「まぁ・・・」

半周終えたところですでに2位。
そして1位との差もどんどん縮まっていく。



「やったあ!!!」
カガリは1位でゴールしたアスランに抱きつく。
「カッカガリ!?」
アスランはいきなりの行為に目を見開く。

「アスランありがとう!!悪かったな・・私こ倒れちゃって・・・っっ」
うれし涙なのか、悔し涙なのか・・カガリの瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。

「誰のだろうとみんなでフォローするんだろ?」

「うん!」

嬉しそうに眼を見合わせる2人に放送の声が響く。


『最後の競技になりました、借り物競争にでる人は集まってください』

カガリはその放送に「あ・・」っと声を上げる。

「カガリ・・足・・血が出てる」
アスランはカガリの足元を見た。
膝には倒れたときにできた傷跡がある。

「終わったらでいいよ」
カガリはそういうと集合場所に行こうとする。
「待って」
アスランはそれを止めると膝を曲げ、血のでているところに顔を近付ける。
「え?え??」
そしてアスランの舌がカガリの膝をなめる。

「消毒。終わったらちゃんと手当てしてやるから」
アスランはにっと笑うと立ち上がった。

「あ・・ありがと・・・」
カガリは困ったように顔を赤くしていた。
遠くから聞こえる女性との声をかすかに聞きながら・・・



「アスラン」
「なんだ?」
「カガリが大事なのも、今のは自然にしたことなのも分かってるんだけど気をつけた方がいいよ」
キラはこちらを睨むように見ている生徒を見ながら言う。
しかし女性徒の視線はカガリを追うように位置を変える。
もちろん好意的な瞳ではない。

「・・・・・・・・・」
アスランは黙る。
「アスランってやっぱり恋に関しては疎いからなぁ・・・」
キラはうなだれるように言った。

カガリとは上手くいってるみたいだけど、最近・・・アスランのファンの子の視線がきついんだよね・・・。

アスランとカガリが付き合っているのは全校生徒が知っていることだ。
だが、それでもアスランのファンは耐えない。
それなりに告白している子もいるみたいだし、
カガリに逆恨み・・じゃないけど、しないとも限らない。

ときどきなんでアスランがこんなにモテるのか不思議になる。
アスランのことは大好きだし、親友だ。
だけど、ファンクラブができるほど・・なのだろうか・・・?
人柄で言えば昔から愛想笑いはするものの人と壁を作っている。
そんなに女の子に優しいわけじゃない。

カガリと出会ってから笑うことが多くなったし、話しやすくもなったと思う・・・けど・・・あれ・・?
だからファンが増えてるのかな・・・?

キラは1人頭の中で考えを進めている。

「キラ、カガリさんの借り物が始まりますわよ」
そんなキラにラクスが声をかける。

「あ・・うん・・」
キラはラクスの指差したほうを見る。
カガリが嬉しそうに手を振っている。
キラは同じく手を振り返す。



パーン
という音が始まりの合図を送る。

「何がいるんだろうね?」
「そうですわね、ないものは書かないでしょうから」
ラクスは周りにあるものを確認した。

「それにしても変だよね」
「何がですか?」
「最後の競技ってリレーとかが多くない?普通、借り物とかって中盤で盛り上げる為に使うと思うんだけどなぁ・・」
「・・そう言われればそんな気もしますわね」
「別にいんだけどね」
「気になってしまったのですね」
「そうそう、気になるとなんか・・いつまでも気になっちゃうんだよね」
「分かりますわ」

キラとラクスはほのぼのと会話を重ねる。
アスランはじっとカガリのことを見ていた。

借りる物が書いた紙の地点までたどりついたらしく、ペラリとそれを開く。


カガリが固まった。


アスランははらはらしながらカガリの姿を見ていたがカガリの異変に気づく。
すると、後から来たほかの生徒もカガリと同じように紙を開くと固まる。

「え?どうしたの?」
カガリが止まっていることに気付いたキラは言った。
そしてそのすぐ後に聞こえてきたのは
「物じゃなくて者かよ!?」
というカガリの突っ込みのような声。

そしてその声がしたかと思うと、カガリはキラたちのほうへ向かってくる。

「あら・・なんだったのでしょう・・」
ラクスは向かってくるカガリを見ながら言った。
カガリの影がだんだん近づいてくる。

「カガリ、なんだったの?」
キラが声が届く位置まで来たカガリに問いかける。
しかし、カガリは無言でアスランの手を取る。

「え??カガリ!?」
アスランは訳がわからずカガリに手を引かれた。
「アスラン!?」
キラは横からいなくなったアスランを呼ぶ。

カガリは無言でアスランを引っ張り走る。
無言でというより必死で走っているので声がでないのだろう。

アスランはとりあえずそんなカガリについていきながらキラたちのほうを見る。
すると、
「は・・・?」
キラたちが他の走者に引っ張られていた。

なんなのだろう・・・
借り物競争だよな・・・
俺たちが借りられたのか?
アスランはそんなとこを考えながらカガリと共に走る。

すると「うわぁぁぁぁっっ」という声が横から聞こえる。
アスランがそちらを向くと・・・・・
「・・シン・・?」
シンが引っ張られ走っていた。


「シン・・・どうしたんだ・・?」
「知りませんよ!いきなりひっぱられっっおっと・・」
シンはこけそうになる。
「大丈夫か」
アスランは走っているのに余裕の表情だ。
「なんなんですか、これ!?」

「多分・・俺たちが借りられたんだ」
「は!?」
アスランはそういうと、走りに集中するように前を向く。

「じゃ」
そういうと、アスランはカガリの歩幅に合わせるように、リードするように足を速めた。
シンとぐんぐん離れていく。


はい。ゴール。

アスランとカガリは1位でゴールとなった。
2位はシン達。
4位はキラ達
10位はラクス達。

「・・・・・・・・・あれ?」
「ど・・した・・?アスラン・・・」
カガリは途切れ途切れの声で言う。

何だ・・・ここのいる人は・・・
アスランは辺りを見回す。
青空学園でつれてこられたのは俺とシンと、キラとラクス。そして、カガリもいる。
サクラ学園にいる人を見るとどこかで見た顔・・・。
「生徒会の人たちだ・・・」
カガリが言った。

体育祭が始まるまでの1ヶ月間。サクラ学園の生徒会とは多くの関わりがあった。
打ち合わせということでお互いの学園を行き来することは多々。
2園の生徒会役員がここに全員集まっているのだ。

そんなことを思っていると走っていた走者がばらばらと離れていく。
「え?なに・・・?」
キラは声を発する。
もう戻っていいのだろうか・・・?

アスランがそう思った瞬間、
『今回、青空学園とサクラ学園との合同体育祭を開くに辺り、忙しい時間を切り裂き、計画してくださった
両学園の生徒会役員様です』
という、放送が入る。

「あら・・・」
ラクスが側にいる人物を見ると、確かに生徒会役員しかいない。
「なんだっっ」
シンはみんなの注目を浴びていることに顔を真っ赤にさせた。

『生徒会の皆様、本当にありがとうございました』
周りから拍手が起こる。

なるほど、だから俺達が借りられたわけだ。
アスランは拍手はどこへやらそんなことを考えていた。

『それではこれで体育祭を終わります。皆様お疲れ様でした』





「結果発表しなかったな」
カガリは片づけをしながら言う。
「そうだね。今回は勝ち負けじゃないって言ってたね・・・」
それはそれでいいのだが、やはり言ってくれた方が勝っても負けてもスッキリする気がする・・・
全員そう思った。


「私、これ持っていって来るな」
カガリは束になったはちまきを抱き上げる。
「俺も行こうか?」
「いや、大丈夫だ」
アスランを断り、カガリは走り出す。



「これがすんだら文化祭だね・・」
「忙しいですわね・・」
それもそのはず、生徒会の仕事があるにも関らず、クラスの出し物にみんな出るのだから。
しかもラクスとアスランは主人公だ。

「喫茶店の方はどうなっていますの?」
「あ、はい」
シンはクラスの出し物が忙しくない為、生徒会でする出し物喫茶店を任されているのだ。
「食べ物の方は知り合いに頼んでるんです。それで詳しいことはその人に皆で会って決めようと思うんですけど」
シンは少しすまなそうに言う。
忙しい彼らの時間を取るのはやはり気が引ける。

「そうですわね」
しかしラクスは微笑んだ。
「出し物をすると決めたのですから後悔のないようにしないといけませんわ」
「そうだね」
キラもそれに同意する。
「今度みんなで行こう」

「はい!」
アスランの言葉にシンはうれしそうに笑った。




ギィ・・・・
倉庫の扉を開くカガリ。
「はちまきは・・・」
束になったはちまきを見つけると、カガリはそこに持っていたはちまきを置いた。

「カガリ」
後ろから急に声がかかり、カガリの体がビクッと震える。

「ああ・・・ユウナか・・・」
それはユウナだった。
カガリはそれが分かると
「なんだ?」
と聞く。

「昼間のこと」
「昼間?」
そういえば今度、家に来いとか言っていたような・・・

ユウナとは小さい頃よく遊んだいわば幼馴染だ。
彼の父親にもよく遊んでもらった。
しかし、高校へ入ると面識がなくなっていき、父が亡くなった今、ほとんど係わり合いのない人物でもあった。
だが、幼馴染というのは事実だし、別にユウナのことが嫌なわけではない。

「次の日曜でもいいかな?」
「あ・・・・・ああ・・・」
彼も彼の父親もお父さんのお葬式に出席してくれた。
そのときの自分はいっぱいいっぱいでちゃんとした挨拶もできていなかっただろう。
ならばやはり挨拶はしておかないと・・・
カガリはそこまで考えると、
「行かせてもらうよ」
と、返した。



このことが自分を苦しめることとなることも知らずに・・・






あとがき

はい。体育祭やっと終了でございます。
長かったですね(汗)こんなに長くするつもりではなかったのですが、
ステラとユウナという新しい登場人物が出てきたものでこうなったと思われます。
物語りも佳境に入ります。
こんなに連載が長い作品を読んでくださってありがとうございます。
こんなに長くなるとは全く持って思ってませんでした。
これも皆様からのお声でここまでやってこれました☆
ほんと・・・、なかったらさっさと終了してたかも。。
では、以下もおたのしみに!

ちなみに、この後に続く番外は通販の「記憶の欠片」に収録されています。。