「相変わらずでかい家だな・・・」
カガリは上を見上げ言った。
その表情には懐かしさが込められていた。

今日カガリはユウナの家を訪れていた。
体育祭のときユウナとかなり久しぶりに会い、家に招かれたのだ。
そして今日の朝、ユウナが電話をしてきたのだ。
よく電話番号分かったな・・・

キラには昔の友達に会うといってでてきた。
それは間違いではない。
正直に言ってもいいのだが、これは私のことだから・・・
キラに亡くなった父のことを話すのは気が引ける。
やっぱり・・・私を心配して気を使ってくれるだろうから・・・


ユウナとはほんとに小さい頃から遊んでいた。
父と、ユウナの父、ウナトも昔からの知り合いらしく、家族ぐるみの付き合いがあった。
だがお互いの生活が忙しくなると私とユウナが会う機会はほとんどなくなっていった。


「カガリ!待ってたんだよ」
昔と同じ、どうも頼りないような情けないような声で私を呼ぶユウナ。
「ああ、遅れたか?」
「いや、ちょうどだよ」
ユウナは腕時計に目をやる。
ユウナはカガリの前まで来ると、エスコートするようにカガリの腰に手を当てる。
「え?おいっ」
カガリはされたことのない行為に焦る。

「僕達はもう大人なんだ。これぐらい当たり前だよ」
・・・・当たり前には思えない・・・
だが、そんなカガリを知ってか知らずか、ユウナはそのまま玄関へとカガリをエスコートした。



輝く星〜残した言葉〜




「カガリちゃん、大きくなったね!」
出迎えてくれたのはウナト。
相変わらず割腹のいいおじさんだ。

「お邪魔いたします。おじ様」
カガリはペコリと挨拶する。
ユウナはそれを見てくすりと笑う。

「父上、あのカガリがここまで立派になるなんて年月というのはすごいですね」
「なんだよそれ・・・」
カガリは不満そうに返す。
「だってそうだろ?昔の君からは想像できない」
言われ、カガリは昔を振り返る。
おじさんに会った第一声は「遊んで!」や「お腹空いた!」などだった。
挨拶なんて全くしていない。
まぁ、子供だからそれは・・そうでもいいんだけど・・・

とはいえ、ユウナの発言には納得がいかないカガリだった。

「さあ、食事を用意してます。中へ」
カガリとユウナはウナトの後ろをついて歩く。

「懐かしいな・・・・」
「何年ぶりだい?」

「何年ぶりだろう・・・」
お父さんとよくここを歩いたな・・・・
父はウナトが経営する会社の研究員だった・・らしい。
飛びぬけてすごかったらしく、いろんな発明をしたらしい。
この会社は玩具などを主に製作している会社で本社は・・・どこだっけ・・・・
どっか海外にあると聞いたことがある。

・・・結局、私はよく分かっていない・・・
父がどんな仕事をしているのか、そこまで詳しく聞いたことがなかったから・・・
聞いておけばよかった・・・なんて今更思っても仕方ないけど、
もっと父と話をすればよかった・・・・
反抗期が私にもあって、その時期は父を見るだけでイライラしていた。
今思うとなぜあんな態度をとったのか分からない。
父が大好きだったのに・・・
あまりに短い時間だった。
私を実の子のように愛してくれた父・・・・

「カガリ、座って」
はっと気付くと目の前にはテーブル・・・
ユウナが椅子を引いていた。
「あ・・・ああ・・・」
カガリはゆっくりとそこに座る。
椅子がすっと前に動く・・・
緊張するな・・・昔はそこまで思わなかったけど、今は居心地が・・・よくはない。

ユウナはとなりに、ウナトは前に座る。

「あの・・・父の葬儀には来てくださって有難うございました。あの時、きちんと挨拶もできなくて・・・」

「それは当然だよ。カガリはよくやってたからね。お母様を支えるので精一杯だったんだろ見ててそれはすぐに分かったよ」
ユウナはカガリを見て優しく笑う。
「そうだよ。気にしなくていい」
ウナトも言った。

・・・ユウナも大人になったなぁ・・・
昔は何かあるたびに私の裏に隠れて偉そうに言ってたのに・・・

落ち着きはしないが、やはりここは昔よく来ていた場所だ。
空気が同じ気がする。

「お父様は残念だったね・・」
「ああ・・・早すぎた・・・」
カチャン・・
テーブルの上に料理が並べられていく。

「さあ、料理を食べよう!久しぶりに来たんだからお祝いだ!」
カガリはうれしそうに笑う。
変なところもあるユウナだったがやはり久しぶりに会うとうれしいもので、父を知っているというだけでも
懐かしさが倍増する。

カガリたちは料理を食べ始めた。




「いないのか?」
「うん。友達とごはん食べてくるって」
「誰と?」
「・・・・・・アスラン・・・・・」
キラの表情にアスランはむっと下を向く。
「いいじゃない。カガリだって前の学校の友達もいるだろうし、約束してないんでしょ」
「してないけど・・・今・・・20時だぞ」
「・・・・・・アスラン・・・・」

分かってる。
いまどきの高校生が20時ぐらい・・・・
「アスラン、久しぶりにゲームしようか?」
「嫌だ!」
ちえっ
キラは口を尖らせた。

「アスラン君〜ごはん食べて帰る〜?」
扉の外から母の声がかかる。
「あ・・でも」
「遠慮しなくていいのよ。今日はカガリちゃんのが余ってるの」

余ってる・・・?
「え?急にカガリは出かけたんですか?」
「ううん。朝には晩ご飯はいらないって言われてたんだけど、お肉1人分だけ残しても仕方ないでしょう?」
「・・・ええ・・・」
別にカガリが前の学校の子とごはんを食べに行くぐらい気にしなくてもいいのに・・・
考え込むようにしているアスランの背中をキラはため息をつきながら見た。

「降りてらっしゃい」
母はそんなキラに笑いかける。
「はーい。アスラン行こ」




「ごちそうさまでした!」
カガリは満足そうにナイフとフォークを置く。
堅苦しかったけど、それなりに美味しかったな・・・

「カガリ、この後少し僕の部屋で話さないか?」
「・・・え・・?」
ユウナと2人?
カガリの脳裏に以前の記憶がよぎる。
シンと2人で過ごした生徒会室。

「別に何もしやしないよ。これだけ人がいるんだよ〜」
ユウナは笑って言った。
確かにここには使用人やらなにやら人がウロウロしている。
「少し思い出話をしたいんだ。君の父君についてのね・・」

カガリは首をかしげる。
しかしそれを気にする様子もなくユウナはメイドを呼ぶ。
「彼女を部屋まで案内して」
「はい」
メイドはお辞儀をするとカガリの前で「どうぞ」と言った。
カガリは不思議そうな顔をしながらもメイドについて行った。



「で・・・どうなんだ?」
ウトナはカガリの姿が見えなくなると口を開いた。
「焦らないで下さい。これからですよ」
ユウナはそんなウトナに余裕の表情を浮かべる。
「彼女に残したのは確かなんだし、僕がカガリを手に入れれば全て解決でしょう」
「あぁ・・それはそうだが・・・上手くいくのか?」

「やってみせるよ。会社の為に、僕の為にね」
そう言うと、ユウナは不敵な笑みを浮かべた。




昔と変わらないんだ・・・・
ユウナの部屋に案内されるとメイドはすぐに去って行った。
ここもよく入ったことがある。
内装は変わっているが、幼い頃よくここで遊んだものだ。
ユウナの部屋には恐ろしいほどのおもちゃもあったし、窓から見える木には鳥がよく巣を作っていた。
カガリは窓に近づく。
「なんだ・・・・もう作ってないのか・・・」

「最近は裏の木に巣を作る鳥が多いんだ」
「・・・ユウナ・・」
後ろから聞こえてきた声にカガリは振り返る。

「懐かしいね。よくここから一緒にヒナをみて楽しんだものだ」
「そうだな」
「あの頃は本当に楽しかったよ」
「私もだ。ここは広いし、いろんなものがあるし」
大好きなお父さんもいた。

なんだかさっきから思い出に浸ってしまってる気がする・・・
ここには本当に久しぶりに来たし、父と共有した時間はここが一番多かったから・・・

「カガリこっちにおいで」
ユウナは向かい合って配置されている椅子を引く。
カガリは苦笑しながらその椅子に向かった。

「今、青空学園にいるんだね」
「ああ、2年のときに転校してきたんだ」
「弟君の家で暮らしてるんだって?」
「・・・まぁ・・いろいろあって・・・ユウナはなんで先生なんかしてるんだ?」
ユウナはこの会社の次期社長だ。
昔から「僕はこの会社の社長になるんだ!」と自慢ばかりしていたのに・・・
「社会勉強だよ。しきたりみたいなものらしい。他の会社に勤めるのはいい経験になるだろうって」
「でも先生なんてすごいな」
「試験もあるからね。でもまあ僕にかかればあんなもの」
相変わらずだな。
自信げ、自慢げなところも変わらない。


「君は幸せそうだね」
「・・・え?ああ毎日楽しいよ」
ユウナ両手を顎につくと言った。
「君の父上は幸せなのかな・・・・?」
呟くような言葉、カガリの表情は固まった。

「・・・どういうことだ・・・?」
「あ、いや、ごめん・・いいんだ・・・」
ユウナは焦ったように口を濁らせる。

君の父上は幸せなのかな?
カガリの頭にその言葉が木霊する。

「言ってくれ、ユウナ」
カガリはユウナをキツク見つめた。
「本当にいいんだ・・・すまない」
「ユウナ!」
カガリは懇願するように立ち上がる。

「・・・・・昔からよく言われてたんだ・・・僕と君、カガリが結婚してくれたらうれしいのにって」

・・・・・・・・・・・

「亡くなる数日前にお見舞いに行ったことがあったんだ。
そのときもカガリが心配だ。君にお願いできたらこんなにうれしいことはないのに・・・それだけが心残りだ
って言われてね・・・」

お父さん・・・・が・・・・?
カガリは表情を変えずただ立ち尽くしていた。
知らない。
そんな話聞いたことはない。
そんなこと言われたことがない・・・

「君にはいえなかったんだろうね・・・ほら押し付けになったらいけないって思ったんだろう?
でも僕にはいつも言っていたよ・・・」

「それ・・本当なのか・・?」

「嘘なんていわないよ」
カガリは相変わらずの表情だ。
「ごめんよ。言うんじゃなかったね」
「あ・・いや・・私が無理に聞いたんだし・・・」
カガリは椅子に腰掛ける。

「僕にはそれが遺言に聞こえて仕方ないんだ・・・・それに僕は・・・」
ユウナはそっとカガリの髪に触れる。
「ずっと君のことが好きだったしね・・・」

時が止まった気がした。
全てが初めて知ることで・・どうしたらいいのか、どう反応していいのかわからない。
父は・・・そんなことを思っていたんだ。
私には言わなかった。 優しさから?
でも、それが本心なら・・・

「混乱させてしまったね・・・でも、父上の言葉を君に伝えられてよかったよ・・・」
「あ・・・ああ・・・」
「もう1つ言ってもいいかな?」
「・・・なんだ?」

「僕は今も君の事を愛してるよ」



ウトナとユウナはカガリの影を窓から見送った。
送るといったのだが、歩いて帰りたいとカガリが言うのでユウナはそれに従った。

「上手くいきそうだね」
「それにしてもウズミも面倒なことをしてくれたな」
「そうだね〜カガリの結婚式に贈る・・なんて遺言を残すなんて」
ユウナはふっと息を吐く。
「だけどまぁ・・・カガリはそれなりに素材はいいしね。僕としては気に入ってるよ」
「話し方は気になるが、着飾ればセイラン家に相応しい見た目だ」
「話し方は僕が直させるよ・・セイラン家の嫁としてふさわしくね」
ユウナは小さくなったカガリの影を余裕の笑みで見ていた。





「それ僕のだよ!」
「いいじゃないですか!オレもう腹減っちゃって」
「あらあら、他にも何かお料理作りましょうね〜」
キラ家では、なぜかシンまで交えての夕食会が開かれていた。
「だいたいなんでシンがうちにいるんだよ」
「用事の帰りに寄ったんですよ。一目会いたいと思って」

「・・・僕に?」
キラはぞっとした顔をする。
「んなわけないでしょ!」
シンはエビフライを頬張った。

「・・遅いな・・・・」
アスランは先ほどから時計ばかりを見ている。
「そうね・・・カガリちゃんそんなに遅くならないって言ってたけど・・・」
時計は22時を指していた。
「・・オレその辺見てこようかな・・・」
シンが言った。
アスランは何も言わず席を立つ。

カチャ・・・

そのとき、扉の開く音が聞こえてきた。
「カガリ!?」
アスランは走るようにして玄関へ向かう。

「・・・アスラン!?」
「・・カガリ・・・良かった・・・」
カガリは家にアスランがいることに驚く。
「カガリお帰り」
「カガリ!」
キラとシンも顔を出す。
「シン・・・?」
なんでアスランやシンが・・・

「夕食ごちそうになってたんだ」
「・・そうか・・・」
カガリの表情がどことなしか硬い。
「どうかしたのか?」
アスランは心配そうにカガリの顔を見た。

「いや!前の学校の友達とごはん食べてきたんだ!話し込んじゃってさ、遅くなってごめん!」
カガリは楽しそうに笑う。
「そうか、よかったな」
「ああ!」
いい匂いがする・・といいながらカガリはリビングへと向かう。
アスランもその後をついていった。
「カガリちゃんお帰りなさい」
カガリがエビフライを見つけて嬉しそうにしている顔が目に入る。
「あらあら?食べてきたんでしょ」
母はそう言って新しいおかずをテーブルに並べた。
「だって美味しそうだから!」
「俺のあげるよ」
アスランが自分の分を差し出す。
カガリのことが気になって食事どころではなかったのだ。

「オレのも!」
「それは僕のでしょ!」
シンもカガリにエビフライを差し出した。

カガリはうれしそうにそれを見ていた。






あとがき

物語が展開していきます〜☆
いろいろあるね!