「ねぇカガリ先輩!今日お買い物に付き合ってくれませんか?」
教室に訪れたのはミーア。
「でも・・忙しいし・・・」
生徒会、文化祭の準備、ミーアも忙しいんじゃないのか?
と思いつつミーアを見る。
「ねぇいいでしょう〜」
お願いポーズでカガリを見るミーア。

「行って来いよ。たまにはいき抜きも必要だろ?」
「でも・・」
アスランは笑顔で答える。
「行ってきてくださいな。」
ラクスもそれに続いた。

「キラ先輩もいいでしょ?」
「うん。行ってきなよ」
ミーアの問いかけにキラもうれしそうに答える。

「・・・うん・・・」
なんだか・・変だな・・・?
カガリはそう思いながらもみんなの行為に甘えることにした。



輝く星〜裂かれる心〜




放課後、カガリとミーアはセンター街に来ていた。

「カガリ先輩はどんな服が好き?」
「私は動きやすいのがいいなー」
「じゃあカジュアルなの見に行きましょう!」
ミーアはカガリの腕をぐいぐいと引っ張る。

ミーアっていい子だなぁ・・・
初めて会ったと言うか・・・いろいろあった気はするけど、友達になれてよかった。

「ここなんて可愛いのいっぱいあるの〜」
ミーアは小さなお店にカガリを引っ張り入れる。
並んであるのはカラフルなTシャツやジーンズ。

「可愛い・・・」
「でしょ!私がコーディネートしてあげる」
そういうとミーアはTシャツをカガリの胸の当てていく。
こっち?こっちかな?と、首をひねりながら考えていた。
自分のことでもないのにこんなに一生懸命なミーアを見てカガリは口元が緩む。

「ミーアはどんなのが好きなんだ?」
「私?私はなんでもOKよ。とにかく気に入ればいいの、この中だったら・・」
ミーアはピンクのTシャツに大きく星の描かれたものを広げる。
「これなんて素敵でしょ!」
それは元気いっぱいなミーアにとっても似合いそうなものだった。
「うん、可愛い」
「でしょう、あ・・・っと・・・カガリ先輩は・・これ!」
ミーアが広げたのは赤いTシャツに大きく星の描かれたTシャツ。

「お揃い。ね?」
「ああ・・喜んで!」
カガリとミーアはそう言うとレジでお金を払った。


センター街には多くの店がある。

「じゃ、次はカラオケ!」
ミーアはうれしそうにカガリを引っ張る。
「久しぶりだな・・・カラオケ・・」
「ラクス先輩達と一緒に?」
「ああ・・あれはストレス発散になるよな」
「私がストレス感じたときはお洋服買ったり・・カラオケ行ったり・・おしゃべりするの」
「そっか・・」

2人はカラオケ店につくと可愛らしいアジアンの部屋を選んだ。
「中国の方がよかったかしら?」
「なんで?」
「だって、パンダのぬいぐるみが置いてあったもの」
「そうだったか?」
ここのカラオケ店ではいろんな国の部屋がある。
自分達にあったものを選べるとても楽しい場所だ。
「私はアジアン好きだな!」
「そう?なら良かった!」
ミーアは部屋の扉を開ける。

「わっやっぱり素敵!」
アジアンな部屋はいろんな装飾品が天井から垂れており、まるでお店のようだった。
ミーアはカガリをソファーに座らせると自分は椅子に座る。

「こっちの方が楽だろ?」
カガリが席を譲ろうと立ったが、
「私はこっちがいいの」
とそれを断る。

ミーアと私は声がかれるぐらい歌った。
楽しい。
嫌なことも考えないといけないことも全て忘れて歌う。

最近は毎日あのことを考えていた。
どうしたらいいか・・・
どうしたいのか・・・

カガリはやはり・・・歌いながら頭の片隅でそれを考えていた。




カーン・・カーン・・・


学園に鐘が響く。
18時を知らせる鐘の音だ。

「カガリさん・・大丈夫でしょうか・・?」
ラクスは書類をめくりながら呟く。

「でも本人が何も言わないから・・・」
「無理に聞くのも・・・なんか・・無理して笑ってる気もするし・・・」
シンはチラリとアスランを見る。
「・・・それとなく聞いてはみたいが・・曖昧な感じだろ?それも・・」
「そうなんだよねー、カガリがなんか無理してるように見えるんだけど、話してみると結構普通だし」

今日のミーアとのお出かけ。
それは彼らが仕組んだことだった。
最近カガリの様子がおかしい。
どこがと聞かれたら分からない。
だが、なんか・・・違う。

『分からないなら聞けばいいのよ!』
ミーアはそう言った。
だが隠してるのかも分からないし、あったとしたら・・・隠したいことなのだろう。
しばらく様子をみようと決めたが、やはり気になるのは気になる。
『私がカガリ先輩を元気づけてあげる!』
ミーアはそう立候補した。
『お前カガリと出かけたいだけだろ』
『そうよ。悪い?』
『え・・いや・・・』
『だって最近カガリ先輩忙しいんだもん。出かけたくても誘えないでしょ〜』
まかせて!
とウインクするミーアに生徒会一同は協力することにした。





2人がカラオケを終え外に出ると辺りは薄暗くなっていた。
「楽しかった?」
「ああ!」
「良かった」
ミーアはうきうきで帰り道を歩く。

『私がストレス感じたときはお洋服買ったり・・カラオケ行ったり・・おしゃべりするの』

ミーアは・・・私を元気付けてくれたのかな?
そんなに・・暗い顔してたんだろうか・・・

前を行くミーアをカガリはじっと見る。
「カガリ先輩」
「ん?」
ミーアはピンクの髪をふわりとなびかせ振り返った。

「私達、カガリ先輩のこと大好きですから困ったことあったらなんでも言って下さいね!」
少し照れたように・・だけど、うれしそうにミーアは言った。

うれしい・・・
私にはこんなに素晴らしい友達がいる。


頑張ろう・・・学校ではみんなを心配させないように・・・
これは私の問題だ。
自分で考えないといけない問題なんだ。





カパッとカガリは靴箱の蓋を開ける。
隣ではアスランがスリッパに履き替えていた。
「カガリ?」
パコン
靴箱を閉める音がする。
しかしカガリはスリッパを取り出していない。
「カ・・」
「そういえば家に持って帰ったんだった!先生に借りに行かないと!」
カガリは靴を脱ぐと職員室へ向かう。
「待て、カガリ!俺が借りてくるから待ってろ」
「いやいい!先に教室に行っててくれ!」
カガリはそう言いながら職員室へ走って行った。

その後姿をアスランは静かに見つめていた。



頑張ろう・・・
頑張らないと・・・
こんなこと気にしてどうするんだ?

スリッパを持って帰ってなどいない。
開けたそこには・・・ずたずたに切られたスリッパがあった。
何でこんなことをされないといけないんだろう?
文句があるなら私に直接言えばいいのに・・
だが今のカガリにはそれに反論する力はない。

「頭の中ぐちゃぐちゃだな・・・」
ユウナのことを断らなかった・・そのことがアスランに対する裏切りに思えた。
そればかりが頭にちらつく、そのうえ・・・これだ。

カガリは立ち止まる。
情けない・・・
せっかくミーアが元気付けてくれたのに・・・




「悪い、先行っててくれ!」

「すまない・・・明日は一緒に行けないんだ」

それはここ数日でカガリにいわれた言葉。
「カガリに避けられてる気がする・・・」
アスランは生徒会室でぼやく。

「そう?普通な気もするけど・・」
「・・・少し・・気になる気もしますが・・変わらないといえば・・変わりませんわね・・・」
「・・・う〜ん・・・」
3人は唸る。

「文化祭の準備ですれ違いなのはあるよね?」
確かに練習だ準備だで会う時間が少なくなってるのも事実だ。
そのせいなのだろうか?

「アスランったら24時間一緒じゃないと不安なの?」
「わっ・・ミーア・・」
キラは横から飛び出てきたミーアに驚く。
「不安というか・・一緒にいたいのは当然だろ?」
「まぁ・・・そうだけど・・」
ミーアはぴらりと書類を出す。

「生徒会長のサインがいるの」
「ああ・・」
アスランはそれに目を通すと判を押す。
「で?カガリ先輩は?」

「今はシンデレラの衣装合わせ」
「え!?シンデレラやるの?カガリ先輩!!」

「あ・・シンデレラはラクスでカガリはお姉さん役」
なーんだ・・とミーアは息を吐いた。





「これカガリの分!」
ミリィはカガリにドレスを渡す。
「うわ・・すごいなこれ・・」
「私が作ったのよ〜徹夜しちゃった」
「ミリィが!?」
ミリィが服を作れるなんて知らなかった。
しかも・・ドレスだぞ・・これ・・・

「お母さんにかなり手伝ってもらったけどね」
ミリィはウインクをする。

「今日は渡すだけになっちゃうけどごめんね」
「ああいいぞ気にするな」
本当は裾直しをする予定だったのだがミリィに用事が入ったのだ。
「じゃあ急ぐからごめんね」
「ああ!」
ピシャン・・とドアが閉る。

教室にはカガリ1人。
そっとそのドレスを開く。
「わ・・すごい・・・」
赤色を基調としたそれはところどころにレースが使われており、シンプルながら豪華だった。
自分に似合うのだろうか?
と思うが、ミリィが一生懸命作ってくれたことのほうが大きかった。

ガタンッッ
誰もいないはずの教室に物音が響く。
カガリが何だと振り返ると何かがすごい勢いで飛んできた。

「っっっ」
ぎゅっと目を瞑る。

が・・しかしなんの衝撃もない。
おそるおそる開いた瞳に見えたのは・・・

「あ・・・・・・・うそ・・・」
黒く染まったドレス。

「バーカ」
小さく聞こえたその声は女の子のもの。
床に転がっているのは墨汁の入れ物。

嘘だろ・・・
これはミリィが・・・徹夜までして・・・

カガリは慌てて教室を飛び出すと水道をひねる。
蛇口を限界までひねるとドレスをそこに当てた。
弾き飛ぶ水しぶき、
だがカガリはそんなことよりもドレスの汚れを落とすのに熱中していた。

「やめ・・・だめだ・・・これは・・ミリィ・・ッっが・・」
バシャバシャと音を立てながらドレスは水に濡れていく。

水の音はとめどなく流れ、
跳ねた水はカガリの制服をぬらしていった。

滴り落ちる水はカガリの下で水溜りとなり、そんなカガリの姿を写す。

数分洗ったところでカガリは墨汁のついた場所を光に当ててみるが、
ある程度は落ちるもののやはり薄くグレーがかっている。

「落ちろ・・・落ちて・・・だって・・・これっ・・」
カガリはまた水しぶきを上げながらドレスを洗う。

だがいくら水を当てて擦ってもそれは消えない。

「だめっっ・・みんなの・・みんなでやっっ・・・」
焦り・・ カガリは不安に押しつぶされそうになりながらドレスを洗う。

と・・・カガリの動きが止まる。
俯いた顔からはたくさんの雫が流れる。
髪から・・瞳から・・・

ジャァァァァァァァ

水が排水溝に流れていく。
その音はむなしく廊下に響いた。

ドレスからぽたぽたと雫が落ちる。
そのドレスを持つカガリの手は震えていた。






あとがき

痛くてすみません・・・・。。
痛い・・カガリが〜〜〜!!
これからの展開をお楽しみに(?)