春心地


晴れ渡る快晴を見上げる1人の男がいた。
「やっぱ日本の学校はいいよな!」

なんせ言葉が通じる!

男は気合を入れるように「よし!」と言うと校舎に向かった。


「あ、アスランおはよう」
靴箱で声をかけてきたのはカガリ。
アスランは朝から会えたその人物に顔を緩ませる。
「おはよう。昨日は・・・・」
楽しかった。そう言おうとしたがなんだか恥ずかしくなって言葉に詰まる。

「昨日は楽しかったぞ!ありがとな!」

人がまばらに見える。しかしカガリはそんなこと気にも留めず楽しかったといってくれる。
それがかなり・・うれしい・・。
アスランはカガリに微笑んだ。
足はだいぶ良くなっているのかカガリが足を庇ってる様子が見られない。


「カガリ?」
俺ではない、他の男がカガリの名を呼んだ。
アスランはその声に反応し、後ろへと振り返る。

「やっぱりカガリだ!久しぶり!!」
そこにいたのは知らないはずなのに知っている人物。
「・・・シン!?」
カガリの声が聞こえた。
そいつはカガリと一緒に写真に写っていた男だった。


「どうしたんだ!?」
「どうしたって帰ってきたんだよ」
カガリは飛びつくようにしてシンに駆け寄る。
と、すぐさま飛びついた。

「!?」
アスランはそんなカガリに驚き、目を見開く。

「相変わらずだな、カガリは」
シンは驚きも、困りもしない・・・
それは・・・慣れている行為を露にしていた。

「あ、アスラン!シンだ」
カガリは抱きついていた体を離すとアスランを見た。
「・・・・・」
胸が痛む・・・
こんなの見たくないのに・・・

「シン・アスカ!海外に留学してたんだ」
カガリはそんなアスランに気付かずうれしそうにシンを紹介する。

留学・・・・
「そうか・・・」
アスランは小さくそう言うと教室へと向かった。
「あ・・え・・?」
カガリはそんなそっけないアスランに不思議そうに声をかけたがアスランはそのまま教室へと向かった。

「・・・誰?」
シンはアスランの後姿を軽く見ていた。
「アスラン」
「同じクラス?」
「違う。キラと同じなんだ」
「キラさんと・・」

「・・なんだろ・・・」
なんか怒ってるように見えた・・・
カガリはアスランの向かった方向をじっと見ていた。
さっきまで笑ってたのに・・・

「オレ職員室行くから」
そんなカガリにシンは声をかける。
「・・ああ・・・」
カガリととシンはそこで別れた。



「知ってるよ」
キラはそれがどうかしたと首をかしげる。
「さっき・・会ったんだ・・・」
「え!?じゃあ留学から帰ってきたんだ」
「みたいだな。どういうやつなんだ?」
「さぁ?カガリと一緒にいるときに何回か会っただけでそこまで話はしてないんだ」

何回!?
ってことはそれ以上一緒にいたってことだよな!?
アスランはショックからか暗いオーラをまとっていた。

「でも彼氏とかじゃないよ?」
キラはそんなアスランを励ますかのように言う。
「あってたまるか・・」
そんなことになったら俺は落ちるところまで落ちてしまいそうだ。





教室に入るとすぐにピンクの髪が目に入ってくる。
「カガリ・・少しいい?」
声をかけてきたのはメイリン。
なぜか恥ずかしそうに机の前でもじもじしている。
「どうしたんだ?」

「えっと・・・あの・・・・」
メイリンは更に顔を赤くさせる。
「カガリってアスランさんと仲がいいの?」

「・・・仲がいいっていうか・・友達だ・・けど・・・」
なんでアスランのことがでてくるのだろう?
そうは思いつつ、カガリはなんだか嫌な予感がした。
嫌な予感というより、なんだか・・聞きたくないような気持ち・・・

「私・・・ア・・アスランさんが好き・・・なの・・・」
消え入りそうな声。
だが、しっかりと聞こえてしまった。

メイリンがアスランを好き?
ヒヤッとした。
何でだか分からないけど、背筋を冷たいものが落ちていく。

「それで、カガリにも協力してもらえないかと・・・思って・・・・」
「きょ・・協力って・・・・?」

「私もっとアスランさんとお話がしたいの・・・・近づかないと何も始らないし・・・」
どうしよう・・・・
どうしたらいいんだろ・・・
うんって言えばいいだけなのになんでだか声がでない。

「ね、お願い!!」
メイリンは手を揃え恥ずかしそうに笑う。
「・・う・・・うん・・・」
そんな顔をされれば・・・断れない。
いや、断る理由だってないだろ?

「うれしい!カガリ大好き!!」
メイリンはカガリに抱きつく。
メイリンがこんなに喜んでるんだ・・・私だって・・・うれしい・・・
カガリの顔は笑っていたが、心の中はなんだかスッキリしない。

なんだろう・・この気持ち・・心が落ち着かない・・・

「でも・・・いつからなんだ・・?」
「ほら、教科書借りに来たことあったでしょ。あのときに一目惚れしちゃったの!」
「ついこの間じゃないか!!」

「・・好きになるのに時間なんて関係ないもん」
メイリンはぷくっと膨れる。

「それはそうかもしれないけど・・・」

私はそれより前にアスランと出会ってたんだ。
私の方がアスランのこと知って・・・・・

・・・・・・・え・・・・・・・?

私は何を考えてるんだ・・・?
え?え・・・?

ちょっと待て・・・
何だこの気持ちは・・・

「どうしたのカガリ?」

「あ・・・いや・・・」


カガリはごまかすように笑うと、席へと向かった。



「あれ、カガリこのクラス?」
席へとつくと聞こえたのは・・・
「・・シン・・?」
「オレもこのクラスになったんだ」
シンはそう言ってカガリの前の席に座る。
もちろんその席は別の人のものだ。

「そうか・・・」
覇気のないカガリの声。
先ほどあったときはあんなに元気だったのに・・・。
シンは不思議に思いカガリの額をつんとつつく。
「・・なんだよ・・」
カガリはにらみをきかすようにシンを見た。

しかしシンはじっとカガリを見たままだ。

無言が続く。
心がもやもやしていて、とてもじゃないけど誰かと話す気分になれない。
シンに悪いと思いつつも笑顔など出せる心境ではなかった。

「でこっぱち〜〜〜〜」

は?


シンはにこにこしながらカガリの前髪をかき上げ軽くデコピンをした。

ボーゼンとしたままそれを見るカガリ。

「・・・・・・・・・・なんだ?」
疑問はそのまま口から出た。

「辛いことあるんなら言えよ。相談にのるし、手伝えることならやるから」
やさしいシンの言葉。

カガリは先ほどのシンへの対応が恥ずかしくなる。

久しぶりに会った友達に心配かけるなんて・・・。

「・・シン・・ごめんな」
「違う。ありがとうだろ?」

「・・うん・・ありがとう・・・」


カガリは心のもやもやを振り切るかのように笑顔を見せた。

だが、それは小さく、心の隅から消えることはなかった。