俺は何でこんなところにいるんだろう・・・
カガリのことは信用している。
俺はカガリは好きだし、カガリも俺のことが好きだ。
なら何も心配することないじゃないか。
だが、カガリはあの性格だから、はっきり言って心配だ。
これは気持ちの問題ではなく、俺の理性の問題かもしれない。



輝く星〜陰る月の光〜



青空学園2年、アスラン・ザラは青海中学の校門前に来ていた。
はっきり言ってやるだけだ。
放課後、アスランはシンに会おうとここまできていたのだ。
イザークには怒られたが生徒会の仕事よりも今はこっちの方が大事だ。
しばらくそこに立っていると黄色い悲鳴が聞こえてきた。
「なんだ?」と不思議に思って校舎のほうをみると、女生徒たちがこちらを見ながら騒いでいる。
「アスラン先輩よ!!」「きゃぁ!」窓から身を乗り出しながらそんなことを言っているのが聞こえた。
勘弁してくれ・・・
これからひと悶着あるかもしれないのにその邪魔をされてはかなわない。



シン・アスカはHRが始まるまでの間も勉強をしていた。
レイはわざわざ家で問題集を作ってきてくれたのだ。
自分も受験なのに・・・
レイの優しさに感謝しながら黙々と問題を解く。
あ〜わかんねぇっっ
そのときクラスの女生徒が騒ぎ出した。
一生懸命考えてるところに女性徒の騒がしい言葉が頭に入ってきてさっぱり問題が解けない。
「あーーもう!うるさいな!なんなんだよ!!」
シンは思わず怒鳴っていた。
しかし女生徒たちはそんなシンの怒鳴り声も聞こえてないようで騒ぎ続けている。
なんなんだよ一体・・?
シンは女性とが集まってる窓に近づく。
「アスラン先輩かっこいーい」「何しにきたのかなぁ・・」
アスラン・・・・・・・?
シンはアスランという人物に覚えがなかった。
どこかで聞いたことある気もするんだけどなぁ・・・
そんなことを思いながら窓から外を見下ろした。
そこには校門の辺りに立っている男がいた。
校舎の方を嫌そうに見ている。

藍色の髪・・・青空学園の制服・・・・アスラン・・・?
『アスラン 見てたのか』
文化祭でステージが終わった後、カガリが裏に入っていくと1番に言った言葉を思い出す。
ア ス ラ ン   アイツだ!!
それに気づいたとき、アスランも自分に気づいたのかはっとした後、睨みをきかせていた。
それが敵意であるとシンはすぐに分かった。
と、シンはその場から走り出していた。
「おい、HR始まるぜ」
友のその言葉も耳に入らず・・・


シンはあっという間にアスランの近くまで来ていた。
「オレになんか用ですか?」
文化祭でのアスランのあの態度、どう考えても自分に敵意があるようにしか思えない。
しかし、敵意を受けるほどこの人とは関わりがなかった。
シンが疑問に思うのも当然である。
「・・・・・・・・・」
アスランは腕を組み黙っていシンを睨みつけている。
「アンタに睨まれるようなことした覚えないんですけど」
何も発しないアスランにますますシンのイラつきは増す。
「睨まれるようなことした覚えはないのか?」
「?」
この人はなにを言っているのだろう・・・オレはアンタとの関りなんてはっきり言ってないに等しい。
なんでこんなことを言われなければならないのかさっぱり分からなかった。

「カガリは俺の彼女だ 近づくな」
「カガリ」アスランから発せられた言葉にシンの胸は高鳴った。
カガリ・・・カガリ?
なんだ・・・今こいつ何て言った?
カガリがこいつの彼女・・・?
その言葉を理解した瞬間、シンはカァッと顔が赤くなるのを感じた。
そうか!!それであの時さっさと帰れといわんばかりの態度をしたのか!!
気づかなかった自分にも腹が立ったが、それよりこいつがカガリと付き合っている現実に腹が立った。
こいつはこんなこという為にここまで来たのかよ!
オレがカガリのこと好きなのを感じてっっ
「だ・・・だから何なんだよ・・・」
しばらく沈黙して怒りを堪えていたシンはとうとうアスランに突っかかった。
アスランはそれを睨みながらじっと見ている。
「オレがカガリのこと好きだろうと、アンタに何か言われる筋合いはないだろ!」
「何・・?」
シンの思いっきり反発した態度にアスランは驚く。
「カガリは自分と付き合っている」と言ったらシンは引いてくれると思っていたのだ。
引いてくれると思っていた・・というよりその先をあまり考えていなかったのかもしれない。
「オレはカガリが好きだ!それはアンタには関係ないことだろ!!」

確かにその通りだ・・・
これはシンとカガリの問題であって、自分には関係ないかもしれない。
だが、自分の彼女が他の男に恋愛感情を受けてうれしい男がいるわけない。
「とにかくカガリには近づくな」
アスランは押し殺したような声で言った。
これ以上冷静さを失うとなにをしてしまうか分からない。
「嫌です!オレはカガリが好きなんだ!!絶対諦めない!!」
そう言い放つとシンは走って教室に戻っていった。
アスランはただそこに立っていることしかできなかった。

くそう!!絶対絶対青空学園に受かってやる!!
シンは教室に戻りながらそう誓ったのである。



用事が済んだら生徒会に顔を出す。
アスランはそう言って青海中学に来ていた。
だが、戻ろうという気分にはとてもじゃないがなれない。
荷物も持たぬまま、家へと向かっていた。

分かってはいる。
好きな気持ちは無理だと言われたところでどうしようもない。
無くせるものでもないし、無理にやめられるものでもない。
そんなことは自分が1番よく分かってる・・・。
結局・・・俺は自信が無いのかもしれない。
カガリが俺のことを好きだと知ったときは本当にうれしくて、楽しくて・・・でも時間がたつにつれ、
どうしてカガリは自分のことが好きなのだろう・・などと不安ばっかりが頭につくようになった。
カガリはどのくらい俺のことが好きなんだろう・・・
量りにかけるものではない。だがそうしなければ俺は安心できない。
アスランはひたすら家に向かっていた。

「遅くないか?」
カガリが備え付けの時計を見ながら言った。
「確かに戻ってくるといってたが・・」
と、イザークはアスランの鞄を指差しながら言った。
それを見たカガリも首をひねる。
鞄 置いてるんだから戻ってくるんだよなぁ・・?
どう考えても鞄を置いてあるというのは戻るという意思表示だ。
しかも、帰るんなら私に言わないわけはないよな・・・。
カガリは掃除当番だった為、アスランより遅く生徒会室に来た。そのときにはアスランはもういなかったのだ。
「そろそろ帰る時間だが・・・」
イザークが少し心配そうにカガリを見る。
どうする?っということなのだろう。
キラはラクスを送る為、少し早く帰宅した。アスランが戻ってくると思っていたからだ。
外はもう暗くなり始めている。
カガリは少し考えた後、
「もう少し待ってみる」
と返した。
するとイザークは椅子に腰掛け資料に目を通し始める。
帰るのではなかったのか?っと不思議に思い
「帰らないのか?」
と聞いた。
「もしアスランが戻ってこなかったら困るだろう。一応女なんだしな」
「一応は余計だ!!」
とカガリは文句をいったがいつもうるさいばっかりのイザークもやっぱり優しいんだなぁ・・なんて思っていた。

19時を回ってもアスランは戻ってこなかった。
いくらなんでもこれ以上ここにいるわけには行かない。アスランも家に帰っているのかもしれない。
そう思い始めたとき、
「帰るぞ」
イザークが席を立った。
カガリは少し困った顔をしたが仕方ない・・と席を立つ。
視線をアスランの鞄に向ける。
「なあ、アスランの家って遠いのか?」
「アスランの家?なんでだ?」
イザークはなぜそんなことを聞くのか不思議だった。
「いや・・・鞄、届けたほうがいいかと思って」
カガリは困ったような顔をしていた。
「1度行ったことはあるが・・そんなに遠くないぞ」
そんなカガリの表情を見たイザークはそう答えた。
「あ・・えっと・・」
この会話のなりゆきで、カガリが言いにくそうにする・・何が言いたいかはすぐに分かった。
「面倒かけやがって 仕方ないつれてってやる」
ぶっきらぼうな言い方だった。
だがカガリは場所を教えてもらおうと思っただけで、まさか一緒に来てくれるとは思っていなかった。
「いや 悪いよっっ」
思わず断ろうとしたが
「お前に何かあったら後で俺が迷惑する!」
などと言いながらアスランの鞄と自分の鞄を持った。


「うわー真っ暗だなー」
生徒会室を後にした2人が外に出ると思っていたよりも陽は沈んで・・というかもう月がキレイに出ていた。
「もう19時30だからな」
「イザーク 悪かったな 面倒かけて」
おい・・・なんでこいつもアスランも俺を呼びつけにするんだ?
別に自分が年上なことを自慢したいとか偉いとか思っているわけじゃないが、敬う気持ちというのがこいつらにはないのか?
そんなことを考えているイザークをよそにカガリはどんどん前に進んでいく。
「お前・・場所分かってるのか」
といいながらカガリが行ったほうとは違う道を指差す。
「シリマセン」
カガリは恥ずかしそうに戻ってきた。
「イザークの家もこっちなのか?」
もし正反対の方向だったら・・・っと考えカガリは言った。
「アスランと方向は同じだ 気にしなくていい」
やっぱりこいつ良い奴じゃん!!
やっぱり人は第一印象で判断してはいけないな!とカガリは1人納得していた。
15分ほど歩いたところでイザークがマンションを指差した。
「あれだ」
カガリが指の方向に目を向けるとそこには30階建てほどのマンションがあった。
「ありがとう イザーク!」
カガリはうれしくなって走り出した。
「カガリ!」
「なんだ?」
お礼も言ったよな・・?っと思ったがイザークの手を見るとアスランの鞄が目に付いた。
「あ」
「部屋の番号もしらんだろ」
呆れたようにイザークは言った。



アスランはあの後家に戻っていた。
アスランの両親は仕事の都合で海外にいるため1人で暮らしている。
家に帰るとすぐにシャワーを浴び、窓のそばでぼーと行きかう人を見ていた。
街灯があるためその人々の顔まで見えそうなほど明るかった。
頭の片隅でカガリが心配するかもしれない・・とは思ったのだがそれはすぐに不安にかき消されてしまった。
ほんと・・勉強ができても何もならないのかもしれないな・・・。
時間がたつにつれマンションの側を行きかう人が減っていく。
それでもアスランはただ窓の外を見下ろしていた。
そのとき学生らしいカップルが通りかかる。
はぁ・・
それを見たときついため息をついてしまった。
しかし、その人影がこちらを向いたときアスランは急に現実に戻った。
「カガリ!?」
カガリは隣にいる誰かと話している。
あれは・・・イザーク・・・
イザークはカガリに俺の家を聞かれたのだろう。
イザークの手には1つ余分に鞄があった。
本音ではカガリがこのままイザークとこのマンションを通り過ぎたらどうしよう・・などと思っていた。

「俺も一緒に行ったほうがいいだろう?」
イザークはカガリに言った。
「大丈夫だ!部屋も聞いたしこんなところで迷子にはならないぞ」
とカガリは笑う。
そうではない。
こんな時間に1人暮らしの男の家を女1人で訪ねるのはよくないといってるんだ。
それにアスランはこいつのことを・・・
「なっなんだよ」
イザークはカガリを見ているだけだったのだがカガリには睨んでるように見えたらしい。
「大丈夫だって!」
カガリはそんなに自分は頼りないかといわんばかりの表情だった。
さすがのアスランもその辺の常識は持っているだろう。
イザークはそう思い直し、ここでカガリと分かれようと思った。
その送っただけにしては長い2人の姿をアスランは冷めた目で見ていた。


15階の345・・・15階・・・
カガリはエレベーターに乗るとアスランの住んでいる15階のボタンを押した。
それにしてもキレイなマンションだな・・
あっアスランがもし帰ってなかったらどうしよう!?
鞄置いて帰る訳に行かないよな・・
あ!それより私たちが帰った後で戻って来てたらどうしよう!!
そんな不安がどんどん膨らんできた。
その不安をよそにポーンっと目的の15階へと着いた。
悩んでても仕方ない。家にいればいいんだ!それでOK!
などと先ほどの不安を脱ぎ捨てるようにカガリは考えを変えた。

1つ1つ番号を見ながら進んでいくと目的の345号室が見えた。
ここだ!!
カガリはちょっとためらった後、そっとベルを鳴らした。
扉から離れて少し待つ。
が、誰もでてこない。
え・・・?
番号を確認する。
うん。345だ。
もう一度ベルを鳴らそうとしたそのとき、いきなり玄関が開いた。
「わっ」
勢いのよいドアの開き方にカガリはびっくりして声を上げるが、その瞬間、誰かに腕をつかまれ家の中へと引っ張り込まれた。
カチャン
戸の閉まる音がする。
思わず目をつぶっていたカガリは恐る恐る目を開ける。
しかしそこは真っ暗で目の慣れていないカガリには何も見えない。
しかし、自分が誰かの胸の中にいるのだけは分かった。
「ア・・・アスラン・・・?」
ここはアスランの家だ。この家にいたのだからアスランだ・・・
それにこの感じ、匂い・・ここにいるのはアスランだと確信できる。
だが、カガリの問いかけにアスランは何も答えない。
「アスラン・・」
カガリはもう一度呼ぶ。
「俺 カガリが好きだって言ったよな」
アスランは冷めたように言った。
そのアスランの言葉から伝わる冷たさにカガリは少し恐怖を覚える。
「昨日の放課後、誰といた?」
「え?」
アスランの問いかけにカガリは頭がついていかない。
「さっきは誰といた?」
「アスランなに言ってるんだ・・?」
さっぱり分からない。
アスランが何を言いたいのか・・私が何を言ったらいいのか・・・
カガリは混乱したままアスランを見ていた。
目が慣れてきたのかアスランの表情が見えてきた・・・が、その表情は声と同じく冷たいものだった。
アスランのその冷たい表情を見たとたんビクッと体が震え
怖い!!
その気持ちが頭を占めた。
そしてアスランの腕の中からとりあえず逃れようとしたそのとき
アスランはカガリの頭を自分に押し付けるようにしてキスをした。
「ん!?〜〜」
カガリは逃れようと必死に暴れるがアスランの体はピクリともしない。
体力のある方だと思っていたカガリは自分がこんなに非力だとは思わなかった。
それでも必死で抵抗する。
眼からは涙が溢れ、体を思いっきり左右に揺さぶる。
その瞬間ふわっと体が浮いた。と思うと
ぼふっと柔らかいものの上に倒れた。
何だ・・?
すぐ上にはアスランがいる・・・両手を押さえつけてカガリをじっと見ている。
ここは・・・ベットだ・・・・
目の前にいる冷たい眼をしたまま表情を変えないアスランを見てカガリは涙を流すことしかできなかった。




えへ。ちょっとここで切っちゃうの!?って感じに書いてみました
きゃ〜裏に進んじゃうかなぁ★
こんなアスランって黒いって言うのかな?
私は黒いと思うんだけど・・・
連載もだいぶ進んできましたね。
いつまで続くんだろう(笑)
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