「文化祭まであと2週間かー」
教室でカガリがつぶやく。
「のんびりしてる場合じゃないぞ、いくら生徒会役員はクラスの出し物にでなくていいって言ってもその分やることがたくさんあるんだからな」
アスランはのんびりとした雰囲気のカガリに念押しのように言った。
「分かってるよ、だけどラクスだって役員なのにライブするんだろ?」
「まあ本人がいいって言ってるんだし、生徒会の仕事も完璧だからな」
生徒会の仕事も完璧・・というところまで聞かずにカガリは何かを考え出していた。



輝く星〜忍び寄る嵐〜




アスランとカガリは1ヶ月前に付き合いだした。
あの時はキラにキスの現場を見られて大変だったなぁ・・・
アスランはあの時のことを振り返る。
「アスラァァァン!!!!」
「キ・・・キラ!?」
「やっぱり心配になって帰ってきたら・・・君、カガリになんてことしてるんだ!!」
キラはカガリの部屋の前仁王立ちしながら叫んだ。
「ああ・・いや・・その・・・」
確かに付き合いだした瞬間にキスは早いかもしれない。でも、2人とも合意の上だったし・・(と思う。)
アスランは頭の中でキラに言った。
「キラ!わ、私・・・アスランと付き合うことになったんだっっ」
「カガリ?」
キラはまさかカガリからその言葉を聞くとは思わなかった。
アスランが好きとはいえ全く自覚がなかったのに・・・。
アスランって・・好きな子にはほんとに手が早い。カガリ・・上手く丸め込まれたのかな。
なんて、冗談っぽく思う。
「付き合うのはいいけど、キス以上はダメだからね!」
キラはとりあえず念を押した。
カガリに恋をしてからのアスランは小さい頃からアスランを知ってる僕でも別人のようなときがあるんだよね・・・
カガリはそういうことに無頓着だから僕が守ってあげないと!!
そんなことを考えているキラはアスランから見ても恐ろしい存在だった。


あれからキスもしてないんだよなぁ・・・
アスランはカガリとのキスを思い出しながら寂しい気持ちになった。
「文化祭か・・・忙しくてカガリと一緒にはいられないかな?」
ふと、去年のことを思い出す。
アスランは去年も生徒会役員だった。副会長だったが会長並みの仕事はしていたと思う。
そのときの会長は「ハイネ・ヴェステンフルス」という人で確かに頭もいいし、人もいいのだが、何でも楽観的なところが
アスランとはかなり違っていた。
その為、良い人だとは思いつつもどうも居心地が悪い思いをしたものだ。(仕事を押し付けてどこかにいってしまうし)
だから今年は生徒会は入らないつもりだったが、キラとラクスに無理やり立候補させられたのだ。
「だって、楽しそうじゃない?」
キラが俺に言った理由。キラは去年の俺が楽しそうに見えたのだろうか・・・。
でも、今はカガリと一緒に入れるのでそれだけで楽しく感じる。

「一緒に見れないのか・・・」
カガリのそのつぶやきに我に返る。
「走り回ってばっかりだよ。確認とか何とかで」
「そっか・・・残念だな・・」
可愛い!!!
カガリの本当に残念そうなその姿にアスランは抱きしめたくなる気持ちを何とか抑える。
俺とカガリが付き合っていることは仲間うちしか知らない。
その為、俺は前と変わらずいろんな子に告白を受けている。
前ほどひどい言い方はしなくなったがきちんと断らなければならないため、それなりのことは言っている。
「君とは付き合えない」「すまない、付き合う気はないんだ」何度同じことを言っただろう・・
本当は「好きな子がいる」とか「カガリと付き合っている」といいたいのだが、言って良いものかどうか分からない。
言わないでおこうとも、秘密にしようとも言ってないのだが、カガリは言う気配がないので俺も言えないでいる。

カガリだって、誰かから告白されてるのではないか?
そんな不安が胸をよぎる。
どう返しているのだろう・・・前みたいにはっきり言えないままならまた図に乗る奴が出てくるはずだ。
そんなアスランの心配をよそに何かを決意した顔をしているカガリが横にいた。
アスランはそんなカガリに気づくはずもない。




そして忙しい毎日が続き、とうとう文化祭当日を迎えた。
「キラ、これを視聴覚室にもって行ってくれ」
「オッケー」

「アスラン 閣議室に電気が上手く通ってないみたいなんだが」
「イザークが行ってくれよ」
「俺はこれから説明会の挨拶なんだ」
「ああ・・・」

生徒会室ではとめどなくこんな会話が続いている。
「アスラン、何かすることないか?」
「カガリ、じゃあ、これを職員室へ。俺は電気の配線確認してくる」
「おう!」
こんな忙しいときでも笑顔を絶やさない、そんな彼女の顔を見ると疲れや忙しさなんて一気に吹っ飛んだ。
「それが済んだらお昼は一緒に食べよう」
その瞬間カガリの顔がパアアアと明るくなる。
まるで、太陽のように。
良かった・・・。
本当はお昼も取れないぐらい忙しいのだが、カガリとの時間を少しでも作る為、ありえないぐらいの速さで作業をこなしていたのだ。
まあ、2年目って言うのもあるのかもしれないな。去年よりは楽だ。
などと思いながらこれからの作業を少しでも早く終わらせようと走り出していた。

カガリは職員室へ頼まれたものを持って行った後、ラクスがいるであろう控え室に行く。
「申し訳ありません。生徒会の仕事を抜けてしまって」
ラクスはカガリの顔を見るとそうすまなそうに言った。
「平気だよ。それより準備はどうだ?」
「ええ、ばっちりですわ。私の方もカガリさんのほうも」
「そっか ありがとう」
カガリは満足そうに答える。
「コンサートは14時からだよな」
「はい。でも、いろんな方が出ますから私が出るのは17時ぐらいですわね」
ラクスはちらりとカガリを見て、
「それまでの時間・・・生徒会のお仕事をしようと思うのですが・・」
「いいんだ!ラクスはこれから大変なんだからゆっくりしててくれ!」
カガリのその優しさにラクスはうれしくなった。
キラだって、アスランだってそう言ってくれるだろう。
でも、カガリのその言葉は真っ直ぐで嘘偽りがないのが見て取れる。感情を隠すことをあまりしないのだ。
きっと誰が見てもそう思うだろう。
「ありがとうございます」
ラクスはそう言って微笑んだ。


あのぐらい自分たちでできないのか・・・
アスランは配線の不具合を直して生徒会室に向かっていた。
中庭を通りかかるとたくさんの生徒たちが並んでいた。
コンサートがあるのでそれの場所取りをしてるのだろう。
それにしても・・・14時からだったよな・・まだ12時過ぎ・・・お昼ご飯はどうするんだろう?
とアスランはちょっととぼけたことを思いながら中庭を横目に通り過ぎようとしたそのとき
「あ・・あの!!」
女生徒の声が耳に入る。
「少しお時間良いですか?」
良くない。これからカガリとお昼を食べるんだ。
なんてこといえるわけもなく、
「いいよ」
と答えた。
少女は少しイジイジしながら何かを言おうとしている。
アスランには少女が何を言おうとしているのかすぐに分かった。
またか・・・
正直・・うんざりしていた。
カガリと付き合う前もうんざりしていたが、カガリと付き合ってからは別の意味でうんざりしていたのだ。
彼女がいるって言えたら・・・。
そうは思いつつも言っていいのかカガリの気持ちを聞かずに勝手にはできない。
「アスランさん、私・・・アスランさんのことが好きなんです」
思った通りの言葉が少女から出てきた。
アスランはすかさず
「ごめん、君とは付き合えない」
と返事をした。
「じゃあ」
といって、その場を去ろうとしたとき
「あ、あの 付き合ってる人がいるんですか?
もしいないのなら・・・あの・・・お友達からでも・・・」

付き合ってる人。
どう答えればいいんだろう・・・いる。カガリだ。
でも・・・・
「いないよ・・・・でも、友達にもなれない」
そう答えるしかなかった。

はぁ・・・ アスランは沈んだ気持ちで階段を登る。
みんなライブの席取りや食事の支度に夢中なのだろう。
廊下は文化祭真っ最中というのに静まり返っている。

「あの・・・」
階段に男の声が響く。
アスランからは死角のところに誰かいるようだ。
アスランにいやな予感が走る。
この感じは・・まさか・・・
「ユラさん、僕と付き合ってください」
ああ、やっぱり・・。
アスランは心の底から気分が沈んだ。
文化祭といえば絶好の告白日和だ。
気分が乗り、上手くいけば一緒に楽しめる。こんなチャンスはなかなかない。

またカガリは困ってるんだろうな・・・出て行くか・・・
と思い、アスランが口を開こうとしたそのとき
「私、付き合ってる奴がいるんだ。その人のことすごく好きなんだ・・だからごめんな」

アスランはそれをきいた瞬間、うれしさよりも恥ずかしさが頭を占めていた。


俺・・なんてバカなんだろう・・・カガリは隠し事なんてしない。
その素直さに惹かれて好きになったのに・・・。
アスランは右手で前髪を掻き分けながら壁にもたれた。

「分かりました」
そう言って相手の男は去って行った。
カガリは生徒会室に向かっている。
アスランもう戻ってるかな?
一緒にお昼を食べられるとは思ってなかったのでかなりうれしい。
その気持ちを表すように軽い足取りで生徒会室に向かおうとしたそのとき
誰かに後ろから抱きしめられた。
「わ!?なっなんだ!?」
カガリはいきなりのことに驚いた。

「・・・アスラン・・?」
アスランの匂いがする・・・
「カガリ」
アスランの声がした。
やっぱりアスランだ・・・
「どうした?具合でも悪いのか?」
「違うよ」
アスランは後ろからカガリを抱きしめたまま放す気配がない。
「・・・・キスしたい」
「うん」
カガリは深く考えず「うん」と答えた後でその意味を理解した。
「えええ!?だっだって・・ここじゃ・・・っ」
「ここがいい」
「だっだって・・」
「うんって言った」
アスランはその言葉と同時に強く抱きしめていた手を緩めカガリを自分の方へ向かせる。
そしてカガリにしか見せない最高の笑顔を見せた。

「見せ付けてやればいいよ」
カガリは真っ赤な顔をしていたが、抵抗はしなかった。
2人は中庭が見える窓にもたれかかるようにしながらキスをした。




「もう 17時30分か・・こっちも落ち着いてきたな」
生徒会室にはイザーク、アスラン、カガリ、キラが集まっている。
文化祭も大半の行事を終えている為、やっと一息というところだ。
「じゃあ、僕ラクスのコンサート見てきていい?」
「あ!!私も早く行かないといけないんだ!!」
「「??」」
アスランとキラはカガリが何処へ行くのかわからなかった。
ラクスのコンサートに行くにしては言い方が変だ。
「じゃ!」
そう言い残しカガリは去っていった。
「じゃあ・・・僕も行ってくるよ・・・」
よく分からないが、とりあえずラクスのコンサートを見なければ・・
キラはそう思いダッシュで中庭へ向かった。
アスランは眼を書類に移し作業を始めた。
「おい、アスラン」
「なんだ?」
やっと落ち着いたところなのに喧嘩でもする気か?とアスランは嫌そうに答える。
「お前も行っていいぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
アスランは思わずらしくない声を出してしまった。
「お前も今日は頑張ってくれたからな 後は俺がやっておく」
「いや、いいよ 別に俺・・」
「年上の厚意はちゃんと受け取れ」
「・・・・・」
いつも喧嘩ばかりしているが(イザークが勝手に叫んでいるだけ)一緒に頑張ったのは確かだ。
気を使ってくれているのであろう。
さすがに断るわけにもいかず
「ありがとうございます」
と、厚意に甘えることにした。
どうせならカガリに何処へ行くのか聞いておけばよかった・・・。
アスランは後悔しながら生徒会室を後にした。

窓から中庭を見下ろすと、ちょうどラクスの歌が始まったところであった。
やっぱり上手いな・・。
ラクスは中学のとき合唱部だった。
独唱パートは必ず彼女がとっていたが、誰もそれに異議を唱えない。
実力があるのは誰しも認めるが、彼女もまた、キラと同じで人に好かれやすい性格だった。(変わってはいるが)
とりあえず行くところもないし、カガリも用事があって出て行ったのだからその辺でラクスの歌でも聞いていよう・・
そう思って落ち着ける場所を探そうしたそのとき、
「では、次の曲は親友、カガリさんにも一緒に歌っていただきますわ」
わああああああっと歓声が起こる。
なに!?カガリ!?
アスランは歩みを止め、近くの窓から身を乗り出すように中庭を見る。

「カ・・・カガ・・・なに・・おい・・・」
アスランは言葉にならない声を出す。
それもそのはず、ステージに上がったカガリは体にぴったりフィットしたTシャツ、下は超がつくほどのミニスカートにロングのブーツを履いている。
可愛いのは可愛いのだが、可愛すぎるんだ!!!
アスランはのその場から動けないでいる。
カガリとラクスは仲良く歌を歌いだした。
歌うたってる場合じゃないだろ!
とカガリに突っ込んでみたが歌を歌うことは悪いことではない。
アスランは、とにかく下に急いだ。階段を転がるようにして・・・
決して見ることのできないアスランの姿だ。


中庭までたどりつくと、そこは人に溢れていてカガリの姿もほとんど見えない。
青空学園の文化祭はこの高校を受けようと思っている中学生も来ている。
人数制限はあるもののその数はなかなかのものだ。
その為、全校生徒が集まってもそこそこ余裕のある中庭なのだが、今は人が溢れんばかりになっている。
とにかく裏に回ろう。俺なら入れてもらえるだろう・・。
そう思いつきアスランはまた走り出した。



カガリとラクスの歌で今日1番の盛り上がりを見せている会場の1角に青海中学から来ている軍団がいた。
青海中学はキラとアスランの母校でもある。
もちろんラクスもだ。その為、ラクス目当てで参加する学生も少なくない。
あちこちから「ラクスさまー」「すてきー」という歓声が男女問わず飛び交っていた。

「ちょっとどこ行ってたの?」
人ごみの中からめんどくさそうな顔をして出てきた少年に赤みがかったピンクの髪をした少女が言った。
「ルナが無理やりつれてきたんだろ。今日は家でゆっくりしてたかったのに」
「だって、一緒に来るはずの子がこれなくなったんだもん 寂しいじゃない」
ルナのその言葉に漆黒の髪をした少年は真っ赤な瞳を伏せ目がちにし、口を尖らせた。
「今、ラクス先輩が歌ってるのよ!」
「ラクス?ああ、なんかいたなそんな奴」
「もう!シンったら失礼でしょ」
「知り合いでもないんだからいいだろ」
シンはさらに機嫌を悪くした。
「人のいないところに行って来る」
そういうとシンはすぐに背を向けた。
「ちょっと シン!」
ルナは呼び止めようとしたが人ごみに紛れその姿は見えなくなっていた。
なによ。1人じゃ寂しいから一緒に来たのに意味ないじゃない。

とにかくこの人ごみから逃れようとシンは必死に進んだ。
前も見ずにとりあえず真っ直ぐ進んだ。すると、人の気配がふっと消える。
やっと抜け出れた!シンは喜んで顔を上に上げた。
ところがその場所は人気のない場所どころかステージ脇の機材を置いている場所だった。
うわっやばい!!
と思った瞬間ステージ上の女の子と眼が会う。カガリだ。
カガリは黒髪の少年をじっと見ている。今はラクスのパートでカガリは隣でリズムをとっていた。
シンも眼が合ってしまったため動けないでいる。
次の瞬間、カガリはにっと笑った。
「?」
シンはその少女がなぜ笑ったのかが分からなかった、が次の瞬間その少女が蜜色の髪を輝かせながらステージから飛び降りてきた。
「!?!!???!??!!」
シンは思わず眼と口を思いっきり開く。
「来い!」
シンは何も考えられない状態でカガリに手を引っ張られステージに上がっていた。
「特別ゲストの・・・・名前なんだ?」
カガリはマイクを持って話している。
「何であんたにそんなことっっ」
混乱した頭のままだったが名前を言わなければならない理由がない。
「なんであんたにそんなこと君だそうだ!」
というと自分のパートの部分を歌いだした。
会場はどっと笑いがおこる。
シンは真っ赤な顔をして俯いていた。
「ほら歌え」
カガリはシンにマイクを差し出す。
「おい!?」
「せっかく来たんだ。楽しんでいけよ その為のものだろ」
カガリのにっとした顔にシンはカガリからマイクを奪い取り歌いだした。
はっきり言ってやけくそだったのだろう・・・それでも曲を知っていたのか歌詞はばっちりだった。
「なんであんなとこにいるのよ・・・」
ルナは大声で歌いまくるシンをぼーぜんと見ていた。


もう1人ぼーぜんとしている人物がいた。アスランだ。
裏に回ったからといってすでにステージに上がっているカガリをどうすることもできないのだが、
終わったら1番に声をかけようとやってきたのだ。
すると、会場から今までとは違う歓声が聞こえた。
何かあったのかと暗幕を少し開きステージを覗いた。
すると、カガリが少年と手を取り合って(というか引っ張って)ステージに上ってきているではないか。

誰だ?アイツ?
アスランの顔が一気に強張る。
しかも一緒に歌いだしている。
少年は怒ったようにしているがカガリは楽しそうだ。
その後の30分間、カガリ、ラクス、少年は同じステージで歌っていた。
途中何度も少年に空き缶を投げつけてやりたくなったがさすがにしてはいけないことは分かっているので何とか押さえていた。
アスランにとっては地獄の時間だった。
カガリはあんな姿を大勢に見せているし(見えてたんじゃないか?スカートの中)
変な男をステージに上げてるし(しかも手をつないで)
アスランのイライラが最高潮に達しようとしたそのとき、拍手とともにラクスが入ってきた。
「ラクス・・・」
ということはやっと終わったのか・・・。
アスランはやっと一息つける・・・そう思った。
「あら、アスラン、いらしてたんですね。いかがでした?」
「え?ええ・・・・楽しそうで・・・」
アスランはとりあえず愛想程度の言葉を口にした。
そしてラクスの後ろからカガリが入ってきた。

「カガリ!!」
「アスラン 見てたのか!」
カガリは荒い息を抑えながらうれしそうに言った。
そのうれしそうな顔にとりあえず怒りを抑えようとしたアスランだがカガリの後ろに見えた漆黒の髪にそれは断たれた。
「あんたカガリって言うのか?」
「ああ カガリ・ユラ 2年生だ。お前は?」
「・・・シン・アスカ 中3だ」

やっぱり知り合いじゃなかったんだ・・
アスランは2人の様子をイライラしながら見ている。

「あ、じゃあこの学校に来るのか?」
「別に・・・」
シンはそっぽを向いて言った。
「なんだ・・・」
カガリは残念そうに言う。
何で残念そうなんだ!!!
アスランは(心の中で)つっこんだ。
「俺帰ります」
「送っていくよ」
「いっいらないよ!子供じゃないんだから!!」
「そっか?」
「・・・友達もいるし」
「分かった。さっきはありがとな。勢いでステージにまで上げちゃって」
「もういいですよ」
「楽しかった」
そう笑ったカガリは蜜色の髪を先ほどと同じように輝かせ琥珀の瞳を揺らした。
シンはその姿に思わず見とれてしまう。

アスランはそんなシンを見逃さなかった。
「出口こっち」
アスランはさっさと帰れといわんばかりの顔で暗幕を上げた。
「どうも」
シンはそんなアスランの態度が気に入らなかったがどうせ出て行くのだからとアスランの上げた暗幕の方へ向かった。
「シン!」
カガリにいきなり呼ばれシンは振り向く。
「またな!」
カガリはそういって右手を上げた。
「はい」
シンはとりあえずそう返し、その場を後にした。



「あー、シンいた!!」
ルナがシンを見つけると指をさしていった。

「もう いきなりステージに上がったと思ったら歌い出しちゃって!終わったら終わったでいなくなっちゃうし。せっかくの
ラクス先輩の歌が頭に入ってこなかったじゃない!ちょっと聞いてるの?」
ルナはまくし立てるように文句を言ったがシンは上の空だった。
「シン?」
「シンったら!」
「え?何・・ルナ?」
シンが我に返るとルナが怒った顔をして自分を見ていた。
「もおいい!帰りましょ」
ぷいっとシンに背中を向けルナは歩き出す。
ところがシンがついてきている気配がない。振り向こうかと思ったそのとき
「俺・・・」
「え?」
「・・・この学校受けようかな・・・」
ルナは目をぱちくりとさせた。
「ええーーーーー!!??!!??」
それはルナがシンの成績を知っているからこその叫びだった。




「ラクスお疲れさまー」
キラが暗幕を上げて入ってきた。
「キラ!」
ラクスはうれしそうにキラへ駆け寄った。
「とってもよかったよ!僕 幸せ」
「カガリもとっても可愛かったよ!」
ラクスからカガリに視線を移しそう言った。
とそのとき、カガリの隣にいたアスランの表情が眼についた。
うわ・・・アスラン・・・怒ってる・・・
だいたい想像はつく。先ほどの黒髪の少年のことだろう。
アスランって嫉妬深いみたいだからなぁ・・・
今はラクスと楽しく話したいキラにとってアスランのオーラは少し・・邪魔だった。正直言って・・。
ラクスをつれてこの場を去ろうか・・なんて思ったとき

「カガリ」
アスランはそう言うと自分のブレザーをカガリの肩にかけ、左手首を掴んで暗幕の外に消えていった。

「キラ?」
ラクスは心配そうにキラを見る。
「大丈夫だよ。カガリのあの格好はさすがにきついよね」
あははっと苦笑いをする。
ラクスはフレアーのロングスカートだった為何も思わなかったのだが、もし自分がカガリの彼氏で大勢の前であんな格好を されたらさすがに怒ってしまうと思う。
ラクスがミニだったとしても当然怒るけどね。
カガリも怒りたかったが、アスランが代わりに言ってくれるのは目に見えてたし。
だから今回は邪魔をしないよ、とキラはアスランにテレパシーを送った。



「何でこんな格好であんな大勢の前にでたの?」
カガリを連れて人気のない階段裏まで来たアスランは
カガリが逃げられないよう壁に押し付け左右を両手で挟んでいる。
「え?何・・?アスラン」
カガリはいつもと違うアスランに戸惑う。
「こんな短いスカートはいて」
ちらりとカガリのスカートを見る。
その目線を追って見た自分のスカートは太ももをほとんど隠しておらず、ちょっと跳ねると下着が見えてしまいそうなものだった。
時間があまりなかったため、ラクスに衣装を渡されるとすぐにステージに飛び出したのであまり深く考えてなかった。
自分の格好に気づいたカガリは顔を赤らめ俯いてしまう。

「いや・・・これは・・・」
恥ずかしそうに話すカガリの顔。
きっと俺にだけ見せるカガリの表情・・・それはうれしいのだが、先ほどのシンという少年が頭をよぎる。
あいつ・・絶対にカガリに興味を持ったよな・・そんな顔をしていた。
恋愛に疎かったアスランだが、カガリと付き合いだしてからカガリに近づく男を見る眼はでてきたらしい。
アスランは俯いてたカガリの顎を右手で持ち、上向きにする。
「アス・・」
カガリが言い終わる前にアスランは口付けていた。
「んっ」
いきなりのキスにカガリは身じろぐ。
しかしアスランは逃がすまいと、左手をカガリの後頭部に回し、頭を固定する。
長い長いキス・・・・
カガリはどうやって息をすればいいのか分からない。今までこんなに長くキスをしたことがないので鼻で息をするなんて
慌ててるカガリには思いつかなかったのだ。
「ん〜ん〜」
カガリは苦しそうな声を出す。
それでもアスランは口付けをやめない。
すると、カガリの唇に今までと違う感触が触れた。
ビクッとカガリの体が震える。
思わず硬く口を閉じた。
それを感じたアスランはふっと唇を離す。
はぁっ
その瞬間、やっと開放されたカガリの口からは荒い息が絶え間なく出ていた。

「カガリ・・口開けて」
顎に手を当てたままのアスランはまたカガリの顔を上に向ける。
「え!?」
カガリがそういった瞬間、アスランはカガリに口付けた。
カガリの口にアスランの舌が入ってくる。
「ん・・・ああ・・・」
初めての感触にカガリはどうしていいのか分からない。
カガリの舌にアスランの舌が絡まる。

どうしよう!!
どうしたらいいんだろう・・・
嫌じゃない・・・でも、怖い・・・。
カガリは見開いていた瞳をぎゅっと閉じた。
それに気づいたアスランは唇を離すと
「ごめん」
とつぶやいた。
眼を開いたカガリはその寂しそうなアスランの顔に焦る。
誤解された!?
「ちっちがうんだ!!嫌なわけじゃない!!」
アスランはカガリを見つめる。
「ただ・・その・・は・・初めてで・・」
アスランはカガリのその言葉にほっとした表情の後、含み笑いをした。
「俺も初めてだよ」
そう言うとアスランはカガリにまた深く口付けた。
アスランのその優しいキスにカガリはうっとりとする。
瞳が潤み、頬を染め、体の力が抜けてくる。
そしてまた、アスランの舌がカガリの中に入ってきた。
先ほどとは違いカガリの体がこわばってない為、抵抗もされずすんなりと入った。

アスランの舌がカガリの舌に絡む、するとアスランは自分の舌とは違う動きを感じた。
え・・?
カガリがアスランの舌に自分の舌を絡めてきていたのだ。
思わずつぶっていた眼を開きカガリの顔を見る。
すると、眼を瞑り、うっとりとした表情のカガリがいた。


最高の文化祭だ・・・アスランの心の中は幸せでいっぱいだった。




区切りのいいとこまでと思ったらほんとに長くなってしまった。。
しかもっっ、う〜やばい!エローい!
見る人によって全然じゃんって思うかもしれないけど、私にはエロいよ。。
隠しにまわしたい気持ちだったんですが、シン初登場だし、途中で切るとのりが悪くなるしで・・
こっちに載せました(汗)耐えられなくなったら動くかも。
シンが登場しましたね〜やっとです★
これからどんどんアスカガに絡む予定。
イザークでもよかったんだけど、純粋なところが話つくりにくそうだったんで・・
シンはどんな役でも演じれそうだしね。
アスカガ前提シンカガっていうの好きなんですよ。
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